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その18.不在着信いっぱい来てたらビクッとするよね

 走り去っていくミホの後姿を、僕は呆然と眺めていた。

 無造作に出た手は、ミホに向けられたもの。


 しかし。


 その手はミホを掴む事は無かった……。


 僕はその手をゆっくりと下ろす。

 真っ暗なこの世界で、月明かりに輝いた雫を見た気がした。

 いつも。

 あの子は笑っていた。

 一番、その綺麗な雫を流すことが無い、最も縁のない人間。


 そう思っていた。


 ……それは、僕の勘違いだったの、かな。


 僕は俯く。

 流石の僕だって、女の子に泣かれれば悪い気するのは当たり前だ。


 僕が知る中で、最も性悪で、最も最悪で、最も性質タチが悪くて。



 ……それでも。


 最も義理堅く、優しい少女で、最高の友人の一人だ。




 その友人を泣かせてしまった。

 

 真黒な夜空を見上げた。

 輝く星が、金色の満月が、現在が夜遅くである事を示していた。


 こんな遅くまで待っててくれたのに。

 僕を運んでくれたのも彼女だろう。


 ……今更追いかけても、もう遅いかな。

 彼女の運動神経なら走っても追いつけない。

 残念ながら貧弱男な僕が追いつける速さではないのだ。


 ……ホントは。


 追いつかなくても追いかけた方がいいのかもしれない。


 だけど、彼女が涙を流すことが想像できなくて、追いかけても何を言えば良いのか解らなくて。


 追いつけないなんて。

 情けない僕の良い訳に過ぎないんだ……。

 



 何故泣く程のショックを受けたのかは解らないけど……どちらにせよ明日学校で謝ろう。

 友人じゃ無くすには、あまりにもミホを大切に思っていた。









 ボロ臭いアパートに帰ってきても僕の心は暗いままだった。

 脳裏に焼き付いているのはミホの事。

 とぼとぼと歩きながら考えていた事があった。

 

 僕は、あのエスパー少女と、ミホとを、もし比べたらミホの方が良いと言った。


 それは本心だ、別に何か他意があったわけじゃない。

 ミホは凄く嬉しそうだったけど。


 そして突然、いろんな子と自分を比べてどっちが良いか何て聞き出した。

 僕がめんどくさそうながらもミホの方が良いと言う度に凄く嬉しそうにしていた。

 そして、縁とミホを比べた時、咄嗟に縁の名前を出していた。


 本当に無意識に、反射的に。

 それに他意があったかどうかは聞かないで欲しい。


 反射的に言った僕自身も戸惑っているくらいなんだから。



 そして、それでミホはショックを受けていた。

 普段なら茶化したりはしても、そこまで反応する物では無い気がする……。

 ミホは、それほど本気で言ってたのかな。






 結論から言うと。









 ミホは。




 僕が好き……?






 そこで慌てて首を振った。

 何を考えてるんだ僕は。

 自意識過剰にも程がある。

 馬鹿馬鹿しい。



 無理矢理にでも、考えを逸らす為に携帯を開いた。



 もしかしたらミホから連絡が来てるかもしれない。


 さっきのは冗談でした~、とか、騙されたな馬鹿め!! とかメールを送ってきていてもおかしくは無いと思うんだけど。


 しかしメールは無かった。


 少し、落胆する。




 変わりに不在着信が30件来ていた。



 …………は?。


 え、30件? 何故に!?

 慌てて不在着信の人物を見てみると。



 ……サクだった。


 僕は机に突っ伏しガクーッと力が抜ける。


 何やってんだ馬鹿サクー……しかも一分おきという気持ち悪さまでプラスだ。

 寧ろ気づかなかった自分が凄い気までしてくる。

 一分おきという規則正しさから見るに、多分……っていうか、どーせしょうも無い事なのだろう。

 今は馬鹿の相手をする気分じゃないけど、これ以上着信が来たら僕は多分窓から携帯をブン投げるだろう。いや、多分では無く絶対。


 サクに電話をかける事にした。


『プ、もしもし!? へーじ!?』


 出んの早ッ!!

 ワンコールっていうか、プルルルルーのプで出やがったよ! どんだけ身構えてんだよ! 初めての経験に携帯落としそうになったわ!

