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銀色の北十字 肆  作者: たき
6/13

(6)

 意識が戻ったとき、最初に視界に入ったのは自分が妃にと望む女性だった。

「目覚めて一番にあなたの顔を拝めるとは、これほど幸せなことがあろうか」

「今日起きなければ、たたき起こすところだったわ。この非常事態にいつまで呑気に寝ているのかと、腹が立って仕方がなかったんだから」

 寝台脇の椅子に腰かけていた天琴は東雲をにらんでから立ち上がった。

「見殺しにしてもよかったんだけど、あんたには聞きたいことが山ほどあるし、まだ役に立つと叔父上が言うから、みんな我慢したのよ」

「あんた、か。あなたにそう言われるのも悪くないな」

 くすりと笑うと、「ふざけないで」と天琴がますます目を吊り上げた。

「怒った顔も美しい」

「……天狼、絞め殺していいわよ」

 天琴が言うなり、脇から駆けてきた小さな皇子が東雲の腹に飛び乗った。とたん、尖った氷に刺されるような痛みが走り、東雲はうめいた。

「お前のせいで姉上は――!!」

 薄紫色の双眸は本気で殺意を抱いている。首を絞められ、東雲は喉が凍りつく恐怖にもがいたが、天狼はびくともしない。いくらけがをしているとはいえ、体格差があるにもかかわらず天狼を払いのけることができない東雲に、天琴がわずかにいぶかる表情を浮かべたとき、猟戸皇子が割って入った。

「やめるんだ、天狼」

「だって叔父上! こいつが姉上をさらったんだ!」

 全身から輝力をゆらめかせながら天狼が叫ぶ。いまにも爆発しそうな天狼の首根っこをつかんで、猟戸は東雲から引き離した。

「いいから落ち着け。せっかく生かしたのがむだになる。天鵝を助けるには皇子が必要だ。後でいくらでも蹴らせてやるから、今はこらえるんだ」

 さりげなく恐ろしいことを口にしながらなだめる猟戸に、のどを押さえながら礼を言いかけた東雲は黙った。当たり前だが、月界の者たちはかなり自分を恨み、憤慨している。

 目に涙を溜めながら東雲をねめつけている天狼の肩をたたき、猟戸が東雲に視線を向けた。

「自分が誰に刺されたのかはわかっているか?」

「……同行者の中に、兄上の刺客が潜んでいたと思って間違いない」

 天鵝を自分に誘拐させるよう仕向けながら、最後に自分を始末するよう指示を出していたんだろうと、東雲はため息をついた。 

「なぜあんたが狙われるの?」

「私が帝位継承者だからだ」 

 腕組をして問う天琴に、東雲は答えて胸元をはだけた。

「雲帝の代替わりが近づくと、次の雲帝になる者にはここに痣ができる。父上はほぼ寝たきりの状態で、現在陽界を動かしているのは宰相の兄上だからな……弟の私が帝位を継ぐのが許せないんだろう」

 ここに来る前にも何度か襲われていたと、胸の痣をまた寝着で隠しながら東雲は言った。

「天鵝を連れていく計画はその宰相が立てたというの?」

「月界に冷妃らしき女性がいると話を持ち込んだのは兄上だが、積極的に動いたのは私だ。朧を救うためには、どうしても冷妃が不可欠だ」

 まあ、それをうまく利用されたのだと言われれば返す言葉もないが、と東雲は自嘲の笑みを漏らした。

「天鵝はもう、灼熱竜のもとに送られてしまったの……?」

「おそらく。ただ、婚儀をおこなうにも準備がいる。灼熱竜のあの執着ぶりを見れば、かなり急かしてはいるだろうが」

「婚儀を終えてしまったら、もう二度と戻ってくることはできないの?」

 天琴の顔色がどんどん悲痛な色に染まっていく。気丈そうな皇女が今にも泣きそうになっていることに、さすがに東雲も気持ちが揺らいだ。

「側女と違って冷妃は死なないから、会うことはできる」

 何の慰めにもならなかったらしく、天琴は口元を手で押さえてよそを向いた。その動きを目で追った東雲は、まだ噛みつきそうな顔で自分をにらんでいる天狼を見て、瞳をすがめた。

