【読み切り】ループタイムトリップ
一作目です。選んでいただき、ありがとうございます。5分間の未来への旅をお楽しみください。
拝啓、この手紙を読んでいるあなたへ。
この手紙が書かれたのは、あなたたちがいる時代よりもずっとあと。今の世界では考えられないことが沢山起きているよ。
転送先は多分2025年の地球になってるかな。
私たちはもう使っていないけど、翻訳機能で日本語に訳しているから君たちでも読めるはずだ。
あれからの地球は酷かった。
人々は戦争ばかりで呆れるほどだった。
私たち科学者はもはや兵器のように扱われた。
確か、君たちの時代では核兵器が地球上で最強の兵器だったんだよね?
近いうちに新たに誕生する軍事国家が、核兵器じゃなければいいんだろと言って開発した兵器が大国を次々に滅ぼしていった。
もちろん首相は死んだよ。
やったのはうちの仲間だった。
当時286あった国は7まで減った。
しかし、それだけ減ると言語の心配があるんじゃないかと君たちは心配しているだろう。
安心したまえ。
その時代の人々は全員ワイヤーグラスをつけている。
でも、ついてる機能は君たちが羨むようなものばかりだ。
このグラスをつけている間は、聞こえてくる言葉は全て自分の使っている言語に翻訳してくれるんだ。
つけている対象の意識が向いているもの、人に限らす、動物や植物までありとあらゆる言語を翻訳してくれる。
今ではマイクロチップに君たちの時代の義務教育ですること全てがデータ化されて脳内にインプットされるから、保育園幼稚園の次は高校みたいなものだ。
少子高齢化によって小中学校は廃校続き。
対応がめんどくさくなった政府がとった行動がこれだ。
もっと早ければよかったのにな。
でも、その反動も来ていた。戦争などで破壊された自然環境は、もう取り返しがつかなくなっていた。
国は大きなバリアのようなもので囲まれている。
バリアの外は一面の砂漠、ある所は一年中豪雨、地震、噴火、とても住めたもんじゃない。
人々はそれを地底都市や空中都市を作ることで対応した。
まぁ、楽しい無駄話はこれくらいにして、この手紙を拾った人はこれをとある所に送り付けて欲しい。
場所は…
某所
「例のアレが届いたわよ。これはあんたにしか読めないように書かれてるから早く読みなさいよ。」
「ったく。わーったって。」
ー 実験報告 TH-0012496 ー
TW12496 success
GW12496 failure
Pd12496 failure
PD12496 failure
EL12496 success
Ss12496 6/17,99/169
Ee A.D.4034
EM A.D.6239
Ds A.D.20000(sc)
ーーーーーーーーーーーーー
男はしかめっ面だった。
「翻訳完了、今回の実験結果だ。ほぼ失敗に近い。」
助手は少し興奮気味だった。
「あ!見てよ!SDGs達成項目増えてない?」
「前回減ったのが戻っただけだバカタレが。人間で遊ぶな。」
げんこつを1発入れる。
「でも、今回は地球も人類も長持ちしたな。実用運用後はもう1800年は短かったぞ。10365回目に火星移住が成功してからは順調に伸び始めてるな。」
助手は少しふくれっ面で文句を言った。
「回数盛りすぎ!タイムワープも637回目までは失敗してたじゃん!!」
男はコーヒーを片手に言い返した。
「そんなのは誤差だ誤差。」
助手はあることに気づいた。
「今回の被検体死亡年の横にscって着いてるけどこれって?」
男は表情を変え、少し満足気だった。
「suicide(自殺)だ。やっと自分で死ねたか。安らかに眠れ12496。」
「そうですね〜。」
助手は続けた。
「それにしても、なんで20000年なんですか?」
男はコーヒーを飲み干してこういった。
「俺が保証するのは20000年先の人類が持続していることだけだ。地球が存在していて欲しいってのはただの俺のわがままだよ。」
男は席を立って部屋を出た。うげっ、苦っ…。とこぼしながら。
助手はクスッと笑った。
「優しいんだか、なんだか、でも最後までカッコつかないのがいつも通りですね。次の機体の準備と時間操作しておきますね。」
こうして2人だけの箱庭の時間が過ぎていく。
繰り返す時の外で。
貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。これからも気分次第で短編小説を書きたいと思います。長編が欲しいという希望があれば書きます。ではでは、寒くなってきますのでお身体には気をつけてお過ごしください。