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22・敵襲

 俺はウルプの体温を感じながらぬくぬくと眠っていた。


 ドゴーン、ドカーン


「敵襲か!起きろ、旦那様」


 いきなりウルプが飛び起き、さらには布団すら跳ね飛ばす。ものすごく寒かった。


「敵?」


 ドーン


 また音が鳴っている。


「大砲か?大砲撃ちこまれてるのか?」


 俺は半ば寝ぼけながらそう言った。あたりは暗いが、寝起きで暗闇でも何となく見える。ウルプは既に着替えを行っているところだった。


「大砲ではなく、旦那様の仕掛けさせた浮きじゃろ。アレに敵が引っかかっとるんじゃ」


 そう言いながら、手早く軽鎧を身に付けている。一方の俺はただ寒さに凍えているだけだった。


「ほら、用意するんじゃ、そんな恰好では示しがつかんじゃろ」


 自分の支度が整うと、すぐさま俺の夜着をはぎ取って、鎧装束を着せてくれようとしている。


「権令さま!敵襲です!現在沖合の水中爆弾に触れた敵船が沈んでおります。わが方もすでに配置を始めております!」


 ウルプによって何とか着替えを行っている最中に伝令が走り込んできた。


「爆発音が聞こえた。すぐに向かう」


 まだ眠気が残るが、威厳ありそうにそう応えて着替えを急いだ。


「そこは違うぞ、こっちじゃ、ほら、そう焦らんでええ」


 何だかウルプが子供に服を着せる母親状態だなとか頭の片隅で冷静な感想が浮かんできてしまった。




 それから少しして、櫓に設置してある陣屋へと到着した。


 あたりはまだ暗く、はっきりとは分からない。おぼろげに海の色と違うものが見える程度だ。


「資村さま、誠に申し訳ございません。敵は夕暮れと共に出港したようにございまして、宵闇の中を襲撃してきたようにございます」


 武将がその様に報告してくるが、仕方がない。この海峡は僅か40km程度しか幅が無いので、腕のある船乗りならば夜にこちらへ渡ることも可能だ。

 レーダーがある訳でも、無線機がある訳でもないこの時代に、夜間の襲撃を事前に察知して待ち構えるのは難しい。


「夜では敵がどこに居るのかまるでわからんではないか。敵はよう攻める気になったの」


 ウルプが呆れたように言う。


「そうでもございません。確かに上陸は難しゅうございますが、あえて夜に誘ってこちらの鉄砲や大筒の配置を暴露させれば、上陸する前に攻撃を仕掛けることも可能になります。今見えている船は僅かですので、犠牲を前提にした斥候のようなものだと思われます」


 武将がそう説明してきた。敵も考えたもんだ。まさか、機雷があるとは考えたなかっただろうが。


「すると、こちらから攻撃は出来ないという事か?」


 それはそれで、夜陰に紛れてかく乱部隊が上陸されては困る。


「いえ、現在、弓矢による攻撃は行っております。長崎の鼻、および、南北の砦間の浜辺には夜目の利く兵を展開して待ち構えております」


 夜陰に紛れて上陸しようというモノたちは精鋭が待ち構えて対応してくれているという。


「ならば、ワシも行こう。キタンの弓術を見せてくれよう」


 そう言って出て行こうとするウルプを引き留めた。


「まて、ウルプ。連中の目的の一つがお前なんだ。下手に動かれては困る」


 ウルプはキタンの軽鎧を着こんでいる。これではどう見ても、ウルプないしはウルプ付きのキタン兵だとまるわかりだ。無暗に前線に向かわせるわけにはいかない。


「なんじゃ、別に構わんじゃろ。屋島にわしが嫁いだのは知れておる。キタンの兵が居って何の不思議も無かろう」


 そう暴れるのだが、俺としては分かりましたと手を離す訳にはいかなかった。


「奥方様、今しばらく我らにお任せください」


 武将がそう言うって宥めている。ウルプは不満そうだが、暴れるのは止めてくれた。


「今はじゃぞ。敵将の船がノコノコ入り江に入ってきたら、止めても行くからな」


 ウルプはそう言うと、ふてくされながらも陣屋に置かれている椅子へと腰を下ろした。


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