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気づけば人間やめてました!!  作者: 3匹の子猫
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第1話 気付いたら巨大なトロールだった!

『ん!?ここはどこだ??』


気づけば深い森の中にいた…



(しかし何かがおかしい…そう木が小さすぎるんだ!

ジオラマの中にでも迷い込んじまったのか?)


『こんなときには取り敢えず冷静になることだ・・

まずは深呼吸。。スーハースーハー。


冷静になってもやっぱりここがどこかは思い出せねーな!!


俺の名前は橋本礼治【はしもとれいじ】。38歳。

橋本工務店社長兼棟梁。仕事と酒に生きる男。

うん。自分のこと思い出せる・・記憶喪失とかじゃー無さそうだ。

じゃーこの状況はどういうこった?』


最後の記憶は…そうか。。昨夜デカイ仕事が飛んじまってやけ酒してたんだったな!じゃー酔っ払ってどっかの近くの森にでも迷い込んだのか?しかしこんな森記憶にないぜ。どうにかして道に出ないとな。。


『そういえば荷物はどうしたんだ?どっか置いてきたか?ってどこで飲んだかな…ポケットの財布は。。ん??俺どんな格好してるんだ!?』



自分の身体を見渡すと、荒い麻の布切れを片肩から腰の辺りまで羽織ってるだけなのだ。


(なんだか縄文時代の人間が着てそうな格好だ。。おやじ狩りにでもあって浮浪者にでももらったのか?)



そこまで思考を巡らせようやく気づく。そう気づいてしまったのだ…


『うおっ!!なんだこの手の大きさと色は・・!!』


俺の手は木の幹のように太く、ムキムキで…なによりも体の色が濃いめの緑色だった・・まるで映画で出てくる化け物『シュ○ック』のようだ。


(なんだこれは…俺は化け物にでもなっちまったのか?わけがわからねー!!なんかの特殊メイクか?なんかのドッキリとか…!?)


どんなに確認しても間違いなく本物の体である。


『…うん!これは夢だな♪』


そう判断し、それならそれで化け物になった夢を楽しもうとしよう♪と俺は森を歩きだした。



試しにそこらにある木にパンチを放ってみる…


『ズドォン!!バキバキバキ~』


(軽く殴っただけなのに1メートルはあろう幹があっさり折れてやがる…)



『すげーな~流石夢♪こうなるとなんかと戦うイベントとかないのかな?』


なんてちょっと年甲斐もなくはしゃいで歩いてると、


『キャー!!』


と助けを求める女性の声が聞こえてくるではないか…


(流石夢!求めればすぐイベントが起きる♪では行きますか…)




声のする方へ移動したところ、1台の馬車が20人ほどの人間に…人間?あれは【何かの化け物】らしきやつらに襲われていた・・


(まあ!夢だし…何でもありか♪♪)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私はリンダ。17歳、村長の娘よ♪毎年うちの村では冬を越すため、村の特産物である蜂蜜酒を近くの大きな街に売りにいき、売った金で必要な物資を買って帰るのだが、今年は私が村の代表として選ばれた!護衛として幼馴染みのウェルとエッタが一緒。無事役目を果たし、小さい頃からの馴染みのメンバーで帰り道を楽しく過ごしていると、突然森の方から何がが降ってきた…


「シュトュッ」


『敵襲だ!!警戒しろー!!!』


ウェルとエッタは剣を構える。その間も次々に矢が放たれてくる。矢速はとても遅く、数も多くない。さらに山なりに降ってくるので、気を付けていればそうそう当たることはない。だが馬は別である…ただの村人である3人に矢が降る中、馬まで守る余裕はなかった。。


とうとう矢の1本が馬車を引く馬へ当たり…

「ヒヒン…」

と勢いよく転げる。砂煙を上げながら馬車が転がり、その勢いから3人もバラバラに吹き飛ばされた。それから間もなく逃げられる心配が無くなったからなのか矢の襲撃はなくなった。



ぞろぞろと醜悪な襲撃者たちが現れる。ゴブリンである。緑色の肌をしており、人間の子供ほどの身長に醜悪な顔を持つファンタジーでは雑魚モンスターの定番の存在である。知能は低く、基本本能のままに人を襲い、女を拐い、犯す…戦闘力は大したことなく、成人した人間なら1対1ではそうそう負けることはない。そう1対1ならだ。。


今、3人の目の前には20匹ほどの醜悪な化け物どもが下劣な笑みを浮かべながらこちらを覗いている…絶望的だ!このままではウェルとエッタは殺され、私は…犯され、何度も犯され、生命の尊厳まで奪われ、命尽きるまでやつらの繁殖の道具として扱われるのだろう・・


さらに絶望的なのは、やつらの中に一際大きな存在があるのだ。ハイゴブリン・・ゴブリンが進化した存在である。多少の知能を持つようになり、力も普通のゴブリンに比べて比較にもならない程強い。村のそばで存在が確認されると、冒険者に依頼するか、命がけで村の男総出で討伐に向かう程の相手である。



