表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/45

33・さらに問題があったことを思い知る・・・

 なかなか思い通りにいかない。これまでうまく行きすぎていたからだろうか?


 これまでは知っている事を使うことが出来た、そして、通貫や弦能はそれを実現する能力を持ち合わせて居た。しかし、まずは電気分野でコケ、順調に思えた蒸気機関でも発展上の必要要素を飛ばしたことで、基礎が無いままに段飛びしてズッコケた。


 順調に性能を上げてきた砲関連も、必要なものを見逃していたことで発展にブレーキがかかっている。

 確かに、通貫は優秀だ。すでに独自に弾道学について考察している。このまま放っておけば俺などそろそろ不要になるだろう。


 弦能もひじょうに優秀だ。電気こそ東の人間に頼ることになりそうだが、今のところは蒸気機関さえ実用化できれば問題ないレベルだ。その発展は弦能に任せておけば心配ないだろう。すでに高温高圧蒸気について理解している様だ。スクリューやタービン機関の原理についても教えたから、そう遠くないうちに実現してくれそうだ。



 気分転換にふと考えると、では俺は何をすればよいのか、急に不安になってしまった。


 そんな時、ウルプがやって来た。


「ウルプ、大丈夫なのか?」


 すでにウルプのお腹もずいぶん大きくなっている。見ているこっちが気が気でない。


「大丈夫じゃ。それに、子の健康には親も寝転んでばかりではダメじゃからの」


 そう言って笑っている。


「それで、どうしてこっちへ来たんだ?」


 ウルプは妊婦なので仕事から外れてもらっている。とはいっても、時折こうして散歩がてらやって来ることもあるが、そろそろ歩き回るのも大変そうなので、安静にしていてもらいたかったのだが。


「運動じゃ。それに、夜は夜で相手も出来んしの。食事時にする話でもないから機会が無い、旦那様が暇なら相談に乗ってくれ」


 そう言って、執務室に置かれた椅子に腰かける。


「のう、女子が生まれたらキタンへ嫁に出そうと思うんじゃ、ワシの子じゃから喜んで受け入れてくれるじゃろう」


 いきなりそんな事を言いだすのでびっくりして声も出ない。


「驚く事か?キタンでは普通の事ぞ?それに、今はキタンと玄が戦い、屋島はキタンに組しておる。ならば、屋島を裏切れんようにする必要があろう?ワシ自身、屋島をキタンへ引き留めておくために来た人質じゃ。じゃから、お互いを更に結び付けるには、ワシの子をキタンへ嫁がせるんじゃよ」


 いやまあ、理屈としては分かるけど、生まれる前に、その母親がいきなりそんな話をしだすなんてびっくりなんだが。


「これが生まれの違いかの。ワシの家、ヤッテーンマキッは、武の名門じゃがな、国を裏切らん証として、他家へ養子や嫁として送り出しとる。養子先や嫁ぎ先を乗っ取らんようにも考えて行動もしとる。じゃから、ワシは男を産めんのじゃ。男が生まれたら、旦那様はどうする?」


 いきなりの話があまりに重すぎる。そりゃあ、飯時に出来んわ。


「どうすると言われても。ウルプが産んだ子ならば、男も女も関係なく育てたい」


 そう言うと、どこか悲しそうな顔をした。


「優しいの。じゃが、それではヤッテーンマキッが屋島を乗っ取るぞ?そうならん為には・・・」


「それでもだ!」


 ウルプの言葉をさえぎってそう言った。


 なるほど、ウルプが盛んに輝や音野と子を作れと言っていた理由はこれか。ヤッテーンマキッという家がどれほど凄いのか、実感がわかないが、そうかといって、ウルプの産んだ男児が俺の後を継いだからと言って屋島がヤッテーンマキッの配下になる訳ではないと思うんだが。


「優しいが、甘いの。ヤッテーンマキッにその気はない。じゃが、キタンでは乗っ取ったと警戒されかねん。分かるか?」


 分かるかと言われても困るんだが。


「先に言うておくが、ワシは男が生まれたら養子に出すぞ。旦那様の子じゃから殺しはせんが、これだけは曲げられん」


 ウルプがそう言ってくる。それならできるだけ女の子であって欲しいもんだが、女の子でもキタンへ嫁がせるんだよな?


「じゃから、早う輝か音野に男を頼むぞ。長男でなければ問題にならんようする」


 産むまえから第二子宣言?


「分かった。ウルプがそこまで言うならそうしよう」


 21世紀日本では考えられん話だが、これがこの世界の常識なのかもしれん。


 まさか、こんな所にまで問題があったとはな。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