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23・敵船団が海を埋め尽くしているんだが

 機雷の爆発音以外、大きな音がしない。夜目が効く精鋭たちが弓矢や槍で戦っているのだろうが、ここまでその声が届く事はなかった。


 そうこうするうちに空が白み始めてきた。そこに見えたのは、海を埋め尽くすような大船団だった。


「何だあれは・・・」


 おれはだらしなく口を開けてそれを見ている事しか出来なかった。


「アレは投石器を積んだ船か」


 ウルプが海を睨んでそう言う。だが、俺にはどれが何なのかさっぱり分からない。どれもこれも帆を上げた帆船ではないか。それ以外に何の特徴があるのかよく分からなかった。


「そのようですな。投石されるより先に棒火矢を撃ちかけたいのですが、よろしいでしょうか?」


 武将がウルプに同意しながら、攻撃許可を求めてきた。


「構わない。ところで、棒火矢と投石器はどちらが飛ぶんだ?」


 それが問題だと思う。投石器が棒火矢より飛ぶのであれば、対抗手段として弱いのではないだろうか?


「飛距離に関しては、風次第ですが、ほぼ同等か、棒火矢の方が上です。敵が石ではなく炮烙を投げてきた場合、こちらが飛距離で有利になると思われます」


 との事だった。


 投石器はモノによるが、300~500メートル程度の飛距離があるという。対して、棒火矢は風次第で1500メートルを超える。重量がある火炎弾ですら500メートル飛ぶというのだから、確実にこちらが有利だろう。


 そう考えていると徐々に敵船団が近づいて来た。


 ドン、ドドン


 立て続けに水柱が上がり数隻の船が沈んでいくのが見える。機雷がまだ活躍している様だ。


 ドドドドドン


 数か所から棒火矢の一斉射撃が行われた。白煙を曳いているので目で追うことが出来る。


 そして、花火の様に光の花さ咲く光景が出現した。まだ完全に夜が明けきっていないので非常にきれいに見えた。

 それから数拍置いて爆発音が聞こえてくる。


「船が燃えているな。あ、爆発した」


 花火の様な爆発をまともに被った船が燃え盛っている。その中の数隻から爆発が起きた。


「やはり、炮烙を積んでいる様ですな。こちらに飛距離のある兵器が無ければ、あれをまともに喰らう所だったでしょう」


 武将が爆発する船を見ながらそう説明している。


 しばらく棒火矢による攻撃と決死の突入を行ってくる船団の攻防が続いた。


 初めのうちは機雷による損害を被る船が多かったのだが、機雷の枯渇と安全航路を見つけた敵の操船によって次第に敵が浜へと近づいてきている。


 すでにあたりには操縦不能になって燃え盛る船や機雷の爆発で一部を吹き飛ばされた船なども目立っているが、それらを避け、或いは押しのけて入り江へと突入してくる船が後を絶たない。


「あの水中爆弾は効果絶大ですが、こう数が多くては防ぎきれるものではありませんね」


 時折指示を出しながら武将がそう言ってくる。


「本当ならこちらにも多くの船があれば、海上で数を減らすことも出来るんだろうが、生憎、屋島には船が無いのが辛いな」


 やはり、水際で待ち構えるよりも、海上で追い返した方が良い気がする。船があれば、夜中にいきなり襲撃されて気が付くという事も無いのではなかろうか。


「そうですな。屋島はその多くを小豆に頼ってきた面がありますので、屋島で独自の船団というモノも考えた方が良いかもしれません」



 弦能や翔に話しているが、階納や階丹が作る鋼鉄を用いれば、十分鉄船が作れる。今の鉄橋技術をうまく活用するだけで出来てしまう気もするのだが、さすがにその考えは甘すぎるだろうか。



 ふとあたりを見ると、ウルプが居なくなっていた。


「ところで、ウルプはどこへ行ったんだ?」


 そう言うと、周りも気が付いていなかったらしく、慌てだした。


「申し上げます!現在、歩兵隊詰め所にて奥方様が狙撃隊を集めて出陣準備中であります」


 マジかよ。確かに入り江に船団が侵入してきた。なんかデカいのも居る。総大将ではないにしても、高位の指揮官が座乗している可能性はある訳で、なるほど、それを見てこっそり抜け出したという訳か。

 本当は行きたくない。ここでずっと居たい。しかし、ウルプが出撃するとなると、俺がここでボケっとしている訳にも行くまい。


 武将?どうやら止める気はないらしいぞ。って、頼むから止めて欲しい。


「資村さま、ご武運を。施条銃の飛距離は投石器のそれと同等以上ございます。出来るだけ投石器を避けるように行動すれば問題ありますまい。側付きの者は全て奥方様のご指導を受けた者たちで固めさせていただいておりますゆえ」


 どうやら、行って来いという事らしい。マジかよ・・・


「よし、下の武器庫へ向かう。親衛隊は我に続け!」


 内心泣きながら、俺は櫓のはしごを降りるのだった。

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