表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/45

7・いつものようにお勉強していたら、どエライ事が起きてしまった

 火可弦能に色々な事を習いながら、色々な事を教えていた。


 火縄銃の練習だって続けてるぞ?照門が可動式になったが、それ以外は火縄銃のままだ。釣鐘弾を考案してはや1年が経つ、いつの間に時が過ぎたのか知らないがはやいものだ。


 そう言えば雷管はどうなったかって?未だに暴発事故多発という話が多い。一度、通貫に聞いてみた方が良いかもしれないと今更ながらに考えている。


「通貫、雷薬を使った発火はどうなっている」


「アレは発想は良いのですが、火皿に落とす段階で爆発してしまいます。そこで、樹脂で包んだものを火皿に置くようにして実験しているのですが、そもそもの携帯性に問題があったり、静かに置けばよいのですが、乱暴に押すだけで爆発したりと扱いに困っております」


 何やってんだこの人は・・・


 あくまで既存の火縄銃の口薬を変更する事ばかり考えているらしい。そのくせ、釣鐘弾の方は摩擦を減らすように弾に溝が掘られ、密閉性を上げるためにコルクの様な木栓が銃弾の底にねじ止めされたりと、様々な工夫がこの一年行われている。


 釣鐘弾へ溝を掘るのは、実際、スラッグ弾でもライフルド・スラッグと言って銃身との抵抗を減らすために付けられているし、コルクも材質は違うが、ブリネッキ・スラッグという同様な効果を狙った弾があったはずだ。


 ライフルド・スラッグほど顕著な溝ではなく、ただ表面を模様の様になぞった程度だが、スムーズさは増している様で、弾の鋳造精度の向上と相まって命中精度はどんどん良くなっている。


 ブリネッキ・スラッグ擬きに関しては、取り付ける木栓に左右され、悪いものでは弾があらぬ方へと逸れる状況がたまにある。ただ、しっかりした木栓であれば、ただの釣鐘弾より精度はよい。


 と、まあ、この一年、熱心に弾の改良はやっているが、片手間でやっている口薬の方は芳しくない。


「銃はこの形状に拘る必要は無いんではないのか?例えば、火皿を無くして、直接、雷薬を火口に取り付けても良いだろうし、雷薬を火挟みの方に取り付けられるような形状にしても良いではないか」


 パーカッションロックって奴がそんな感じの構造だったと思うので、その様に説明してみた。


「はい、その様な構造につきましても実験しております。ただ、それら方法でもなかなか暴発を防ぐことが出来ませんで・・・」


 なんで?パーカッションロックってそんなんじゃないの?と思って詳しく聞いてみたら、どうやらキャップの存在に思い至っていないらしい。


 パーカッションロック以後の銃に使われる雷管と言うヤツは雷汞を少量、主に金属製のお皿に詰め込んで作られている。前世、おもちゃ用火薬にプラスチック製を見たこともあるが、まあ、素材は誤差の範囲。


 だが、通貫の考案したものはそうではなかった。運動会のスタートに使うピストルがあるが、アレに昔よく使われていた紙火薬の要領で、紙に火薬を巻いたものを丸めて携帯するようにし、必要量を切り取って火挟みや火皿へと装着する方法だった。


 そら、ちょっとしたことで事故が起きるわな。



 火蓋を閉めようとして、火薬を擦って暴発。火挟みに無理やり押し込もうとして暴発。携帯中に擦れて出火。


 そら、危険すぎて使えないわ。


「通貫、火薬を小さな皿に詰めたらどうだ?」


 どうして思いつかないのだろう?まあ、これもコロンブスの卵かも知れない。


 だって、薬莢が無い時代だもの・・・





 そんなことをやっていると急報が入った。



「若!若!大変ですぞ!」



 知らんオッサンが走ってきた。



 訂正。アレはよくいる爺やというヤツだ。側近としてついている。ああ、子供だからモリ役って言うんだったか?それだ。


「どうした?」


 いつもはあまり気にもされていない俺。そういえば、両親と会ったのは何時だったか・・・


権令ごんれいさまがお亡くなりになられました!」


 ああ、権令ごんれいというのは領主の事だ。東には宮というのがあり、そこがいわゆる中央政府だが、そこが直接統治しているのは東本島と荘内のみ。小豆、屋島、男木・女木の三地方にはそれぞれの領主が居り、その名称が権令という。それが、どうやら、死んだらしい。ん?なんだってぇ!!



「どういうことだ!なぜ、父が死んだ!」


 父はまだそんな歳ではないはずだ。なんせ、俺がまだ14か15歳だぞ?見た目は間違いなく30代前半だったと思う。病気という話も聞いていない。


「壇ノ浦にて鍛冶屋視察の帰りに落橋に巻き込まれた模様。橋の案内にあたった階納がいなん家の者が責任を取りその場で自害との報を受けております」


 なんと、事故の様だ。鉄橋が落ちたらしい。確かに、ステンレスらしきモノや鋼材を生産できるのだから鉄の橋があっても不思議はない。が、未だその技術は未熟という事なんだろうな。


 ここで出てきた階納がいなんという一族も階丹がいに同様、伝承の技を継ぐ一族らしい。


 まあ、そこまでは良い。不幸な事故なんだろう?領主の慣習か本人が仕事人間か知らないが、子供とあまり顔を合わせない人だったんだが、まあ、うん。


 思い出してほしい、そのうち攻め滅ぼされるんだろう?屋島って。そこで領主になるという事は、敵が攻めて来る日も近いのか?

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