「……方法がないわけではない」

 そのとき、入り口に衛士が現れた。

「申し上げます。ただいま陽界から逃亡してきたという衛士らしき男を捕らえました」

 その場にいた全員が眉をひそめる。陽界から『逃亡』してきたとはどういうことだ。

「名は何と言っている?」

「疾風と名乗っています。ただ、胴着は赤色ですが、剣の柄にある玉は白緑色でして」

「風貌は?」

「消炭色の髪に青緑色の瞳の若い男です」

「陽界の衛士で間違いないか?」

 猟戸が東雲に視線を振る。東雲はうなずいた。

「疾風のはずだが、なぜ赤い胴着を……?」

 あいつは風使だと言って、東雲はゆっくりと上体を起こした。

「会ってみたい。かまわないか?」

 ついでに投獄されているらしい霧雨も一緒に頼むと言う東雲に、猟戸はしばし沈黙してから「いいだろう」と許可を出した。



「兄さん、夕食だよ」

 衛府の衛士統帥執務室の扉をたたいて開けた人馬は、窓辺に置いた椅子に座りぼんやりとしている摩羯に声をかけた。片膝を立てて剣を抱え込んだ摩羯は窓に寄りかかっているが、外を見ているようで見ていない。色違いの双眸は完全にうつろだった。

 人馬は一度きゅっと唇を引き結んでから、摩羯に近づいた。

「兄さん、少しは食べないと」

 反応はない。今日は無理やりにでも夕食の席に連れてこいと獅子に言われているので、人馬は摩羯の腕を取った。そのとき、摩羯の剣がチカリと瞬いた。

「……呼んでいる」

 はっとする人馬の前で、摩羯は剣に額を押し当てた。

「姫様が呼んでおられるのに、私は……」

 おそばに行くことができない、とつぶやいて、剣を抱きしめる。まるで天鵝本人を愛おしむかのように。

 霧雨の毒剣と昴祝の陽界の武器に刺された両肩はすでに癒えている。しかし大事な存在を助け出せなかった傷は大きすぎた。

 わずかに天鵝の気配が残るこの部屋で、摩羯はずっと夜を過ごしている。団長会議や使団の朝礼には出るが、あとは疲れ切るまで一人鍛錬を続け、夜になるとこの部屋に籠って死んだように動かなくなる。

 いつも身ぎれいにしていたのに、今は無精ひげが生え、目は落ちくぼんでいる。表情というものがいっさい失われてしまった摩羯を見るのはつらかった。

 ようやく昴祝の問題が片付いたというのに、まさか天鵝がかどわかされるとは――兄の一番の幸福と安らぎが、こんな形でこぼれ落ちてしまうなど、思いもよらなかった。

「いいほうに考えようよ。星杖に触れられるくらい自由な環境の中にいらっしゃるって証じゃないか。今すぐにお助けすることはできないけど、陽界の皇子が目覚めれば行動を起こせる。姫様はお強いから、きっと大丈夫だよ。俺たちが行くまで、絶対に踏ん張ってくださるはずだから」

 天鵝が一人奮闘している姿を想像したのか、摩羯の顔がますます苦悶にゆがむ。どう励ましてもだめな状況に人馬も途方に暮れかけたとき、摩羯の名を叫びながら近づいてくる双子の足音が聞こえた。

「摩羯、仙王宮へ行くぞ!」

 扉を乱暴に開け、双子が入ってくる。

「コルンバの天鴿宮(てんこうきゅう)を陽界の衛士が訪ねてきたらしい。陽界の現状報告と東雲皇子の生存確認のために逃亡してきたと言っているそうだ。今、ケフェウスに移送中とのことだ」

