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16度目の敗北

 ――遂にここまで来た。


 魔王城の最上階。幾度の苦難を乗り越え、数多の強敵と渡り合い、最上のライバルと切磋琢磨し高め合った勇者が、遂に『世界王の間』の扉を開けた。巨大な石英の柱と深紅のカーペットが遠く続き、仲間たち(パーティ)を率いて憎き悪を打ち滅ぼさんと、今……!!


「よくここまで来たな勇者よ。我が魔の四天王を倒し、数々のダンジョンを」

「数々のダンジョンを踏破し、果ては我が『世界王の間』まで到達するとは……か?」

「……」

「そのセリフは聞き飽きた!!」

「そのセリフも聞き飽きたわ!!」


 勇者と魔王が激突する―――――――?


「毎度貴様らは懲りもせずに毎日毎日再戦再戦……何度このセリフを言わねばならんのだ」

「いつからか拙僧たちも暗唱できるようになって候」

「っじゃかあっしぃわ!!」


 緊張感なくぬかす灰色のローブを纏った詠唱師(スペルリーダー)に魔王は心の底から叫んだ。


        ×    ×    ×


 大きな角を持つ四メートルはあろうかという巨駆の魔王と対峙する勇者。魔物と人間の二種族の命運を賭けた戦いはただならぬ緊張感が漂う―――


「一つ汝らに問う」

「お、なんだ魔王。潔く倒される覚悟が決まったってのか?うし、ならアタイの自慢のガチガチボディから繰り出されるチャージアタックで」



《・》盾士(ガード):21歳、おんな


「黙れぃ!!貴様ら人間に我らが屈することなど断じて有り得ぬわ」

「屈せよ人類のために!!」



《・》勇者・剣士(ソード):20歳、おとこ、二年前に勇者になった


「ええいやかましい、第一貴様らがここに到達したのは10と4日前であろう。そして我輩に敗れ、地下牢に入れられておったな?」

「おう」

「そしていつの間にか食糧庫に潜り込んでおったな?」

「だって食事がマトモな料理じゃないんだもの」



《・》魔導士(ソーサラー):20歳、おんな、


「貴様ら囚人ぞ!?」


 こやつらいつも我輩に100ダメも与えられずに惨敗しているよな?盾女(ガード)に至っては守るのやめてチャージアタックしてきてたし、詠唱師(スペルリーダー)は回復間に合ってなかったし。


「こやつらに負ける我が配下の情けないことよ…」


 そうだとも、魔王軍の精鋭がどうして負ける、我が父が直々にしごいたとか自慢に話していたハズでは?いやしかし我が父は高齢だったし全盛期ほどの力は出せなかった可能性も……。

 回想を遮るように、勇者は声高らかに宣言する。


「今日こそ俺達は魔物とニンゲンの因縁に決着をつける!!貴様を倒してなぁ!!」

「笑止!!昨日は左手のみで戦ってやったが、今日の所はそうはいかぬ!左足のみでねじ伏せてくれる!!」

「具体的なハンデを言うのはやめろ!!心にクるだろォォォォオオオオオ!!!」



 今日も魔王は勇者一行を蹂躙していく。


       ×    ×    ×


 魔王城地下牢、そこはあらゆる希望を閉ざす恐怖の監獄。看守が巡回し、捕えた反逆魔とニンゲンにとって大事な人物にお仕置き(・・・・)をする。例えば魔王軍に楯突いた辺境の魔族、例えば密通していた上級魔族とニンゲンの大商人、例えば………勇者。


「16回目の地下牢、気分はどうだ?」


《・》魔王軍看守レバルス:羊魔族、推定150歳、おんな


「どうだも何も、毎回脱獄されてるお前の方が気になる」

「そろそろ魔王様にお仕置きされそうで怖い」


 看守は遠くを見ながら身震いをした。心なしか唇も青い。元々青いが。


「食い気味かよ」

「正直者だな」


 勇者たちは魔王に16度目の敗北を喫し、地下牢の最奥に入れられてしまった。

 明かりは通路の壁のロウソクの火、檻は今まで魔物が滅ぼしたニンゲン(こく)の王の骨を固めたらしい。魔力封印の壁、身体能力封印の足枷も嵌められ、入れば最期。長大な廊下の先の見えもしない扉に看守の妨害をかいくぐって辿り着くのは到底不可能である。


「というかなんであんた達はそんなにも強いの!!毎回牢に押し戻そうとしてもアタシ能力低下(デバフ)されるし!!それ効いてないの!?」

「拙僧は魔力を使ってはいるものの運用法が違うでな。これは魔物用の魔力封印であろう?」


 手枷を嵌められた腕をツイと見せる。


《・》詠唱師(スペルリーダー):22歳、おとこ、一人称を拙者と拙僧で迷ったことがある


「いやそもそも詠唱師のくせに腕力強すぎるのよ!!前もこの檻蹴り破ったのあんたじゃない!」

「これは魔物用の身体能力封印であろう?ニンゲンには効かぬが道理」

「魔族はニンゲンの10倍は力あるんだけどね、効かぬが道理とかいう話じゃないのよ……」


 レバルスは魔族最強戦力の最上級魔族。その戦闘力は単独で並の軍隊に勝り、実際ここに入れられた時点でどうにもできぬ負けイベントになっている。


 では何故勇者たちは脱獄できるのか?


「んじゃ、そういうことで」


 バギャン!!


「また檻を!!ちょ、足が重い…デバフが……」

「明日の朝には治っておるよ~」


 (ひとえ)に強いからである。四天王を倒し、負けイベすらも捻じ曲げるほどに勇者たちは力に優れていた。


「ちょ、ちょ待てやゴラアアアアア!!!」


 お仕置きに震える看守の制止は扉を出て行った勇者たちには、到底届きもしなかった。




 勇者タチハ魔王ニ敗北シタ・・・▶Continue?

                ▷k22IaG4I3? 


 上しか選べないようだ……


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