再びという名のプロローグ
寒い日々が過ぎ、代わりに暖かい日差しが差し掛かるようになった。
学校への行き道には桜が咲き始め、美しいピンクを見せ付けていた。
僕は、3年生になった。
道行く桜を見ていたら、少し前の僕の不幸な不幸な大冒険が嘘の様だ。
空に舞う桜の花びらを見て僕は目を細める。
花びらは、ひらりひらりと、僕の前を柔らかに落ちて行った。
アア。心が安らぐこの気持ちはきっと嘘じゃない筈。
どうか今年は、馬鹿共がよりつきませんよーに……。
心の中だけで慎ましくパンパンと手を合わせる。
僕にしては珍しく神頼みと来た物だ。
フフ……こんな僕も、桜の美しさに当てられたのかもしれないね……。
何てキザな事を思いつつ学校への道を歩く。
心の何処かで僕ってばカッコいいんじゃね? とかちょっと思ってる節があるのは秘密だ。
僕以外にもチラホラと同じ方向に向かい歩く少年少女が目に映る。
彼らも僕と同じ学校の生徒なのだろう。
今日は始業式。
新しい3年生としての日々。
受験や就職で忙しいかもしれないけど、僕の良心的な考えに、桜の神様 (いるかしらんが)は優しく笑ってくれている筈だ。
そうさ、忙しいんだから、今年は勘弁してよ。
いやマジで。
僕が心の中で拙劣に祈りを込めていると、後ろから期待を裏切る声が聞こえた。
「そこ! そこどいてーーー!」
叫び声は後ろから。
しかもとても聞き覚えの在る声だ。
振り向く時間も与えられず、僕は背中の衝撃と共に宙に浮いた。
空中で2回転3回転と周った。
結構浮いたのか、地面を見渡す事が出来る。
口をあんぐりと開けて僕を見上げている人物達と、またか……と、さも人事の様に見ている人物達と居る。
前者は今年入ってきた1年生だろう。 かわいそうに、君達が今から行く学校に青春なんていう甘い物は無いよ。
寧ろ激辛。
後者は前に一年生。もしくは二年生のどちらかだろう。
変人ばかりのこの学校では人が飛ぶのなんて日常茶飯事ですからね、解ります。
最後に僕の目に移ったのは、僕を撥ねたと思われる人物。
あっちゃー、と頭を抱えているサイドテールの少女が居た。
何だその態度は、人撥ねといてソレかこの腐れ暴力女ァ!
車よりも早く走れる足を持つ非現実的な彼女なら僕を撥ねたのも頷ける。
……残念な事に彼女は僕の知り合いだ。
そして僕を常に不幸の世界へ連れていく人間の一人。
猫の様な大きな目と、首から提げている赤いロザリオが特徴的だ。
彼女の次に、再び美しい桜が目に入った。
桜の神様が僕に向けて笑いかけている気がした。
温かい慈愛に満ちた目。
とかでは無く、ざまァ(笑) と言った具合のバカにした笑みが見えた気がした。
きっと再び始まる不幸への道しるべを垣間見たショックで幻覚でも見たのだろう。
神様、僕が嫌いか。
僕も嫌いだバカヤロー。
……取り合えず。
世界中の桜よ散ってしまえェェェェェェェェェ!!!!
皆さまお久しぶりでございます。
そしてあけましておめでとうございます。
新年を迎えたと同時に再び始めたいと思います。
続編です。
前回の作品を読まなくても解るように書いて行けたらと思ったのですが、前作を読んでからの方が解り易いかもしれないので、時間がある時にでもお読みください。
前の様な更新速度が出来るか解りませんが。
どうぞ『暴力熱血女と貧弱毒舌男』を宜しくお願い致します。