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最終防衛ライン・カゴシマ  作者: ユキトシ時雨
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13/33

破天荒デート①

 ・ 午後二時三〇分

 ・ 中央駅・アミュプラザ鹿児島


「あっ、鋼太郎くん! もう遅いよ、今日の一時にアミュプラザの広場で待ち合わせって、そういう約束でしょ!」


 そんな約束は聞いていない。


 慌てて高速バスに飛び乗ってきた鋼太郎は、人工芝の上でこちらへと手を振る紅音を恨めしそうに睨んだ。


「……いや、そんな約束をした覚えは」


「だいたいさ、何で隊服のままなの? 今日はデートなんだよ」


「……いや、だから、そんな約束をした覚えは」


「はぁー、これだから鋼太郎くんは。けど、今日の私はスーパー最年少エリートじゃなくて、スーパー美少女紅音ちゃんだからね。美少女らしい寛大な心で許して上げる♪」


「だからッ、そんな約束をした覚えはないって言ってんだろッ! 少しは話を聞けよッ! このアホ女がッ!」 


 怒鳴る鋼太郎へと、周りの白々しい視線が注がれる。


〈サツマハヤト〉の隊服を着た鋼太郎と私服姿の紅音。二人の様子だけを端から見れば、軍人が一般人を恫喝していると勘違いされたっておかしくはない。


 堅苦しい表情の鋼太郎に対して、紅音の容姿が可憐なせいで、周囲へ与える誤解はより深いものになる。刺すような視線はあまりに痛かった。


 鋼太郎は一度胸を撫で下ろし冷静になる。そして冷静になった上で白い目を向けられる原因にもなった彼女を、キツく睨みつけた。 


「……頼むから説明をしてくれ鹿児島女。……一から十まで全部わかるように」


「説明も何も簡単なことだよ。私が君とデートをしたいと思った。だから今日の一時に待ち合わせの予定を立てて、それを君には伝えなかった」


 途中まではまだ辛うじて理解できた。……いや、殆ど理解が追いついていないのだが、最後の一言だけは絶対におかしい。


「だから、何でその約束を俺に知らせないんだッ!」


「だって、私が素直に君を誘っても『別に行かなくても良いだろ』とか『何でアンタと出かける必要があるんだ』とか。そんな風に無愛想な理由を付けて断るんでしょ? だったらいっそ予定を伝えず強行してやろうかと」


 紅音から見れば、鋼太郎もまだまだマトモな常識人だ。彼女が奇天烈な行動を取れば、判断力は鈍り、結果として振り回されてしまう。


 思い返せば、エノンがデートの件を思い出すタイミングも都合が良すぎたように思えた。初めから二人はグルで、鋼太郎をここまで誘導できればあとは何だって良かったのだ。


「だとしても強行が過ぎるだろッ! ……大体、よりにもよって何でデートなんだよ? 別に俺たちは付き合ってるわけでもあるまいし」


「別にそれでもいいんじゃないかな? 確かに、鋼太郎くんと私の関係は部下と隊長だよ。けどさ、例え部下と隊長の関係でも、楽しく二人でお出かけして、美味しいものを食べて、有意義な時間を過ごす。これはデートと言ってもいいんじゃないかな?」


 紅音が悪戯っぽニヤけて、そしてワザとらしく小首を傾げる。


(……あぁ、この女はまた俺をからかってやがるな)


 私服姿の彼女はカジュアルに纏められていた。


 ジーンズ生地のショートパンツに赤のカーディガン。いつもは一括りに纏めているポニーテールも、今日だけはロングになびかせていた。


 いつもの可愛げがない隊服とは違う。少女らしい紅音の姿から、鋼太郎は視線を外した。


「可愛い?」と言いたげな彼女の思惑通りになっていることが悔しくて、それでいて妙に気恥ずかしいのだ。


「とか言って、本当は可愛い服を着たり、美味しいものを食べる大義名分が欲しいだけなんだろ?」


「げっ……なんでバレてるの」


 額には青筋が浮いた。指を一本ずつ懇切丁寧に折りたたみ、拳を握る。


「ヨシ、歯を食いしばれ。隊長だとか関係なしに泣かせてやる」


「待って! 待って! 他にもちゃんと理由はあるから!」


 紅音は肥薩山脈での功績を認められ、〈サツマハヤト〉から勲章を授かっていた。曰く、そのお祝いに付き合って欲しいとのことだ。


 戦果を上げたものには相応の報酬を支払う。領地や食料、或いは金品と時代によって報酬は変化しても、その考え方自体は変わらない。


 ただ資源が限られたこの現状では、与えられる報酬も小さなバッジと肩書きだけに限られてしまった。


 現に〈サツマハヤト〉のなかで勲章持ちというのはさほど珍しくもない。問題児として知られた鋼太郎でさえ、幾つかの勲章は持っているのだ。


 ────では、紅音は一体何のために戦っているのか? 


 そんな疑問が思考の隅をよぎった。


「どうしたの、急に難しい顔して?」


 丸っこい瞳が鋼太郎を間近に覗き込む。唇が触れ合うかどうかの距離に、思わず後ずさってしまった。


「あっ! もしかして口ではツンツンしながらも、本当は私服な紅音チャンに惚れちゃったり?」


「そんなわけねぇだろ! 大体、人が考えて事をしてる時にいきなり話しかけてくんじゃねぇッ!」


ここまでの読了、そして本作を手に取ってくれた事に感謝を。〈サツマハヤト〉一同、喜ばしい限りです。


気に入って頂けたなら、フォロー&コメントを是非! ユーザーページより、そのほかの作品を楽しんでもらえると、さらにうれしいです!

読了ツイートで拡散、宣伝なんかもして貰えると、もう感謝が尽きません。……っと、今回はここで幕引きです。

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