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 -3 『散らかり放題』

「なるほど。あんた達の目の前に急に現れた、と。瞬間転移魔法は実際に使われた記録は公式には残っていない。発現例も。登場するのはせいぜい、小説や絵本といった創作物くらいだね」


 私のお気に入りの布団を尻に敷きながら、レニアは開いた本を片手にそう呟いた。彼の視線は、星待ちの塔の中を無邪気に走り回っているリルへと向けられている。


 布団の上は無造作に本が散りばめられ、布団はくしゃくしゃになっていた。


 ――ああ、もう! 私がせっかく持ってきたお高い布団なのに! ちゃんと土台も作ってベッドみたいにしてるのに!


 協力を願った以上あまり強気にも言えず、私は我慢をどうにか押し殺しながら話に耳を傾けていた。


 ――我慢、我慢よ私。ここでレニアの機嫌を損ねたら台無しになるかもしれないんだから。何があっても機嫌を取るの。


 レニアはそれから、星待ちの塔の中を物色するように見てまわっていった。


 塔の中はすっかり私の私有物で溢れている。

 リルのことが学園中にバレてからというもの、私はリルの世話のためにこの秘密基地で寝泊りする事が多くなっていた。だから着替えや学園の教科書などが散乱している状況だ。寮の部屋ならともかく、ここではリルが勝手にいろんな物を弄ったりするせいで片付く気配はない。


 そんな散らかった足場を縫うようにレニアは塔の中を物色していく。


「……ん?」


 足元には脱ぎ散らかした靴下と下着まで転がっていて、それを見つけたレニアに「なんだこれ」と拾い上げられた。


「きゃあああっ!」と慌てて駆けつけるも、レニアはまるで興味がなさそうにぽいっと捨て、他に気になるものはないかと探索の続きに戻っていったのだった。


 ――ううう……なんでそんなとこに! いや、そういえば前、雨が降った日にここで着替えてたっけ。


 見られたこともそうだが、まったく異性として反応されなかったのもそれはそれでショックである。


「なにかあったのか?」


 離れたところにいたクルトがふと私のところにやって来る。


「わわわっ!」


 私はさっき以上に大慌てで捨てられた下着をすぐさま拾い上げ、隠すようにそれを握り締めた。


「どうしたんだ?」

「あ、貴方にだけは絶対に見せないから!」

「何があったんだよ。顔が真っ赤だぞ?」

「う、うるさいわね!」


 ただただ恥ずかしさが頭に上りつめ、私は自棄くそな口調でクルトを追い返していた。


 ある意味、見られたのが無関心なレニアでよかった。

 私の秘密基地だからって油断はしないでおこうと私は固く決意したのだった。


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