表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/45

43・これからの問題について考えてみた

 東との交易が行われ、電気関係の問題が一挙に前進する事になったのだが、それですべてが解決するなんて話にはなっていない。


 そろそろ玄とキタンとの戦いが本格的に再開され、そうなると屋島への再侵攻も懸念されている。


 以前の侵攻を長崎の鼻で退けはしたものの、あれからすでに3年以上経っているので戦力の回復があるかもしれない。


 さらに、今回は玄が海上輸送がアキレス腱であると認識して内陸部からキタンを狙う事を優先しているという。そうなると、海上戦力が屋島へと向いて来るのは必至


 そこまでは分かるのだが、俺にはそんなに船の知識は無いので判断できないが、ウルプが言うには、諸のジャンク船での遠洋航海は危険は伴うが都近辺への上陸も可能との事だった。そりゃあ、長崎の鼻へ来るのも、いくら近いとはいえ外洋航海には変わりない。

 そもそも、諸には航海技術があるので、外洋航海は不可能ではないらしい。ならば、キタンの妨害を受けない外洋ルートから侵攻してきても不思議はない。


「屋島にはあの蒸気船とやらがあるから、最終的には何とかなるじゃろうが、手薄なところを狙われては被害は避けられん。北へ進むのはキタンと正面からやり合うことになるから、階丹や階納の施設が狙われる事は無いじゃろうが、都周辺は分からんぞ?」


 そもそも、長崎の鼻へ攻め込んで来たのも、そこが最も近く、攻めやすく上陸しやすいと踏んでの判断だっただろうことは俺にも分かる。

 ただ、それは壊滅的な打撃を受けて失敗した。


 そうなると、さらなる強力な艦隊を整備して攻めて来るというのが正攻法だが、奇策、或いは搦め手として、こちらの中枢都市への奇襲や陽動という可能性も無いではない。

 もし、そんなことがあれば戦力の分散は避けられない。


 そもそも、防御側というのはどうしても受動的な対応になってしまう。やはり、攻撃側が主導権を握りやすいのは動かざる事実だろう。


「仮に上陸されても、最終的には海に叩き落せるじゃろう。今の屋島の戦力からしてそれは疑いようがない。ただ、どこに上陸されるかという部分に大きな問題がある」


 ウルプの指摘はもっともだ。長崎の鼻への上陸が今のところ最有力ではある。


 ただ、屋島は地形的にどこへでも上陸できるというほど易しい地形ではない。長崎の鼻から東へ伸びる海岸は既に要塞化されているので問題外として、そこからさらに東となると上陸しても取り付く場所が断崖という状態が続く。海岸伝いに何キロも歩かなければ陸に上がれない。当然、奥行きが無いので大部隊の上陸には向いていないのは一目瞭然だ。

 さらに東へ行くと、多少奥行きが出来るが、山が迫った地形で容易に陣形を整えることが出来ない。


 そして、都周辺になれば海岸もあり、小さいながらも湾もあり、上陸後の陣形形成にも申し分ない。


 屋島南岸への上陸が行われたとしても、長崎の鼻は孤立しない。北岸沿いに船舶輸送が出来るので何の痛痒もなく、逆に、東西から挟撃できてしまう環境にある。


 が、一定戦力が都周辺に攻めてきた場合、実に厄介な事に、長崎の鼻ほどの防御は無い。では、防御を固めてはどうかって?

 残念だが、モノには限りというモノがある。もっとも拓けた都周辺に新たな要塞を作る余地はないし、あまりにも広大過ぎて水際で食い止めることも地理的に不可能だろう。九十九里浜に敵が上陸してきそうだから陣地を築けと言われて、どこに築く?総延長66キロもあるあそこに。しかも、大砲の射程はたかが10キロ程度の時代に。


 あまりに広く薄くでは簡単に破られかねんし、かといって予想を間違えれば大変だ。


「ウルプ。可能性は否定できない。しかも、特定の陣地を築くのも得策ではないよな。幸い、鉄道が敷かれている地域だから、いざとなれば鉄道で兵力を展開する方法がある。固定の要塞ではなく、機動兵力を展開して守ることになるだろう」


 ウルプもそれには頷いている。森の中を巧みに移動し機動展開するキタンにとってもなじみ深いモノらしい。あちらは神出鬼没といった方が良いが。


「ただ、鉄道で移動するのは歩兵じゃな。迫撃砲や狙撃砲の展開は無蓋貨車で可能になる。じゃが、野砲はどうする?そのまま貨車の上から撃つわけにもいかんじゃろ」


 俺はそれを聞いてそうだと思った。


「確かに、何の設備もない貨車の上から撃つのは無謀に過ぎる。が、貨車自体を砲座にしてしまえば巨砲を載せて遠方から撃てるようになる」


 俺はニヤリとそう返したが、どうやらウルプは呆れている様だった。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