4-1 『水面下の始動』
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学園長レグニスによって語られたこの学園の過去。それは私へ予想外の使命を課す壮絶な物だった。
遙か昔、この地を恐怖に陥れたといわれるイビルという悪魔。その封印が解かれ、ルーラなどの学園の生徒を襲っている。
おまけに私の先祖がその悪魔を封印したという話までくっついていた。そして人間のために守護神である竜が犠牲になっていたという事実。
私が求めていたリルのこと、そしてワズヘイト家のこと。いろいろなことが解き明かされる、非常に濃密な一夜だった。
「封印の術については後々に話すとして。問題はイビルを使役しておる者じゃな」
「使役?」
夜の保健室前の廊下で昔話を聞かされた私達は、話の別れ際に学園長レグニスからそんなことを言われていた。
「いや、正しくは使役されておる、といったほうが良いじゃろうか。イビルに実体はない。疑似的に不死の存在となるために、己を肉体から切り離して魂のような概念的存在となったのじゃ。それは奴の他人から奪った魔法の力じゃった。ワシを肉体から切り離したのも奴じゃよ」
話を聞くだけでイビルがどれだけ強大な力を持った存在かがよくわかる。
私なんかで本当にもう一度封印できるのか不安だが、リルのためにもいまさら諦めるつもりもない。
「幸いにも、どうやらイビルはまだ封印から解放されきっていないようじゃ。あの封印の箱の中にまだ多くの力を残しておるのじゃろう。そのため奴の手足となって動く者を見つけ、利用しているに違いない」
「私が見かけた外套の男がそれってことね」
「奴は、力を欲する者を引きつける力がある。より強い魔法を持つ者をおびき寄せるためじゃ。この学園は向上心を持つ者が多くおる。そんな者達の欲求に付け入り、甘い誘惑で手駒のように操作しておるのじゃろう」
「つまりはそのイビルに利用されている者を見つけ、封印の箱を取り戻せばいいっていうことですね」
冷静にクルトがそう呟くと、学園長レグニスは神妙に頷いた。
「そういうことじゃ。そして、今一度そこに封印をし直す。それが唯一の手じゃろう」
「だったらすぐにでも探さないと!」
気が逸る私に、しかし学園長レグニスとクルトは落ち着かせるように言う。
「急いてはいかん。現状落ち着いていられるのは、イビルが無差別に生徒を襲っていないからじゃ。もし奴の封印を企てていると察すれば、奴は間違いなく、すぐにでも分別なく生徒を襲って魔法力を蓄え始めることじゃろう」
「確かに。現状で済んでいるのは危機感が薄いからか……」
不用意にイビルを刺激するのは得策ではない。きっとイビルはまだ、私達が封印を企てていることは知らないだろう。
「今は水面下に潜み、イビルの箱を持つ生徒を探るのじゃ」
落ち着いた学園長レグニスの声は私達を安心させてくれた。さすが長年生きているだけはあって見識も深く冷静だ。
「なに、焦る必要はない。それにいずれ恰好の日がやってくるじゃろう」
そうして私達は今日起こったこと、知ったことの全てを内密にし、水面下で動くこととなったのだった。




