その99.
サクにも振られて、ミホも何処にもいなくて……。
縁も頼れない。
ハハハ、誰も味方いないんだね。
サクの家の前で、僕は呆然としていた。
志保ちゃんと約束した。
何とかすると言ったけど。
何も、出来ない……。
僕は皆がいないとこんなにも無力なのか……。
その場で蹲ってしまう。
ああ。チキショウ。
泣きそ……。
「へーェじ」
情けない僕の姿に誰かが声をかけてきた。
誰だコンチキショウ……僕は今全力凹みまくりだぞっての。
顔を挙げた先に居たのは、良く知る人物だった。
ショートカットでいつもニコニコしている彼女。
僕に悪戯っぽい笑みを向ける。
「なーに落ち込んでんのよん?」
「…………何だか、久しぶりだね」
病院で一瞬出会ったけど、あの一瞬だけでミホは結局またどこかに行ってしまった。
僕の言葉にミホは笑い声を挙げる。
「アッハッハッハ! そうだね~何だか久しぶりだねぇ~!」
いつもの元気な笑い声と、いつもの元気な姿。
皆が豹変している中、彼女だけは変わらずに笑いかけてくれている。
「ミホ……僕は……」
僕の言葉にミホは首を横に振って遮る。
「言わなくても状況は理解出来てる……」
ミホの表情は一瞬悲しそうな色を見せる。
でもそれは一瞬だった、払拭するようにまた笑顔を戻す。
「私は絶対に、貴方を見捨てない! 遅くなってごめんね。へーじ一緒に戦おうよ!」
そう言って、僕に向けて手を差し出す。
僕の心も一緒に救い挙げるように。
……あ、ヤバイ別の意味で泣きそ。
手を取って立ち上がる。
僕以外でも戦おうとしているのに……僕だけ凹んでられないかな……。
戦おう、元の日常を戻す為に!
終わってから、もう一度……サクと話そうかな。
「でも……これからどうするかな」
僕の言葉にミホはニヤリと笑う。
「ッフッフッフッフ! 私が好きでいなかっただけだと思わないでよねん!」
ミホはビシィっと道の先を指差す。
「ほいじゃー! 行こうかへーじ!」
そう言いながら僕の折れて居ない方の手を取って歩き出す。
「ちょ、ちょっと!?」
突然の女の子から手を取られて僕の心はドッキドキなんですが!
っていうかそんな引っ張らないで怪我してる方の腕が振動で痛い痛い!
……なんだろう。
妙にテンションが高いような……無理矢理テンション上げてるような……。
いつもの彼女だけど何か違うような。
いや今は変な事考えない方がいいのかもしれない。
全て終われば、きっと皆とまたいつものように……過ごせるよね。
早く、終わらせるんだ!
……よくよく考えたらミホ良いタイミング過ぎる気もするな。