44・どこに敵が来るか分からないなら、移動砲台作れば良いんじゃない?
どこに敵が攻めて来るか分からない。
なので、ここという場所に全て要塞を築いてしまえばもっとも手っ取り早いが、そんな工業力は今の屋島にはない。
長崎の鼻に3門の28センチ要塞砲を据え付けることが精一杯だった。
もちろん、それより小さな艦載砲クラスの20センチ砲や15センチ砲がいくらか存在しているし、もしもに備えて都周辺にも要塞をという計画も存在している。
「まさか、要塞砲や戦艦砲を列車から撃つのか?そんなこと無理じゃろう」
ウルプが呆れたようにそう指摘する。
だが、前世には列車砲というモノが存在している。
鉄道の歴史と共に軍事にも新しい移動手段として取り入れられたが、その中で、「あれ?これを使えば重砲の展開も早くなるし、攻城砲を迅速に展開できそうだ」なんていう考えが発案されるようになってくる。
要塞というモノ自体が、交通の要衝に存在しているのだから、当然、その近くには鉄道が敷設されていくことになる・・・・・・
進軍速度が鉄道によって早まれば、当然ながら馬匹で重砲を運んでいては付いて行けなくなる。そうなると重砲も列車で運ぶという発想になるが、だったらいっそ、列車に砲台を据えれば展開する手間が省けるんじゃね?となるまでに時間はかからなかった。
鉄道が発達しだした当時はまだ自動車が実用化しておらず、移動手段といえば徒歩か乗馬や馬車である。そんな中で鉄道の速度は驚異的であった。
21世紀にはもはや浪漫兵器の類という事になるが、列車砲が活躍した第一次世界大戦頃には、まだまだ実用的だった。
その余韻を引き摺ったヒトラーが夢に描いた80cm列車砲などは、「技術的には驚異的だが、戦術的には失敗だ」と言われている。
たしかに、第二次世界大戦であれば、その資金や資源を飛行機や戦車に投入した方がより効果的であったのは間違いない。が、それは時代の趨勢がそうさせたという話だ。
日本でも、戦艦大和なんか作らずに空母をもっと量産すれば良かったという意見が多い。
しかし、それも後から見ればそう見えるに過ぎない。その時点で、確実にそっちが正解などと証明するナニカを誰も示す事なんか出来なかったのだから。
閑話休題
ウルプが馬鹿にする無蓋貨車への砲の据え付けだが、世界初の列車砲はまさにそれだった。
米国において生起した南北戦争へと北軍が投入した13インチ列車臼砲はまさに、馬や人力による移動が難しい臼砲という鉄の塊を列車で運び、降ろして据え付けずにそのまま運用するという形をとっているシロモノだ。
臼砲が攻城砲なので、要塞攻撃に用いたわけだが、屋島においては逆の運用を考えている。
いや、それ自体が第一次大戦で威力を発揮した事から戦間期には各国が様々なドクトリンを掲げて開発に邁進し、沿岸防備というドクトリンを掲げた国もある。
屋島においてもそれに近い考えが採用できるのではないだろうか?
なにせ、海岸線全てを要塞化するのは物理的に不可能だし、非効率極まりない。では、ごく限られた要衝にだけ要塞を築けばすべてうまくいくかというと、そう簡単に解決できるものではない。
死ぬ直前の日本ではそんな、あり得ないような万能兵器を信奉する人たちも居たが、時代が違えば列車砲なんてまさにソレだったのではなかろうか。
道路が未発達で自動車がまだまだ未熟であった時代、後の自走式ミサイルや自走砲のように迅速に展開できる兵器といえば、列車砲である。
では、列車砲が展開できればすべて解決するのかというと、実はそんな簡単な話ではない。
自走砲だけ展開しても、敵を押し返す、あるいは敵要塞を攻略できる地上兵力が共に行動しないと役に立たない。
80センチ列車砲のように、それ1門を運用するのに5000人などと言う人員を必要としてしまえば、いくら威力が大きな砲弾を撃ち込めたとしても、その人員の半分でも攻略部隊に回した方が攻略は楽になりはしないだろうか?
いや、列車砲を動かすための物資を攻略部隊へと充当しても、結果は大きく違わないかもしれない。
たしかに、見た目は華々しい活躍に見えるソレであっても、費用対効果という観点で見れば、果たしてどうだろうか。
たしか、そんな話をしているサイトへと嫌がらせのようなコメントもしたっけ。
とまポーク貰っても、自分でちゃんと解体してハムにできるのか?出来上がったハムをたくさんもらえば、誰でも簡単に料理が出来てすぐに食べられるんだが?
と。
まあ、大半の人は理解も出来なかっただろう。トマホークという有名な兵器に心奪われていたから。
トマホークは米軍が有するデジタル地形図にアクセスしてルート設定しないと使えない。もちろん、複数の誘導方法を組み合わせるが、無くて良い訳ではない。
これって米国の意向に左右されるとても危険な話なのに、「日米一体化」と喜んでいる。なのに、持つ理由が米国に依存しすぎない事。本当かな?
たいしてハムことAGM88HARMという対レーダーミサイルは、ウクライナ軍が取得数か月後には実戦使用を公開しているほど容易に運用可能な兵器で、トマホークが米英2か国、あと、検討や計画中が数か国というのに対し、HARMは20か国弱が有し、似たようなミサイルの独自開発や類似品の導入は多くの国が行っている。
わざわざ自ら下僕になることを喜び、自分の意思だけでは使えなくするというのはちょっと何考えてるのか分からなかったが、今はどうなってるんだろうね?
おっと、さて、列車砲の話だが、28センチ砲でも載せられるんじゃない?




