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その14.妹の前では、良い姉でいたくて。  私は結構シスコンらしい。




 その時。


 パァン!


 と、大きな音が響き渡った。

 その破裂したような音に顔を挙げた。

 私の目に広がった光景は。

 あまりにも予想外の事だった。


 志保が、亜里沙ちゃんの頬を叩いたのだ。

 すざまじい形相で亜里沙ちゃんを睨み、振り切った手を下ろしていた。

 あの優しい志保が、こんなに怒りをあらわにし、そして手を出したのを。

 姉であり最も近くに居た私でさえ初めて見た光景だった。


 亜里沙ちゃんは叩かれた拍子にソッポを向く形になっていて、表情が見えない。

 だけど、頬が赤く染まっているのを見て強く叩いたのが解る。

 亜里沙ちゃんがゆっくりと顔の位置を戻す。


「アハハー……い、痛いじゃないですかー……」

 亜里沙ちゃんの表情は笑顔であった。

 しかし、その目を赤く染め、今にも泣きそうになっていた。


「お姉ちゃんの事何も知らないクセに……」

 志保が震えた声を出す。

 搾り出すように。

「何も知らないクセに知った風な口聞かないでよ!」

 志保の声が廊下内に響き渡る。

 既に殆どの人間が帰った廊下は静かで、志保の声が良く聞こえた。


「お姉ちゃんがどんな気持ちで……! どんな気持ちでいつもいるのかも知らないで!」

 その言葉は、志保の眼の前に居る、頬を押さえている少女に向けられた言葉。


「お姉ちゃんは……私のお姉ちゃんは……」

 そこで志保の言葉は止まった。

 肩を震わせながら俯いた。


 ……この子は、何でこんなに優しいのかな。


 私はそっと志保の肩に手を置いた。


「もういいよ、志保……」


 私の言葉に志保は、何も言わず顔を挙げた。

 私が何も言えないのを見て、彼女が変わりに叫んでくれた。

 私の情けない姿を見せて、失望するどころか怒ってくれた。


 妹に助けられた何て恥ずかしくて言えない。

 ゴメンね、弱い……おねーちゃんだったね。


 もう大丈夫。

 ……多分、きっと。


 私は志保を守るように前に出ると、いつものように亜里沙ちゃんに笑顔を向けた。


 心の不安が、へーじの想いが消えてたわけじゃない。

 だけど、妹の前に出るのが私の姉としての務めだと思ったから。


 私は優しく後ろに居る志保に言った。

「志保……先に帰ってて」


「で、でも……」

 か細い声で志保が反論しようとする。

 しかし私は志保が何か言う前に続けて口を開いた。


「アッハッハ! 私を誰だと思ってるの? 天下の水歩ちんだよん?」

 気楽に、いつも自分が言うように。

 ……いつも通り言えたかは解らないけど。


「……解った」

 きっと納得はしていない。

 だけど志保は解ってくれた。

 志保はそれ以上何も言わず、そして亜里沙ちゃんの方を見ないようにしながら自分の下駄箱の方へ向かった。

私の方に何度か視線を向け、何度も振り返りつつ校門の方に消えていった。


 私はそれを見届けた後、再び亜里沙ちゃんに向き直った。


「……優しいんですね」

 亜里沙ちゃんは悪意無い笑みを私に向ける。


「アハハ……あの子には今みたいなトコとか見せたくないんだ、只それだけ」

 志保の前では姉としていたい事、かっこ悪い所を見せたくない事、そして何よりも志保の心をこれ以上傷付けたくない事だ。

 彼女は誰よりも綺麗な心の持ち主だから、汚れて欲しくないと思うのはシスコンだろうか。


 私と亜里沙ちゃんが見つめあう形で沈黙が続いた。

 もう睨むような事はしていない、多分、怒れば怒るほど彼女のペースになるのだろう。

 冷静だと自負している私の心を揺れ動かしたのだ、中々油断出来ない。

 

 ……今度は何を言う気なのか。


 亜里沙ちゃんはニコッと可愛らしく笑いかけると私に背を向けた。

 少し拍子抜けして私は目を丸くする。


「今日はこのくらいにしてあげます。 へーじさんとも会えたしー、では、また会いましょうね!」

 そう元気一杯に言うと、亜里沙ちゃんはサッサと歩き出す。


 私は一瞬止めようと手を伸ばした。

 しかし、止めた所で何も言えないと解ると、直ぐに手を引っ込めた。


 私は……こんなにも弱かったか……。


「あ、そうそう」


 俯く私にカオリちゃんの声が耳に入る。

 その声に私は顔を上げた。

 亜里沙ちゃんは振り向いているわけでは無かった。


「その気持ち……はっきりさせといた方が良いんじゃないんですか?」


 それだけ言うと、亜里沙ちゃんは再び歩き出した。

 両方で揺れるツインテールが風でなびき、後姿でも、ああ、この子は可愛いんだな、なんて勝手に考えてしまっていた。


 私は再び俯く。

 亜里沙ちゃんの言葉が頭の中で繰り返される。


「はっきりさせといた方がいい、かぁ……」


 今も眠っているへーじに視線を落とした。

 暫くへーじの寝顔を見つめた後、亜里沙ちゃんが去った方向に目をやる。

 ……不思議な子。

 あの子はきっと私だけじゃなくて、縁ちゃんの敵でもあると思う。


 だけど。


 最初は腹が立つだけだったけど。


 聞いていた噂程、あの子は害のある子では無いのでは? と思えた。

 あの子はあの子なりの考えがあるのかもしれない。


 


 亜里沙ちゃんと、後何度か衝突するんだろうな。

 何て変な予想を立てていた。

 その予想が当たるのか当たらないのかは解らないけれど。

 



 それとは別に、私の視線は再び下を向いた。

 今も眠っているへーじに、だ。


 さ、て……どうしよーかなー。


前回の感想で体に気をつけましょうと言って頂いてたのですが……

風邪をひきました(T_T)

猛烈にシンドイです(汗

みなさんも体は大事にしましょー!

私みたいに裸で寝たりしちゃいけませんよー!

でも裸で寝たら気持ちいいんです(*´_ゝ`)ポッ←(懲りてない)


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