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 -5 『犠牲』

 星待ちの塔の二階はとても小さな物置部屋のようだった。いくつか並ぶ三角窓から差し込む光がどうにか部屋を照らし、かすかに明るみをもたらしている。


 物は何もなくただただ陰気に満ちたその殺風景な部屋の中央に、誰かが横たわっているのが見えた。


 私はそれにすごく見覚えがあった。


 見るからに広い肩幅を持った肉付きの良い体。チクチクとトゲのように鋭い赤い短髪。そして隆々の筋肉を見せつけるように、制服の袖を取っ払った姿。


「……ラクスト!」


 つい少し前にクルトと話し合っているのを見かけたばかりである、あの青年だった。


 仰向けに横たわり、伸びた片腕は力なく地面を這っている。


 私とレニアは大急ぎで彼へと駆け寄った。このような場所で、つい先ほどまで元気だった彼が倒れている状況に、並々ならぬ危機感がこみ上げてくる。


「どうしたの、大丈夫?」


 私が上半身を抱き上げてみると、ラクストは小さく呻き声を漏らしながら、微かに瞼を持ち上げて私を見やった。


 まるで生気がなくなったかのように呆けた顔をしている。その様子にはひどく見覚えがある。


 私の目の前で倒れたアリーとよく似ていた。


 間違いない。

 彼が倒れた原因はイビルだろう。


「あいつが……」


 ラクストはぼそり、消え入るような声で呟く。


「俺を……ここに呼び出して」

「あいつ? あいつって誰?」


 学園長レグニスは、イビルは実体を持たない魂のような存在だと言っていた。そうなると、彼をサポートする誰かがいるはず。


 おそらくラクストもその誰かにそそのかされてここへやって来たのだろう。


「ラクスト。誰だったの、貴方をここに呼んだのは」

「……それは」


 尋ねる私に答えようとしてラクストは体を持ち上げようとしたが、しかし途中で深く咳きこんでしまった。


「イビルに力を奪われてるんだ。無理はよくない」


 答えを急く思いの私に、レニアが冷静に落ち着かせてくれる。


 アリーの時のように私の力で軽減はできていない。ラクストの負担は相当のものだろう。


 だがイビルに繋がる肝心な情報を握っているのだ。


 ――お願い。もう少しだけ頑張って。


 私の思いに応えるようにラクストはかろうじて顔を持ち上げる。


「気を、つけろ。――が、狙ってる」

「……っ!」

「クルトが、あぶない……」

「クルトが?!」


 はっとして私が顔を持ち上げた途端、部屋の外から耳をつんざくほどの大きな音が響いてきた。


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