『グェッキュェキュエ』

やつらがとうとう動き出した…


『キャー!!』


私は叫ぶことしかできなかった。


『リンダ!何をしてる!!早く逃げるんだ!』

『俺たちが囮になってるうちに逃げるんだ!』


リンダとゴブリンたちのあいだにウェルとエッタが入る…ゴブリンたちはそんな3人を余裕の笑みでのんびりと囲みながら近づいてくる。


『うぉー!お前らなんかに負けてたまるか!!』


ウェルが吠え、目の前に近づくゴブリンに斬りかかった!意外にもそこそこ鋭い剣撃だったが、逃げに徹すればそうそう受けるものでもない。避けられ、バランスを崩した隙をつき、次々と集まるゴブリンたちの持つ木の棒がウェルを叩き潰していく。


エッタは目の前で起きているあまりのことに、膝を折り、ただ涙し怯えることしかできなかった。このままではウェルは間を置かず死の時を迎えることだろう…もちろん自分自身も。。


リンダは逃げようとした。だがすぐにウェルの叫び声が聞こえ、振り返ってしまったのだ…そうつい反応してしまったのだ。目の前で血飛沫を撒き散らせ、ピクピクと微かに震え物言わぬ肉の塊へと変わろうとする幼き頃からの友人の姿に固まってしまったのだ!あのまま逃げていれば或いは1人逃げ切る可能性も0ではなかったのかもしれない。しかし、その数秒の思考停止の牢獄は命運を分けるものとなった…



あっという間にエッタは吹き飛ばされ、リンダも1匹のゴブリンに手を捕まれてしまった。

(もうどうしようもない…)


そう諦めて思考を停止しようとしていたところ・・



『バコンっ!!』


私の手を握っていたゴブリン頭から肩にかけてが文字通り無くなっていた!そうその存在がまるで最初からなかったかの如く血飛沫となり霧散して消えていったのだ…


『えっ!?』


私は再び固まるのだった…目の前にはゴブリンなど比べ物にならない巨大な魔物【トロール】がいたのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


化け物たちへ近づいていると、既に戦闘が始まってしまった。男の1人が化け物に斬りかかったが、あっさり返り討ち…木の棒で袋叩きにあってる。


(武器がただの棒みたいだし、即死はないだろうが…うっわ~痛そうだ!)


ようやく追い付いた時には女の子が捕まろうとしていた。取り敢えず助けるかと軽く殴ってみた。すると血飛沫を撒き散らせその上半身が消滅してしまったのだ。後には血を撒き散らせる下半身のみとなった緑の物体と鉄臭い血の香りだけだった。


(うお!?グロテスクだわ~しかし、軽く殴っただけでこれか…こいつらかなりの雑魚だな♪さっさと片付けるか)



そのまま俺は、間を空けず化け物共の真ん中に飛び込む。こいつら程度1匹ずつ片付ける必要すらない。ローキックで1周で十分…脚だけて2メートルはある大木のような筋肉の鞭を振るう。


「しゅぼっ」


よく分からない音が過ぎた後には体の存在のほとんどが霧散して失った無惨な死体、否!ただの血肉の片影…ゴブリンたちは何があったかを理解する暇もなく存在そのものを刈り取られたのであった。


(終わったかな?おっ!1匹残ったか…)



『クソトロール!!何しやがる!』

生き残った化け物が怒声をあげる。リーダーのハイゴブリンだ。


(トロール?なんだそりゃ??)

『トロール?俺のことか?』


『お前以外誰がいる!ふざけんな!!トロールごとき低俗な存在が舐めくさったことしでかしてんじゃねーよ!』

怒りに狂うゴブリンは侮辱の言葉を撒き散らす…


仲間を殺された化け物が怒るのは理解できるのだが、疑問が生じる…

『トロールってのがお前にとってどんな存在か知らないが、どう見てもお前の方が雑魚なんだけど。。低俗とか、ごときって強者が弱者に使う言葉だろ!?今お前の命握ってるの俺だよ?分かってるの?』


『フッざけんな!!トロールはなんでも命令に従う奴隷だ!!逆らってんじゃねーよ!!俺たちの言うことをただ聞いてりゃーいいんだ!まずは土下座して謝れ!』


(うーん。。なぜどう考えても雑魚のこいつから奴隷呼ばわりされないといけないんだ??)


『うーん。。お前の言いたいことがよく理解できないし、理解し合えるとも思えない。もういいよ!!』


俺は一瞬で間を詰め、殴り付ける。喚いていた物体は爆するように消し飛んだ。残るのは血の香りと謎だけだった…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『大丈夫か?生きてるよな?』

気絶している男2人を抱えながら声をかけるが…反応がない・・


(まだ無理か。1人は病院行かないとヤバそうなんだよな。。)


仕方ないので唯一起きてそうな女の子に声をかける

『おーい!!生きてるか~?』


ビクッ!!ササッサー…無言で後ろに後退りし、泣き出してしまう…


『おい!なんにもしないから泣くな!いや…泣かないでくれよ!

