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32・解決策が見つかった。が・・・

 前線と砲兵隊の通信手段が必要という事で、手旗信号使われとらんのかと思ったら、無いらしい。


「狼煙ほど遠くへ情報伝達は出来ないが、旗を振って相手に情報を伝えれば、狼煙よりも詳しく内容を伝えることが出来ると思うが」


 俺は武将にそう返事をした。武将はしかし、それではあまり詳しく伝わらないのではないかという。実のところ、俺も手旗信号なんか分らん。が、物は試しで手の動きで試してみると20通りくらいの動作が可能だった。


「このような動作一つ一つに意味を待たせ、それによって文や符号を送ることでお互いに情報伝達が可能ではないだろうか?」


 そう言うと、しばし考えて武将が口を開く。


「つまり、一つの動作に言葉や符号の意味を持たせ、連続して送るというのですな?確かに、指の動きだけで信号を送り、お互い連携するというやり方が存在しております。それを大々的に行えばよいと」


 なるほど、個別の人やチームの連携には手信号が使われているらしい。


 確かに、声が出せない環境で連携するにはそれが一番だろうな。


「そう言う事だ。出来ればその場限りの合図ではなく、平素から使える物として遠距離の情報伝達などに役立ててもらいたい」



 手旗信号の元となった旗振り通信というのは江戸時代に先物取引のために発明されたらしい。大阪から江戸までを最短2時間弱、最大でも8時間で結んだという。人や馬だと何日もかかる距離を半日以内で情報を伝える手段というのだから、電話や無線が出来るまでは非常に有効だったはずだ。


「霧や雨は確かに仕方がないが、夜も使える手段として、光の明滅で通信するものを作っても良いな」


 武将が不思議な顔をするので、トントンツーとやった。


「これは音だが、これを光の明滅時間でやればいい。明滅に言葉や符号の意味を持たせれば、旗同様に使えるのではないか?火を使うから昼間は旗の方が有効かもしれんが、夜には旗より遠くへも通信が可能だと思う」


 そういうと武将は合点が言ったように頷いた。


「分かりました。それら方法ですと、見晴らしの良い山の上や海岸を使えば、昼も夜も物見台伝いに長崎の鼻から屋島へ知らせを送れますな。しかも、その日のうちに送ることも可能になりましょう」


 理解が早くて助からる。


「それでは頼んだ。それぞれの符号作りや習熟に多少の時間は必要だろうが、焦る事は無い。うまく行けば船同士や船と陸の通信も可能になるだろう」


 そう言うと武将も頷いていた。



 すぐには無理だが、数キロ離れた距離での通信も簡単にできるようになってくれる事だろう。



 さて、距離測定のために、通貫に測距儀の簡単な原理を教えたのだが、さすがに苦労している様だ。仕方がない。土台のない所にうろ覚えの模式図を教えたんだ、訳が分からなくて当然だろう。


 まず持ってきたのはただの双眼鏡だった。そりゃあ、レンズの性能が上がったらしく、前世ほどではないが綺麗に遠くが見えた。


「これで距離が分かるのか?」


 俺がそう言うと


「今見ている物の距離がこの目盛に出ております」


 というので、ズーム目盛を見る。いや、合ってないだろこれ。


「通貫、これ、何メートルだ?」


 そう言って通貫に目盛を読んでもらう。


「30メートルですね」


 なるほど、俺の部屋から窓の前にある木まで30メートルか。


「おかしいですね。少々お待ちを」


 そう言って通貫が操作すると、


「あれ?なぜ・・・」


 うん、通貫と俺の視力の差だよ。ウルプに使わせるともっと酷いことになると思うよ?


「個々人の目の良さで見え方が変わるようだ。その目盛は個々人専用に調整しないと使えそうにないな」


 通貫は腕組みして考え込んでしまっている。


「だから、左右の目で違う角度に設置したレンズを動かして行って、見た画を一致させる方法だよ。これではその人の目の良さで見える焦点が変わってしまう」


 通貫が首をひねる。


「左右で一致させる・・・」


 覚えている模式図をもう一度絵にして通貫に説明する。


「視差か何をを利用する方法らしいですね。そのようなモノを作ってみます」


 俺の説明が悪いせいでまったく前へ進んでいない。測距儀ってどんな構造だっけ?



「資村さま、階丹と私の蒸気機関は根本的に違う構造でした」


 弦能がそう言って事のあらましを説明してくれた。


 簡単に言えば、俺が教えたモノは、シリンダーの上下にバルブがあって、交互に蒸気を吹き込むことで往復運動を行う複動式という奴だった。


 それに対して、階丹の機関は、ワットの蒸気機関などの、黎明期の単動式だった。


 蒸気を一方から送り込み、その後、シリンダー内に水を注入して蒸気を冷却することで収縮させるというモノ。


「それでです。この階丹の手法を応用して復水器を作った場合、排気側を負圧に出来ますので、吹込みだけでなく、吸出しによる力の取り出しも可能になります。私の機関より効率が良く、階丹の機関など話にならない性能を持たせることとなるでしょう。つきましては、正式に階丹と我が機関の開発を統合していただくことは出来ませんか?」


 という。まあ、弦能は方々に手を広げている関係で、出来る事なら蒸気機関を階丹へ丸投げしたい思惑もあるようだ。


「それは構わないが、その新しい機関はいつごろできそうだ?」


 そう言うと少し考えてから


「1年は見ていただきとうございます」


 そう言うのでそれで許可を出した。遅れても特に処罰は無いことも付け加えている。



 そうか、どう頑張っても完成まで1年か。蒸気船が海を走るのはさらに半年から1年先、まだまだ先は長いなぁ~


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