出会い
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皆さんこんにちは。
僕は新米冒険者のリトーと言います!
先日、16歳になり晴れて冒険者となりました。
エリート戦士職は家庭の事情で断念してしまいましたが、ここからまた僕の伝説が始まるのです!
そう意気込んでいた冒険者ギルドへの登録初日。
僕は三人の怖いお兄さん達に絡まれていました。
「おい坊主。お兄さん達が20万ドロスで冒険者の心得を教えてやるって言ってんだろぉ?」
周りはまたかといった感じで無視を決め込んでいる。
「そ、そんなお金もってませんよぉ......」
僕がそう言うと、三人のうちの金髪で筋肉ムキムキなお兄さんが僕の顔を思いっきり殴りつけた。
2メーターは吹っ飛んで鼻血がボタボタとこぼれ落ち、痛みで顔は歪み起き上がることも出来ません。
「さぁ、言え払うか払わないか」
はらいますと言いかけたその時、一人の男が現れました。
「ねぇ、お金貸してくれない?俺ここ初めてでさトウロクリョウなんて知らなかったんだよ」
そう声をかけたマントと深くフードを被った180くらいの男、顔は見えないけど何となく感じるヤバさに僕の本能が警鐘を鳴らしている。
「おいおい、俺らの仕事の邪魔をすんじゃねえよボケ」
金髪の男がフードの男に向き直る。
「いいかガキ。俺はこのギルド最高のCランクのジェイソン様だ。てめぇみてぇな未登録なガキとは身体能力補正や使用可能スキルで天と地ほどの差があんだ。てめぇなんざ瞬殺出来んだぜ?」
「あんたじゃ無理だよ。だって弱いもん」
「てめぇ死んだぞ」
ジェイソンが強烈な右を放つ。
190という巨躯に加えて、鍛え上げられた筋肉は粗雑な技術を補って余りある威力を生み出している。
この時スキルは発動していなかったが、それでも並の人間なら大ダメージは免れない。
だが、彼はそれを簡単に捌いた。
そして反撃、美しい半円を描いた蹴りがジェイソンの顎を正確に捉え、ジェイソンの巨躯がを地面へと崩れ落ちる。
「やっぱ弱いじゃん」
「ジェイソンが一撃!? ありえねぇ!どんな手品だてめぇ!」
残った男ふたりが剣を抜く。
「あんたらはもっと弱いね。やめといた方がいいよ?」
彼の忠告など意に介さず切りかかってくる二人。
その斬撃を軽々と避けて、二人の顎に先程のリプレイのような蹴りを一発、これもまた二人の意識を一瞬で刈り取った。
「やめとけっていったのになぁ.......」
つ、強すぎる。
徒手空拳だけでCランクの冒険者を倒すなんてこの人は一体.......
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僕は助けて貰ったお礼に登録料を立て替えて、食事を一緒に取っていた。
「ありがとねーリトー。お金払ってもらった上にご飯までご馳走になって。お金は必ず返すよ。俺の名前はゼン、困った時はいつでもよんでね」
そう言いながら美味そうにゼンさんは食事を平らげていった。
「いえいえ、こちらこそ助けて貰ったので当然ですよ。にしても、あんなに素手で強い人初めて見ましたよ。格闘スキルレベルいくつなんですか?」
ゼンさんはキョトンとした顔でこちらを見る。
「スキル?何それ、俺はそんなの持ってないよ?」
え?えぇーーー!!!??
「冗談ですよね?素であれって.......」
バケモンだ.....無スキルでCランクを赤子扱いって王都騎士クラスでもできるかどうか.......
「俺はニホンってとこから来たんだ。それで右も左も分からず路頭に迷ってたら、ある人が腕に覚えがあるなら冒険者にでもなればって教えてくれてね」
それから彼は、日本という所で裏格闘技界のチャンピオンだったことや、自分の格闘技の流派のことなんかを僕に教えてくれた。
「ん、ご馳走様。じゃあ俺は今日分の仕事してくるから、また会おうね」
「待ってください!」
なに?とゼンさんは僕の方を向き直した。
「僕を弟子にしてください!ゼンさんのように強くなりたいんです!」
「んーでも、俺今、弟子とってる余裕ないしなぁ」
困ったようにポリポリとゼンさんは頬をかいた。
「もちろんタダでとは言いません。この世界の情報を僕はゼンさんに教えますし、冒険者でもバディを組んでクエストの補助をします。だからお願いします!」
僕は今思えばなんてめちゃくちゃなことを言ってるんだろうと思うけど、ゼンさんは笑って。
「んじゃよろしく頼むよ。リトー」
そう言って僕の手を握ってくれた。
「はいこちらこそ!」
こうして僕らの師弟関係が始まったのでした。
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「リトー大丈夫?」
「はひ、だいひょーふです......」
この人のトレーニングはヤバい。
僕も冒険者になるため養成学校を出ているけれど、そこの訓練なんて比にならないほどこの人の修行はハードだ。
まず、朝起きて2時間以上走り、朝ご飯を食べてシャドーと呼ばれる特訓を一時間みっちりとやる。
それが終われば部位鍛錬の時間だ。
部位鍛錬というのは僕もゼンさんに教わるまで知らなかったけれど、拳などを固く砕けないようにするための訓練で素手で戦うこの世界では必須なんだとか。
その部位鍛錬を日が高くなるまでやれば、しばしの休憩。
それから、筋力トレーニングに入る。
毎日、色々な部位を気が触れるくらいまでやる。
僕はいつもこの時点で力がつきかける.......