俺は昔から女の涙は苦手なんだ。。』


待つこと数十秒やっと泣き止んだようだ。


『取り敢えずこっちのやつ、早めに治療しないとヤバそうなんだけど…何か薬とかないのか?近くに病院があれば1番なんだろうが。。』


半ば放心していた女は、何か思い出したように理性が動き出す。

『ウェル!エッタ!』


深呼吸をしたかと思うと、自身の頬を「バチん」と叩き、

リンゴのようになった頬をこちらにしっかりと向け俺を見据えた…


『まずは助けてくれてありがとう…一応確認なんだけど私たちを襲うつもりはないのよね?』


『あ~そんなつもりはない。繰り返しになるがこいつは諦めるのか?』


俺を見る眼に力が篭り…女は力強く

『もちろん助けるわ!』


と一目散に馬車の方へ走っていく。薬があるのだろう…


『何か手伝えることあるか?』


俺が大声で訪ねると、しばらくの沈黙の後


『それじゃー2人を馬車のところまで連れてきて!先にウェルを…怪我がひどい方よ!優しくそっとよ!』


女のそれからの手際は大したものだった!看護の経験があるのだろう。あっという間に治療を終えていく。ウェルはなんとか一命を取り纏めたようだ。


『改めて助けてくれてありがとう。私はこの近くの村のリンダよ。なぜ私たちを助けてくれたの?』


『なぜって…困っている人が目の前にいて、それを助けられるのなら手を差し伸べる!それが人ってもんだろうが!!』


『それ本気で言ってるの!?あなたは人でなくトロールなのに・・??』


『そう。それなんだが、俺はトロールなのか?そもそもトロールって何なんだ?』


しばらく沈黙しているというよりも絶句されてる空気の中、リンダがふいに笑い出す。


『ぷっ!何よそれ…自分のこと何者なのか分からなくなってるってこと?』


俺は真面目な顔でリンダを見つめる。。


『俺は昨日まで確かに普通に人間の体だった。そこに寝ている2人のようにな!しかし、昨夜酒を飲み過ぎて、記憶を無くしている間にこんな体になっていて、さっきまで森の奥深くでぐっすり寝てたんだ!』


リンダは困惑の顔を露にしている。

『俄に信じがたいけど、あなたがそんな嘘ついても意味ないのも分かるし。。取り敢えず、トロールのことを教えればいいのかしら?』


俺が無言で頷くとリンダは話を続ける…

『あなたは今確実にトロールの姿はしていると思うわ。トロールのことは、私も詳しくはないんだけど…巨大な体に強い力を持つ巨人の魔物よ。トロールって怖そうな見た目に反してあまり怖い話を聞かないから、きっと人里にはあまり近づかないのかもしれないわね。。あっ!助けてもらったのに、怖そうな見た目なんてごめんなさい!!』


きっと本当に怖い見た目をしているんだろうことを理解し、それでも俺に気を使ってくれている目の前のリンダへ感謝の気持ちが溢れる。


『ありがとう!気にするな。。おそらく実際にかなり怖い見た目になっているんだろうし、仕方ないことだ。気遣ってくれるだけ感謝する。』


それを聞きリンダも微笑む

『お話してると、なんだか本当に人間にしか思えなくなってくるわね。』


『あ~本当に心は人間だからな!』

俺も微笑み返す。


暫しの心地よい沈黙の後リンダは言う

『これからどうするの?』


(うん…どうしよう?この夢なかなか覚めないな!)

なんとなくこれが夢でなく、何らかの事件に巻き込まれた結果ではないかとは考え始めてはいたのだが、簡単には認められなかったのだ。。だって、俺って魔物の姿でとても怖いんでしょ?まあ…考えても仕方ない!


『取り敢えず、どこかにいるだろう同じトロールに会いに行ってみようかと思ってる。あまり人里に近づかないのなら、森の奥深くに潜ってみるさ!』


『そう。気を付けてね!今回のことお礼するにも魔物のあなたにあげられるようなもの何も持ってないのよ』

と残念そうに目を落とすのだ…


『気にするな。元々見返りなんて求めてなかったしな♪もし、少しでも恩を感じてくれてるなら、いつか俺が魔物の姿ではできないことで何か困った時に助けてくれ!握手の代わりだ!』

と俺は指を1本リンダの目の前へゆっくりと出した。


俺はリンダと握手を交わし、彼女たちの馬車を起こしてあげ1人森へと戻っていくのだった・・

合間の気晴らしに書いてる作品なので更新遅めです。

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