タトゥ社会
僕は人気になりたかった。
世界でも日本でもなく小学校でだ。クラスには足が速い子。可愛い文房具を持っている子が沢山いた。
そんな子たちばかり、小さく絶大な名声を得ていた。
もどかしかった。
なんで、ありきたりなことで名声を得ているんだ?疑問符ばかり浮かぶ毎日を送っていた。
だから、とりあえずタトゥーを入れた。もちろん人生初である。
タトゥーより怖い彫り師のお兄さんが担当だった。
どんな形のタトゥーを入れたいか相談に乗ってもらった。
「こんなのどうよ、あんちゃん」
龍だった。
「こんなんじゃ、得れないよ。」
「え?」
こんなんじゃ、家庭科の時間にクラスの人気な男子が使っている裁縫道具と丸パクリだ。
なんだよお前パクんなよ案件だ。
これじゃない。もっと、受け継げるもの。偉大なものを身につけたい。
そういえば、この間歴史の授業で「ミステリーサークル」というものの存在を知った。どうやら、誰が何のために作ったものなのかわからないらしい。UFOが降り立った跡であるという説もある。ミステリーすぎる。
これを身にすれば、ミステリアスな男になれるし、ついに名声を得れると思った。
人気者になれると思った。
掘った。背中にミステリーサークルを。
プールの日が待ち遠しかった。
UFOじゃなくてクラスのみんなが寄ってくる。大の字になってプカプカ泳ぐ妄想をしながら、大の字になってウキウキして寝たのを覚えている。まるで昨日のことかのように。
地球に彫られているおっきいタトゥーを眺めながら。