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37・キタンへ鉄砲を売り込もうと思うんだが

 火縄銃の欠点は何かご存じだろうか?


 射程が短い?


 確かにそうだが、それは火縄銃固有の欠点ではなく、滑腔銃に付きまとうモノだ。21世紀においてもライフルショットならいざ知らず、多くの散弾銃が同じ欠点を有している。


 先込めだから射撃速度が遅い?


 これも、先込め銃は全てそうだ。火打石式や打管式でも変わりがない。


 火縄の火が消える?


 火縄銃の火縄は中に火薬を仕込んでいるので、少々の雨や湿気で火が消える事は無い。それに、底面以外紙薬莢の現状では、水分の影響を受けやすい現状は同じだ。


 ボルトアクションが実用化された初期、ドライゼ銃を参考にフランスで作られたシャスポー銃は、やはり紙薬莢だった。ドライゼ銃が弾丸側に雷管を置いたのに対し、撃針の損傷を避けるために、底面に雷管を置いた以外に画期的な違いは無かったその銃を、フランスは高温多湿の東南アジアに持ち込んだ訳だが、見事に湿気や雨にやられて部隊全滅という惨事を引き起こしている。敵方も銃を使っていたのだが、その先込め銃は湿気対策をしていたので、本来圧倒できるはずのフランス側が湿気のせいで全滅という、逆転が起きてしまった。



 全金属薬莢でない以上、湿気や雨対策は大きな違いはない。



 では何かというと、その火縄の匂いや煙だ。


 火縄銃の射程は長く見積もっても200メートル程度でしかない。火薬を包んだ紙や縄に火をつけると、独特な匂いや煙があたりに立ち込めるわけだが、当然だが、敵を射程内に捕らえた頃には、敵も銃の存在に気が付いてしまうことになる。


 今現在、キタンが銃を受け入れられない大きな要因がコレだ。そして、火縄銃のどうやっても覆せない欠点だ。


「キタンで銃を使うのは本当に無理だろうか?」


 火縄銃の欠点と、それを克服した打管式の説明と共に、ウルプに問うてみた。


「そうじゃの。確かに、その話を聞くと、考えが変わるやもしれん。じゃが、良いのか?」


 ウルプにとっての問題は、母国の利益にもなるが、打管式が普及すれば、それは玄にも知られることになるという問題だった。


「いつまでも隠しおおせるものではない。誰かが気付いて創り出す事だろう。そうなれば、先に持っていた方がより有利になるとは思わないか?」


 先に新兵器を所持していれば、それを用いた戦法の確立も行える。そして、対応策も同時に講じる猶予も持てるわけだ。


 敵が持ち出してきたころには、こちらは攻撃法だけでなく、防御方法や回避方法も編み出している事だろう。そうすれば、敵の攻撃を回避して攻撃を行う隙も出来てくるわけだ。


「なるほどの。確かにそれはそうじゃな。父やキタンの者たちが納得さえすれば、広めることは出来るじゃろう。じゃが、大丈夫なのか?」


 何がかよく分からなかったが、思い至るものがあった。


「問題ない。銃自身は鉄砲隊が新型に更新している分、余剰が出来てくる。それに、雷管さえあれば、銃については既存の火縄銃を改造することで製作も出来るだろう」


 そうなのだ、そもそも、屋島の打管式銃は火縄銃の改造品だ。専用で打管式銃を作ったわけではない。そんな時間的余裕もなかったしな。


「まずは、雷管がどれだけ作れるかじゃ。銃は屋島からの輸出だけでなく、キタンでも作られてはおるからの」


 ああ、そうか。雷管の製造が出来なければ意味が無い。


「それも問題ない。今標準化している元込め銃の薬莢に付ける雷管と先込め銃の雷管は同じものを使う。大きく構造が違わない限り、改造部品を付ければキタンの火縄銃でも使えると思う」


 屋島の火縄銃は火ばさみと火皿に加工を加えて雷管を発火可能にしている。よほど極端に違う構造やバネの強度が違いでもしない限り、仕様に問題はないはずだ。


 そう言う話し合いがあって、まずはキタンの火縄銃を改造できるか検証することから始まったが、特に問題なく改造できることが分かり、ウルプにはキタンの説得に当たってもらう事となった。

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