ここからようやく武術のトレーニングだ。
武術と言っても基礎的なことばかりで歩行法や基本姿勢、型の練習ばかり。
そして最後は組手だ。
僕は身体能力バフにスキルも使用して戦う。
でも、一回も5秒以上もったことがない。
「師匠強すぎー」
「まぁリトーとはキャリアも違うしね」
水を飲みながら、師匠は言った。
「武術ってのは一日で成る事はないんだよ。焦らないでいこうよ」
じゃあ、今日の修行はここまで。そう言って師匠は帰っていった。
「はぁ、まだまだ不甲斐ないなぁ。今日も瞬殺だったや」
僕は家路に着く途中、肩を落として冒険者ギルドに寄った。
あれから一ヶ月、僕はクエストにも行かず修行しては家で寝ての繰り返しだった。
「ちゃんと冒険者カードの更新はしないとなー」
ギルドの扉を開けて、カウンターに向かい受付嬢さんに更新をお願いする。
「あ、リトーさんお久しぶりです。今日はカードの更新ですか?」
「はい、最近はずっと師匠と修行してまして.......」
すると、受付嬢さんは首を傾げておかしいですね、と呟く。
「ゼンさんは最近、一人で来てはクエストをこなしてますよ?一緒にいらっしゃらないから、てっきり修行は中止してるのかと。あーでもそういえば夜ばっかりだったわね」
僕はそれを聞いてハッとした、無一文の師匠が僕に付きっきりで生活が成り立つわけないじゃないか......
申し訳なさと自分のことに必死でそんなことにも気づかなかった自分のアホさ加減に腹が立った。
「リトーさん....?」
「すいません、今日はやっぱいいです」
僕は走って、ギルドを飛び出した。
走って走って、街の郊外まで来てしまった。
「何やってんだろうなぁ僕」
「ははははっ!こんな人目の付きにくいとこに来るなんて馬鹿だなおめぇもよ」
すごく聞き覚えのある声。
「ジェイソン......ッ!」
「俺を呼び捨てとは生意気になったもんだ。なぁお前ら!」
オォッという野太い声でジェイソンのざっと見積って50はいる手下たちが答える。
「くくっ、てめぇはここでミンチにしてやるよカス。そしたら次はおめぇの師匠だ」
武器を持ったあいつらの手下が僕に向かってくる。
「ここで逃げたら師匠に合わせる顔がないよね」
手下のひとりが剣を振り回す、足捌きに無駄が多すぎるから、攻撃が読みやすすぎる。
剣を掻い潜り、渾身のローキック。
師匠みたいに必殺とはいかずとも、足止めされこの乱戦では邪魔になる。
「ハァッ!」
その影から、師匠直伝の右ストレート。
手下の一人が吹っ飛ぶ。
師匠との修行が活きてる。戦えてる!
「なかなかやるじゃねぇか。ま、いつまで持つかねぇ」
ハァっハァっと息が切れる。始まってから何分たった?
集中力が切れ、相手の雑な大ぶりが徐々に僕を捉え始める。
「うっ!?」
足に鋭い痛みが走った。
「ははっ!どーよ俺の投げナイフは痛てぇだろ?俺のユニークスキル"痛覚倍加"だ」
悔しいがジェイソンの言った通りあまりの痛みに思わず、膝を着いてしまう。
それと同時に手下たちの無数の拳や蹴りが僕に襲い掛かる。
薄れゆすく意識の中ででてきたのは師匠の顔だった。
あぁ、死ぬのかな僕。
そう思った時、パッと視界が晴れた。
「よく頑張ったねリトー。もう大丈夫だよ」
「師匠、ごめんなさい。僕、僕」
安心と不甲斐なさとで胸がいっぱいで涙が溢れて止まらなかった。
「すぐ医者に連れていくからね」
僕をそっと地面に寝かせて、師匠は敵に向き合った。
「ははは、前菜には飽き飽きしてたとこだ!次はてめぇをミンチにしてやるぜ!」
コキコキと手首と足首を鳴らし、軽くジャンプをする。
「俺、珍しく怒ってるんだ。だから、ちょっとだけ遊んであげるよ」
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