その11.惚気にしか聞こえない言葉って……終いには呆れるんですが
「ほんと、へーじってば馬鹿だからねーアッハッハ!」
「ですよね~!」
妙に賑わっている二人の後ろを私は歩いていた。
右側のサイドテールは私の親友の縁。 左のショートカットが私の姉の水歩。
縁と帰ろうとした時に、偶然お姉ちゃんと出会い一緒に帰る事になったのは良いけど二人はずっとこんな調子だ。
というか、へーじさんの事しか喋ってない……。
二人してへーじさんの何が悪いだとか、何があったとか、そんなのばっか。
意地っ張りな二人だからこんな会話しか出来ないのと、この二人だからでしか、盛り上がれないのと……。
へーじさんの事しか頭に無いのは微笑ましいけど、後ろで話しを聞いている私としてはため息しか出無い。
唯一、二人の心境を知っている私は、二人の後ろで再び小さくため息を付く。
へーじさんも苦労人だな、何て勝手に考える。
いい加減この二人の会話は唯の惚気にしか聞こえないのだから。
そんな二人の会話を聞いていた時、廊下の奥で見覚えのある人物を見つけた。
それはちょうど前の二人が喋っている会話の人物。
……あれ。
気のせいかな、なにやら可愛らしい女性に抱きつかれている……ような……?
私がそれを確認したのと同時に、目の前の二人の女性の会話と、そして足が止まっていた。
危うくぶつかりそうになるも私も慌てて止まる。
どうしたの? と、聞く前に、私は現状を理解した。
後ろからだから、二人の表情は見えないけれど……背中からドス黒いオーラが見える……。
二つのオーラが重なり、とても大きく見える。
わ、わぁ……。
へーじさんを再び見ると、こっちに気づいていた。
コチラから見えない二人の表情を見た途端、へーじさんの顔がみるみる青くなっていく。
あ、へーじさん涙目になってる……。
悲しみの視線は、二人から今度は私に向けられた。
そんな目で私を見ないでください……。
私にもどうにも出来ません。
この二人を止められる人間はきっと地球上にはいないんです。
私は哀れみの視線を向け、今から起こるであろう惨劇から目を逸らす様にゆっくりと目蓋を閉じた。
そして胸の所で十字を切る。
どうか神様……へーじさんに幸福をお与えください。
ヤバイ。。。やっばーい!
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