 姫様のことが何かわかるかもしれないという双子の言葉に、摩羯が立ち上がった。転びそうな勢いで執務室を飛び出していく摩羯を、人馬と双子も追う。

 厩舎に行くと、すでに獅子と天蝎が団長四人の馬を用意して待っていた。人馬も慌てて自分の愛馬を引っ張ってきて、先に駆けていく摩羯と団長三人に続く。

「お前も来る気か」

 ついてくる人馬を獅子が肩越しに見やる。

「だって気になるんです! 兄さんも姫様も!」

「仕方ない奴だな。遅れるなよ」

 摩羯はすでにはるか先にいる。乗馬の技術が違うのか、それとも団長になるような者を主に選ぶ白馬が元々優れているのかわからないが、本気になった団長四人の早駆けは半端ない。その中でも摩羯は群を抜いている。いくら天鵝のことが頭にあるからと言っても、あの速さはすさまじい。

 人馬も火使第一小隊の中では一、二を争うくらい乗馬が得意なので、よく伝令役を任されるのだが、それでも団長たちにはまだまだ劣る。必死に食らいついていきながら、どうか天鵝に関する吉報が聞けますようにと人馬は祈った。  

 仙王宮に到着したとき、摩羯はもう馬を置いて宮内に入っていた。人馬も団長三人とともに謁見の間に向かう。

「来年から乗馬大会を開催するか」

 天蝎の提案に獅子が露骨に嫌そうな顔をした。

「団長は抜きにしてくれよ。またあいつが優勝を持っていってしまう」

「姫様を報酬にしなければ、摩羯だっておとなしく見物するだろう」

 苦笑する双子に、獅子と人馬は肩をすくめた。

 謁見の間に入った人馬は、上段の豪奢な椅子に腰を下ろしている仙王帝と、その両脇に立つ猟戸皇子と天琴、天狼の姿をまず視界にとらえた。それから低い位置に立つ東雲皇子と霧雨を見る。二人の背後には茶色い外衣をまとった男が立ち、剣をつきつけていた。少しでもおかしな動きをすればすぐに刺せと命じられているに違いない。

 団長四人と人馬が東雲たちとは反対側に並ぶと、東雲皇子と霧雨がぎょっとしたさまで身を引いた。摩羯の変わりように驚いたようだ。

 まもなく、一人の衛士が後ろ手に縛られて連行されてきた。

 年は自分と同じくらいだろうか。やはり肌の色が濃い。ただ、赤い胴着を着ているのに、剣の柄にはめ込まれている玉が白緑色であることに、人馬は首をかしげた。

 青年は東雲を見るなり涙目になった。ご無事で、とつぶやく声は歓喜に震えている。

「お前の名と、月界へ来た目的を告げよ」

 猟戸の問いかけに、青年は一度仙王帝をあおいでから床に着くほど深く頭を下げた。

「名は疾風と申します。陽界の衛士で、風使団員です」

 はっきりとした声で名乗ってから、疾風は顔を上げ、陽界の現状を話しはじめた。

 東雲が陽界を発ってすぐ、有明が我こそは次期雲帝と宣言し、反発した衛士団長たちを月界の武器で斬殺したことを聞き、東雲と霧雨だけでなく人馬たちも吃驚した。

 団長と副団長、小隊長たちまでがまとめて殺されるなどということがあるのか。もし摩羯や獅子、白羊が同じ目にあったとしたらと想像し、人馬はぞっとした。

「月界の武器は兄上が所有しているとは思っていたが……」

 何ということを、と東雲が赤銅色の髪をかきなでながらうめく。

「露玉は……まさか露玉も?」

 蒼白する霧雨に、疾風はかぶりを振った。

「姉さんたち月暈隊はその場にいなかったので、全員生き延びています。ただ、月暈宮と連絡を取ることをずっと宰相に禁じられていたため、姉さんたちが知ったのもつい最近です」

