表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/52

 -15『学園長の話』

「キミ達がもうそんなことまで調べ上げておるとは驚きじゃな」


 学園長レグニスは私達にそう言って、ほっほっと穏やかに笑っていた。


 私達が話していたのは書庫に隠されていた文献のものだ。その話を聞かれれば、私達があの書庫に侵入したというのは明白にわかる。


 だから咎められるものと思っていた私達は、しかし学園長レグニスのにこやかな顔に面食らってしまっていた。


「学園長はイビルのことをご存じなんですね?」


 彼の口振りから察したクルトが尋ねると、学園長レグニスは「うむ」と頷いた。


「よく知っておる。少なくとも『最近の子』らよりはな」


 学園長レグニスは指を鳴らし、近くの燭台の明かりをつける。


「イビルはそれはもう恐ろしい奴じゃった。悪魔というのは言い得て妙で、まさにそのような化け物じゃった。奴は魔法の力を好み、集め、それを使ってさらに多くの魔法を集めていった。奴の目的は世界中の魔法を掌握し、全ての人類の頂点に立つこと。その底なしの熱意と執念によって奴は肥大し、驚異となっていった」


「まるで見てきたみたいな言い方ですね」

「ああ、そうじゃな。だがそれも当然じゃろう。なにしろ実際にワシは見ておったのだから」

「えっ?」


 クルトだけでなく、私やレニアまで驚いた顔を浮かべた。


 イビルがいたというのはずっと昔の話だ。いくら年齢不詳の老人とはいえ、人が生きられる年月以上は間違いなく経っている。


 しかし学園長レグニスは少しもふざける様子などなく、しごく真面目のように言っていたのだった。


 信じがたいことだが、リルの竜の話やイビルの話を聞いていると、そういう不思議なことがあってもおかしくないのかもしれないと感覚が麻痺してきている私がいる。


「まあ驚いても当然じゃろう。なにしろワシの齢はもはや七百をとうに超えておる。数えることすら億劫になって忘れてしまったほどじゃ」

「学園長が、ですか?」

「そうじゃよ、リズ・ワズヘイト」


 私に向き直った学園長がにこやかに笑んで私の顔を覗き見る。


「キミはとてもよく似ておるよ。昔のワズヘイトの子にの」

「私の先祖を知っているんですか?」

「ああ、よく知っておる」


 学園長レグニスは、昔を思い耽るように笑顔を浮かべた。


「その当時のワズヘイトもとても愛らしい女の子でのう。キミのように少し気が強くて、けれどとても優しい子じゃった。町の人たちをイビルから救うために全てを投げ出すほどにな」


 本当に彼は知っているのだ。昔のことを。


「キミ達は封印のことを知った。じゃが、どうしてこの学園ができたのかは知っておるかの?」


「いや、それはまだ……」とレニアが低調に答える。


「ここは、本来は封印を見守るために作られた場所なのじゃ」

「え?」


「イビルの封印は、竜の助けを借りてもぎりぎりというほどじゃった。あまりに多くの力を蓄えすぎて、封印では完全に抑えきれなかったのじゃ。イビルが封印され、奪われた魔法は少しずつ元の者達へと戻っていった。じゃがそれもすぐには戻らず、イビルの魔法はしばらく強いままじゃった。それに外への妄執が強く、今にも封印を破ろうと暴れ続けておったのじゃ。


 そのため、今後もし封印が破られても対処できるよう封印を監視する目的で建てられたのがこの学園じゃ。元々はそのための優秀な魔法使いを育成する目的で教育も行われていたが、やがて年月が経つにつれてイビルの存在は忘れ去られ、この学園もただ単に教育機関として使われるようになった。それが今の学園じゃ」


 なるほど。

 学園が作られた経緯がそういうことだったとは初耳だ。


「今となっては普通の学校じゃが、それでもまだ封印の懸念はある。年月が経てば経つほど封印も弱まっていくものじゃ。そのために、この学園を長く見守る者としいてワシが作られた」

「作られた?」


 意味が分からず私が小首を傾げると、学園長レグニスは穏やかに微笑んで頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