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その12.身体的ダメージのプロと精神的ダメージのプロ……プラスプラスで威力は倍に  そりゃ現実逃避もしたくなる。

 僕が何かを言う前に縁は行動をしていた。

 結構離れていた筈の距離は縁の在り得ない瞬発力で短くなっていく。


 目が……燃えている。


 僕に向けられている視線は怖いの一言に尽きる。


「うわわわわわわわわわ!」

 恐怖で声から悲鳴のような良く解らない物まで出る始末だ。


 怖すぎて視線を外した。

 そこでアリサちゃんがいなくなっているのに気づいた。

 僕に抱きついていたアリサちゃんは何時の間にか離れ、安全圏の位置にまで移動していた。


 何だその笑顔はエスパー女ァァ!

 まるで解っていたかのような笑顔には殺意を覚える。


 ちきし……。

 僕の悲痛の思いは途中で途絶える。

 それは横から来た飛び蹴りのせいだからだ。


 蹴ったのは当然に縁。


 見事に僕の横腹を捉え、派手に僕は飛ぶ。


 僕はズジャァー! と廊下を転がった。

 あまりにもの威力で僕は廊下の上で二度三度素敵に跳ねる。


 痛い、強烈に痛い!


 何やらいつもの攻撃とは全く違う気がする……。

 怒りと言うか、なんというか……戸惑った分手加減が出来てないみたいな……。


 ヤ○チャの様に転がっている僕を見下ろしている縁が居た。

 顔が真っ赤だった。

 目が右往左往している。

 こういう時の縁は、めちゃくちゃ戸惑っている時だ。


「っこここここここ校内の異性交遊は禁止よ! 禁止!! そ、それをこんな廊下で白昼堂々と! し、しかもへへへーじと! へーじとッ!」

 最早何を言っているのか解らない。


 っというかいきなりの蹴りで受身も取れずモロに食らってしまった。

 痛みで何も喋れない……。


 「変態! セクハラ! 女の敵! 馬鹿! アホ! へんたい!! 後々…… へ、へんたい!! へんたいへんたいへんたいへんたいィ!!」

 結局ヘンタイしか言ってないよ君……しかしこのまま誤解されたままでは色々と困る。


 縁程勘違いしやすく、勘違いをとき難い人物もそうそういないほどだ。

 僕は痛みに歯を食い縛り、声を押し殺す。 

「ま、待って…話しを聞いて…」


「うるさいうるさいうるさい! 死ねバーカ! アホ! アホへーじー!」

 最早聞く耳持たぬとはこの事、僕の必死に搾り出した声は縁の叫び声に消え去った。

 そして縁は散々僕にボロクソ言った後、何故か涙目になりながらゼーゼーと荒い呼吸をしていた。


 どんだけ興奮してるんだ君は。


 そして僕を思いっきり睨みつけた後、縁は僕に背を向けて上履きも変えずに、すざまじい速度で校舎を出て行った。


 ……ぼ、僕が何をしたァァーーー。

 僕の悲痛の心の叫びなんて誰にも聞こえるわけは無く。

 いや一人、楽しそうに笑っているそこの女には聞こえているのだろう……クソが、クソがー!


 痛みと悲しみで僕は倒れたまま涙を流していた。

 なんだ、どうしたら良いんだ僕は……本当何で……。


 そんな悲しみに暮れている時、


 横側からパシャパシャという音が聞こえた。


 僕は涙を浮かべながらその音の先に顔を向けた。

 予想通り、ミホだった。

 カメラのレンズが僕を覗いていた。

 距離的にいえば、レンズで自分の顔が見えるくらいの距離で撮っていらっしゃる。

 っていうか僕ってば涙やら鼻水で顔がぐちゃぐちゃになってたのね。

 

 

「……何してんの」

 取り敢えず聞いてみる。


「んー? 明日の記事だけど? 」

 予想通りの答えと共に、カメラのシャッター音は止まらない。

 ……再び予想通りだろうけど一応聞いてみる。


「何を書く気だ」


「熱血女と貧弱男、電撃的破局!」


「……うぉい! これ以上事態をややこしくすんな!!」

 僕の怒りの声と共に、16連射並に連打されたカメラの手が止まった。

 何か黒いオーラらしき物が見えるのは気のせいだろうか……。

 カメラで顔が見えないのが余計に怖い。


 そのカメラを、ミホは下ろした。


 ……。

 

 その顔は笑っていなかった。


 あ……あのミホの顔が笑っていない……。


 いつもニコニコとしている基本笑顔を絶やさない筈のミホが。

 目を細めて明らかに不機嫌をあらわにしていた。


 僕の態度は一変し、恐る恐る……爆弾を触れるような気持ちで丁寧に話しかけてみた。


 「あ、あのーミホさん? 僕がそんな節操うの無い人間じゃないって解ってるよね……? いつも通り……毎度毎度運悪く君らが来て、僕自身にはその気が無いって……解ってるよね!?」


 ミホは頭の良い子だ。


 だからこそ、こんな状況になっても即座に状況を見抜けて、尚且つ余計にタチを悪くするのだ。

 そんな時、やっぱりミホは笑顔を絶やさない。

 それは彼女自身が楽しんでいたりする節があったりもするからだ。

 その笑顔が無いという事は……ミホまでも勘違いしているんだ! きっとそうだ! ドン引きが一番凹むのに!


「明日の新聞楽しみにしててよ……」

 ドスの利いた声に、縁が僕の腹部に蹴りを入れたのと同じ様に、僕の心に思いっきり蹴りを加えた感じで ダメージを与えた。


 うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……。


 僕は身体的に腹部を痛めつつ、直る様子の無い心の痛みに嘆いていた。

 偶然なのだろうが、見事なまでなチームワークでミホと縁は僕の心と身体に大ダメージを与えた。

 まさにこの学校きっての最悪コンビならではの大ダメージ。

 僕は何やらいつもの何倍もダメージが半端じゃありません。

 


 涙を流しながら僕はこの悲しき現実から離れようと目を瞑った。

 言うなれば現実逃避、という物である。


 ああ……。

 冷たい廊下が気持ちいー……。

 

 ……もうヤダ(泣)

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