03 やる事ないからやるしかない
あけましておめでとうございます。まだまだ始まったばかりの本作ですがよろしくお願いします。
話がとんでもないスケールにまで膨れ上がっている為、幸仁は半ば現実逃避しながら話を聞いていた。
「取り敢えず俺は何をすれば良いの?」
「ダンジョンを作ってください。最終的にはそのダンジョンを大きく発展してもらい、他のマスターの方々と戦ってもらいます」
ダンジョンバトル。それはダンジョンクラフトにもあった機能だ。ダンジョンクラフトではランキングの指標となるのは2つある。
1つはNPCの冒険者の出入りや死亡率から出されるダンジョン利益率。といってもこれは上位勢になればほとんど誤差のレベルだ。上位勢の中には中堅プレイヤー以下のダンジョン利益率を叩き出した人間も大勢いる。
そして2つ目がダンジョンバトル。これがダンジョンクラフトの2つ目の見どころであり、ダンジョン製作と並んでゲームのリソースの半分を占めるシステムである。
ランキングもこの結果によって左右される事が殆どであり、ランキング1位である『O10ka』氏はとある事件がきっかけでパッケージ版に移行したversionⅢからの参入にも関わらずランキング戦の勝率は5割をマークしており、上位勢に入ってからは勝率8割をキープし続けている猛者だ。
「それでダンジョンバトルを始めるまでの最低猶予は?」
「約10年程ですね。ダンジョンの成長率に応じて前後する場合もあります」
「なら早いうちにやる事はやらないとな」
さっきまで発狂していた人間とは思えない程に冷静な様子で立ち上がった幸仁は頭の中でやる事を考え始める。
「先ずはあんたの名前を決めないと」
「へっ?」
「毎回毎回ダンジョンコアって呼ぶのめんどいんだよ。それにこの先他のダンジョンコアに会う機会も出てくる。だから個別の名前がないと識別ができない。
…よし、No.3556だから語呂合わせでミココロ。呼びにくいからミーコな」
ついでで考えること1分未満でダンジョンコアの名前を決めた幸仁はその場で腕を組み、やれる事とやらなくていい事、そして追い追いやらなくてはいけない事を分けていく。そして分け終えた幸仁は口を開く。
「やるべき事は3つ。1つ目はこのダンジョンの拡大。2つ目は情報の確保。3つ目は共犯者の確保だ。これは現状ではまだやらなくてもいいが1つ目の成長と同時に進行していきたい」
「共犯者とは?」
「そもそもダンジョンを作ったとしてもそれを見つけてもらわなければただの魔物溜まりと一緒だ。
ゲームだった頃は自動的にNPCが来たがこの世界に生きてるのはちゃんと考える能力を持った奴ら。
ここの立地がどういうとこかは知らないが人里離れたところにあったり近くに別のダンジョンがあれば、人は来ないし別の所に寄るだけでまず発見すらされないこともある。その場合の最終手段としてサクラを用意して自分から見つけさせる。
あとダンジョンの成長っていっても近くのダンジョンと需要が被ればその分人の出入りも減る。だから被らない程度で別の旨味を用意させるのが1番だ」
幸仁の口からスラスラと出てくる言葉にミーコはなまじあの発狂を見ているためか呆気にとられていた。