 冷妃が自分に召喚状を送ってくれたことでようやく月暈宮に参上して事情を説明できたのだと、疾風は答えた。

「天鵝はどうしてるの? 無事なの?」

 尋ねる天琴のほうを向いて、疾風は一瞬ほうけたようになった。見とれている場合ではないとすぐに気づいたらしく、顔を赤くしてうつむく。

「それが冷妃様のお名前であれば、俺の見るかぎり元気にお過ごしです」

 自分を月界へ遣いに出したのも冷妃だという。

「皇子と霧雨様は冷妃様をお連れする際に境界門付近で戦闘になり亡くなられたと、宰相はおっしゃっていましたが、冷妃様は即死でなければ皇子は月界で治療を受けられているはずだと。陽界を正しい方向に向けるために、皇子と連携をとりたいと仰せでした」

「たくましいな。さすがは衛士統帥の冷妃だ」

 東雲は声を立てて笑ってから、改めて疾風を見た。 

「しかし、その様子では監視の目が厳しかっただろうに、よく陽界を抜け出せたな」

「村雨様が重体であることをお伝えすると、冷妃様が宰相にかけあい、治療のために衛府に足を運んでくださったのです。俺はそのすきに衛府を出ました。宰相は俺の動向を警戒なさっていると思ったので、火使の胴着を借りました。これなら目撃されてもすぐには俺だとわからないのではないかと思って……境界門の前には見張りがいましたが、朧様が耳飾りを持たせてくださったおかげで、月界の矢をくらっても死なずにすみました」

 そう言って、疾風が胸元に視線を落とす。そこに耳飾りがあるのだろう。

「そうか、朧が……」と感慨深げにつぶやいた東雲が、そこでぴたりと動きをとめた。

「ちょっと待て、冷妃は月暈宮を出ることができたのか?」

 東雲の疑問に疾風は「はい」とうなずいた。

「ではまだ婚儀の準備は進んでいないということか? それともまさか朧が犠牲に……太陽はどうなっている?」

「冷妃様が灼熱竜を鎮められたらしく、太陽は落ち着きを取り戻しています」

「婚儀もすませずに灼熱竜の炎を抑えたのか!?」

 東雲が目をみはる。 

「それが冷妃の力か。恐ろしいな」

 側女とは格が違いすぎると東雲がこぼす。

「婚儀を迎えなければ、天鵝を月暈宮から連れ出せるのか?」

 猟戸の質問に東雲はうなずいた。

「原則、一度月暈宮に入れば外出は禁止されるんだが、あの姫君は思った以上に陽界で力を発揮しているようだ」

 確かに冷妃の発言力は雲帝をも凌ぐが、それにしてもと東雲は驚嘆の容相を隠さない。

「兄上が言いなりになっているのか」

 あの、女は愚かだと普段見下しているような兄が、と言う東雲に、疾風が付け加えた。

「宰相は頻繁に冷妃様のもとに通っておられるようです。冷妃様が宰相のお相手をなさる間に俺は月暈宮を出たんですが、たくさんの贈り物を抱えた者の姿を見ました」

 とたん、東雲が眉間にしわを寄せた。

「霞のときにはそんなことはしなかったはずだ……まさかあの馬鹿兄、今度は冷妃に手を出すつもりか?」

 ぴくりと摩羯の体がこわばるのを、人馬は隣で感じた。灼熱竜だけでなく、生身の人間までが天鵝を手中におさめようとしているのか。

「どうせ朧がいるから大丈夫とでも思っているんだろう。灼熱竜より、兄上の暴挙の阻止に急がねばならん」

 東雲は苦々し気に吐き捨てて、仙王帝をかえりみた。

「冷妃がどれほど太陽を鎮めてくれたのか実際に確認してみないとわからないが、少なくとも俺の代では婚儀をする必要はないと思う。姫君はお返しするので、陽界の奪還に力を貸してもらえないだろうか」