 心の中で思いっきり突っ込みを入れる。

 口に出したら疲れるので出さない。


『おいへーじ! なんで出ないんだよ! 嫌いか!? 俺の事が嫌いなのか!?』


「今は死ぬ程嫌いだ」


『ッガーン!? へーじの即答に、口で擬音を出してしまうほどにサクマッチはカルチャーショックですよ!?』


「自分でサクマッチとか言うなよ! そしてカルチャーショックの意味を辞書で引いて来い!!」

 口に出して突っ込んでしまった僕は負け組み。


『何だ、辞書引いたら解るのか、俺の部屋に辞書が無い場合はどうすりゃいいんだこのヤロー、買うのか? 買いに行けば良いのか? 本屋までダッシュを決め込めと言いたいのかコノヤロー』


 僕は心の底から溜息を吐いた。


 つ……疲れる……。


 疲れているときにサクと電話していると携帯を逆パカして(折りたたみ型の携帯を折り畳む方とは逆にたたむ事、つまりぶっ壊したいわけだ)窓から投げたい衝動に駆られてしまう。


「……で用事って何?」

 いい加減サッサと切りたいので、そして自分の携帯の破壊衝動を抑える為にも話しを進める。


『おお、そうだった、いやな? 志保ちゃんから電話が家に掛かって来てよー。 ミホミホがまだ帰ってねーんだと、んで俺も馬鹿妹もンなのシラネーからよ? へーじ知ってるかなーって思ってよ』


 携帯の先から『誰が馬鹿妹だ! 殺すわよクソ兄貴!!』という聞き覚えのある声と、パコーン! という子気味の良い音が聞こえた。 


 どうやら近くに縁も居る様だ。


 そしてサクに何かをブン投げたのだと予想。


『ぐふぅ!? テメッ! スリッパは時に凶器になるんだぞクラァ!!」

 子気味の良い音はスリッパの物だったらしい。

 っていうかそっちで勝手に盛り上がるな。


「あー、ミホならさっきまで一緒に居たよ、学校で僕倒れてね、ミホが保健室に運んでくれて夜になっても僕の事待っててくれてさ。 さっき帰ったから志保ちゃんにもそう伝えておいてよ」

 取り合えずは僕を待っててくれて帰るのが遅れたのも伝えておく。

 これでミホが親御さんに怒られたりしたら気分が悪いからだ。



『え、ちょ、ちょっとへーじ!』

 突然サクの馬鹿みたいなデカイ声から高い女性の声になった。

 縁がサクの携帯を引っ手繰ったんだと予想。


『俺が今へーじと喋ってんだよ! 取るなコラ! へーじの声は俺の物だ!」


『うっさいボケ! 今はアタシのよ死ね!』


 予想的中……というか、そういうのは僕が聞こえないところでやってくれ疲れるし恥ずかしい。


 後ろでギャーギャー言っているサクを無視して縁は喋りだした。

 どうも慌てた様子だ。

『へーじ! 志保やミホ先輩は電車通学なの! この時間って確かもう終電過ぎてるよ!? 歩いて帰ろうにも確か4つぐらい駅が離れてたと思うし……ミホ先輩どうやって帰ろうとしてるの!?』



 縁の言葉を聞いた瞬間、僕は携帯を落とした。



 な、なにやってんだあの馬鹿。

 志保ちゃんが電話したって事は親御さんが迎えに来るとかは無いんだろう。

 クソ! 何やってんだよミホ!



『ちょっと! へーじ! へーじ!?』

 落とした携帯から縁の声がこぼれている。


 慌てて携帯を拾う。

「悪い! 急ぐから切るぞ!」


『え、ちょっ……』


 何か言い終わる前に僕は携帯を切った。

 続けて携帯を鳴らす。

 電話先はミホだ。


『電波の届かない所、もしくは電源をお切りになって……』

 電話が繋がらないアナウンスが淡々と流れる。

 全て聞き終わる前に携帯を切った。

 今は僕と喋るのはイヤなのか、とか変な事を考えてしまったけど、今はそれ所じゃない!

 僕は直ぐに家を飛び出した。


 

 大馬鹿野郎……!


 本当に何考えてるのかサッパリ解らない親友を探しに。

感想明日か明後日に一気に返信させて頂きます。

態々感想送ってくださって、とても嬉しいのですが返信遅くて本当すいまえん(汗

今忙しいんです(T_T)(言いわけ)


実は私ブログやってるんですが、ID登録めんどくせーけど感想送りたいよー、という素敵な方はどーぞブログの方に宜しくお願い致します!

毎度ブログのアドを後書きに置いておこうと思うのですが毎度忘れます。

今回は忘れないようにのせときます!

どうぞ宜しく!m(_ _)m




人生の攻略本が欲しいですorz

http://wanwanoukoku.blog.shinobi.jp/



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