第一話 アンタレス隊と反乱軍①
自己の利益の為に、引き起こされた「GS戦争」(ゴールデンスピア)戦争が終結し、4年。
人類は、平和なひと時を過ごしていた。
俺、桐埼修二は。GS戦争当時、史上最年少で連合軍の1部隊にして連合軍内、最強と謳われた空軍部隊「スコーピオン隊」の隊長を務めていた。熾烈な争いだったが、戦争を終結させた俺たちは、空軍をはじめ世界中の注目であり、あこがれだった。
しかし、戦争が終われば我々は、ただの人間。俺はスコーピオン隊の隊長であった事を隠して、1空軍士官学校に通う学生として生活していた。
「この平和、いつまでもあって欲しいものだが、胸騒ぎがするなあ・・・」
「何、アンニュイぶってるのよ修二」
俺の物思いにふけっていたところに、一人の女子の声がした。
「ん?なんだ光か、茶化すなって」
俺に話しかけてきたのは、幼稚園の時からの幼馴染の樋本光だ。
黒髪ロングのいかにも大和撫子のような出で立ちだが、世話焼き、かつハキハキとした性格の持ち主で、周りからよく「お母さん」と言われている。
(本人はあまり気にしていないよう)
パイロットとしての腕を買われ、今は士官学校内の部隊「アンタレス隊」の隊長を務めている。
「茶化してなんてないわよ、修二にその雰囲気は似合わないってだけよ。修二は、あそこでコブラツイスト決められてる仙崎君みたいにバカ騒ぎしてればいいのよ」
そういって光は、プロレス技をかけられてる仙崎健一を指差した。
「いだだだだだだだだだ!アサキ!ギブギブ!!折れる折れる折れる!!!」
仙崎は、そう言ってコブラツイストをかけてる織田アサキに助けを求めた。
「アンタは何で課題をあんなふざけた内容で出せるのよ!!そのせいで、私まで巻き添え食ったじゃないの!!今回こそは承知しないわよ!!」
「それが俺のアイデンティティ・・・いだだだだだだだだだ!コブラの次は卍固めかよ!いだだだだだだだだだ!!」
「なんだ?仙崎のやつ、またやらかしたのか?」
俺は光に聞くと、やれやれといった様子で光は
「この前、期限だった空軍についての持論をまとめよって、バーフォード中佐から課題だされてたでしょ?それを仙崎君、「ぼくはぱいろっとになって女の子にもてたいです」って下心丸出しのレポート出したもんだから、たまたま、同じタイミングで出したアサキも連帯責任でその場で50キロの重りつけて腕立て100回の刑食らったのよ」
と話した。
「あーそういうことね・・・。確か、前は授業中に寝ててゲンコツ喰らってたよな。」
「そうね・・・懲りないのかただのアホなのか・・・」
俺たち二人は卍固めを喰らってる仙崎を遠い目で暫く見続けた。
「し、死ぬかと思った・・・アサキ、もう少し手加減してくれよ・・・」
「あんたのせいでこっちは連帯責任喰らってるんだから、これでも生ぬるいわよ!」
流石に、仙崎が泡吹き始めたのを見た俺たちは、慌ててアサキから仙崎を解放した。
「お前ももう少しレポートまともなの書けよ・・・小学生でももう少しまともなの書くぞ」
「それで、アサキがとばっちり喰らってるんだもん。アサキもキレるわよ」
俺と光は、アサキの関節技から解放された仙崎に小言をそれぞれぶつけた。
こいつは、仙崎健一。俺たちの同級生で光が隊長を務める、アンタレス隊の隊員だ。見た目は陽キャの塊の様な茶髪のツンツンヘアと日焼けで焼けた肌。性格もこんなだが、誰かを貶したりせず、皆、平等に接する優しさを持ち、クラスメイトからも慕われている。
また、趣味は筋トレで体格は所謂細マッチョ。
「あんたが少しでも真面目にやってくれたら、あたしだってこんな事しないわよ!アンタのせいでアンタレス隊のイメージが崩れるのが嫌なのよ!」
そう息を切らせながら、先ほどまで仙崎に関節技を決めていた織田アサキが言った。
アサキも俺たちの同級生で、アンタレス隊の隊員だ。アサキは、日本人の両親に生まれたが、父親の血縁者にアメリカ系の血が入っており、その影響か、金髪の髪色でそれをポニーテールのヘアスタイルにしている。
(因みに父親はスキンヘッドだが、若いころは金髪だったらしい」
性格は、非常に男勝りで切れ長の目と端整な顔立ちで一部の女生徒の間に人気があるらしい。
また、スタイルもよく、スラっとした足を駆使して先ほどまで仙崎に関節技のオンパレードをお見舞いした張本人だ。
「さっきも言っただろ。それが俺のアイデンティティ...あべし!!」
仙崎は懲りない様子でどや顔で言おうとした刹那、アサキの見事なハイキックが仙崎の顔面を捉えた。
「お前ら、余りバカやりすぎんなよ?次は外で訓練だぞ?」
「そうよ?そろそろ予冷が鳴るし、準備始めた方が良いわよ~」
「あ、そうね。ほら!健一!伸びてないで行くわよ!!」
「お前のハイキックが効いたんだよ・・・少し手加減しろっての」
俺たちはそう言いながら、訓練の準備を始めるために教室を足早に出ていくのであった。