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35・足りないモノを補うのも大変だ

 信管の完成に一安心したのだが、実はもう一つ問題がある。


「上陸された地域の報告書は読んだか?」


 俺は信管の話がひと段落した段階で翔に問いかけた。


「はい、現在の元込め銃をもってしても十分に防ぎきれなかったとの話でしたね」


 先の戦いでは、一部で上陸を許しているのだが、その戦闘では元込め銃でも十分とは言えない戦況が報告されている。

 解決策はあるといえばあるのだが、その解決策である機関銃の完成は今の段階では難しい。


 単に機械的な事ならすでに解決出来るだけの技術力は有しているのだが、使う火薬が黒色火薬や褐色火薬である。

 前世において機関銃が実用化したのは無煙火薬の時代だった。


 火薬と工作技術が丁度その時代に合致したというのもあるが、黒色火薬や褐色火薬では、無煙火薬に比して残渣が多すぎるという問題がある。

 無煙火薬ならば数百発連続で撃てるところだが、黒色火薬では百発程度で残渣の影響が無視できなくなる。そして、銃身内部や逆流して可動部に付着した残渣によって故障や暴発の危険が出てきてしまう。


 機関銃は元込め銃の機構に反動やガス圧を利用して機械的に開閉する仕組みを組み込んだものと言えるのだが、黒色、褐色火薬でガス圧利用は問題外だ。ピストンやシリンダーの精度や材質、強度ウンヌンのはるか手前で、残渣によるガス穴の閉塞やシリンダーの目詰まりという問題が出てきてしまう。


 これは作るまでもなく、火薬の特性から考慮して、導入が却下された。


 反動利用ならある程度動かせるのではないかという結論は出たのだが、それでも頻繁な掃除が欠かせないという。

 しかし、百発撃つかどうかの段階で一度分解して掃除するなどという事は不可能と言って良い。百発など僅か数十秒の話だ。交戦中に一斉射ごとに分解掃除など、物理的に不可能な事は容易に想像がつく。


 ならば、銃身を多数並べればよいという話になる。


 これは試作もされた。


 が、そこで重大な事が発覚した。


 簡単な話だ。


 銃身を多数並べるという事は、一丁数kg程度の銃を10丁、20丁と並べるという事。


 100kg近くになる結束銃は兵士が一人で運べるような重さではなく、砦に据え付けるなら良いが、野戦では使えない。大砲用の台車に据え付けるという方法もあるが、それでも迅速な移動は難しく、演習において簡単に陣地を奪取されるという結果を招いてしまった。


 実は、この種の兵器は19世紀後半にフランスで作られていたらしい。


 しかし、所詮は銃と同じ射程しかないので、最前線にそんな重量物を配置しても効果は芳しくなかった。


 考えても見て欲しい。


 銃ならば一人の兵士が素早く弾を装填できるが、10も20も銃身があるとどうだろうか?装填している間に敵が眼前に迫ってくることになるだろう。


 だったら、棒火矢の方が役に立つ。


 棒火矢ならば、一発で確実に十m以上の範囲を制圧できてしまうのだから。しかも、使用するのは僅か一基の発射機のみ。移動も多少大きな鉄砲といったところなので、兵士一人で担いで移動が可能だ。

 効果と機動性を考えると、棒火矢が圧倒的な効果を持つ。


 では、回転式多銃身銃というモノはという話をした。


 いわゆるガトリングガンなのだが、これも4~6本の銃身を束ねることになり、機関部が結構大掛かりになった。しかも、手動式だ。


 結局、これも重すぎた。もし、無煙火薬で銃弾の口径が8mm程度ならば良かったのかもしれないが、現状、威力のある弾丸を打ち出すには15mm程度になってしまうので、どうしても50kgを超える大型のモノしか作れない。

 結束銃よりは扱いやすいが、機構が複雑で重量があるので、砦に置くならばという結論になってしまった。



 すでに試したそれらがあるので、まあ、今更ではあったが、何とかしなければならなかった。


「これまでの検討や試作では根本的な解決は見いだせない。これも根本的解決策とは言えないが、今ある銃にこう、機関部の下に弾倉を付けて射撃速度を上げることは出来ないだろうか?」


 前世においては当然の機能だったが、この世界ではいまだ実現されていない。


 ボルトアクションでわざわざ弾倉なんか付けても付けなくてもと思うかもしれないが、一発づつベルトや弾薬嚢から銃弾を取り出して装填するのと、レバー操作で装填を終えるのとを比べれば、どちらが早いかは一目瞭然だろう。


 翔は俺が描いたイラストをしばし眺めて考えている様だった。


「・・・・・・そうですね。可能だとは思いますが、5発も配置するとなれば、銃からかなり下に突き出した箱を設けることになりますが、よろしいので?」


 そう、口径15mmの弾を5発も装填するとなると、8mm程度しかない前世のライフル弾ならば10発は装填可能な大型の弾倉がぶら下がることになる。今の形状を維持するには、どう工夫しても2発が限界だ。


「使い勝手の検討から始めるしかないが、支障が無ければ5発を前提にしてほしい」


 俺がそう指示すると、翔は仕事へと戻って行った。

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