 勝手な言い分だと承知の上で頼むと東雲が頭を下げる。

「その馬鹿兄はともかく、灼熱竜は天鵝を手放してくれるの?」

 疑わしげな天琴に、東雲は答えた。

「いや、すでに冷妃の存在を知った以上、逃げたとわかれば怒り狂って追いかけてくるだろう。だからもしそうなったときのために、そこのちびっこいのを一緒に連れていく」

 東雲に指さされた天狼が「俺?」とびっくりした顔になる。

「そいつはおそらく『月の(やいば)』だ」

 何だそれはという月界側の顔つきに東雲は説明した。

「ある意味、冷妃と対になる存在だ。冷妃は灼熱竜を延命させるが、月の刃は奴を殺すことができる」

「……つまり、天鵝を無理にさらわなくても、天狼に頼めば一発で解決したってことじゃない」

 天琴の声が低くなる。明らかに怒っている。

「月の刃は冷妃以上に珍しいと聞いていたんだ。まさか二人とも揃うとは思っていなかった」

 試しにそのへんをまだうろついている黒点竜を倒しに行ってみるといい、と東雲は言った。黒点竜を斬れるなら灼熱竜も斬れるはずだと。

「今いる灼熱竜が死ねば、黒点竜の中から次の灼熱竜が育つんだったな……ならば、天狼が灼熱竜を討っても問題ないということか」

 猟戸の言葉を受けて、「行く」と天狼は即答した。

「行って、灼熱竜も馬鹿兄もまとめて退治してやる」

 天狼までが『馬鹿兄』呼ばわりしたことに、東雲が盛大に吹き出した。その隣で霧雨も顔をそむけて笑いを噛み殺している。

 猟戸が仙王帝と視線を交えてから声を上げた。

「では明日の朝、作戦会議といこう」

 猟戸の合図で、背後から東雲たちに剣先を向けていた茶色い外衣の男が剣を引いた。拘束されていた疾風の縄も切られる。

「この衛士は衛府で引き受けます」と天蝎が申し出る。それに猟戸がうなずいたとき、疾風が「あっ」と叫んだ。

「冷妃様から言伝を承っております」

 動きかけた皆が足をとめ、疾風を見る。

「月界に帰ったら、まず一番に『マカツの茶』を飲みたいとおっしゃっていました」

 全員の視線が摩羯に注がれる。色違いの双眸を見開いていた摩羯が、中腰になりうつむいた。膝に添えた手をこぶしに変えてにぎりしめる摩羯の背中を、人馬はそっとなでた。

 姫様、とかすかなつぶやきが耳をかすめる。ぽたりと床に一つ涙を落としてから、摩羯はてのひらで目元をぬぐい、顔を上げた。

「摩羯、その無精ひげ、ちゃんと剃っておきなさいよ。そんなみっともない姿で天鵝を連れ戻しになんか行かせないから」

 あきれ顔で軽くにらむ天琴に、摩羯はあごをひとなでし、頬を赤らめた。ひどい状態だとようやく気づいたらしい。

「申し訳ありません」

 人馬はほっとした。兄の瞳に生気が宿っている。天鵝救出の道が見えたことで活力がわいてきたらしい。

「天鵝は他には何も言ってなかったの?」

 天琴に尋ねられた疾風はまた赤面し、うろたえた様子で目を伏せた。

「ええっと、あの……ああ、そうだ。すべてが片付いたら、一度ご自分の馬で東雲様を蹴り飛ばすと」

 今度は猟戸をはじめ、団長たちがいっせいに吹いた。仙王帝もうつむき、肩を震わせて笑っている。

「蹴る順番を決めておかねばならんな」

 猟戸の言葉に東雲が顔をしかめる。

「皇子、今回は甘んじて受けましょう」

 他人事のような霧雨をじろりと見やり、東雲は大きくため息をついた。




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