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2・武術の修練として鉄砲を要求するのは間違っているだろうか

「若、型が崩れておりますぞ」


 あ~、なんで俺はこんなことやってんだろうな。まずは型を覚えることからと言って、刀の素振りをやらされている。

 子供用らしく、そんなに大きなものではないが、重い。


「それが終わりましたら、次は弓です」


 俺が気が付いたらこんな生活だった。すでに3年になるか。何だかんだと遊び時間が少ない。


 城を抜け出して遊ぶという話は戦国時代の武将にもある話だが、俺にはそんな自由が全くない。


 気が付いたのは10歳の時だった。当時はイマイチよく分からなかったので、言われるがままに生活していた。

 その結果が今だ。優秀な子だとか、立派な世継ぎだとか、そんな事を言われて勉強に武術にと忙しい。


 確かに、あの女神さまが用意してくれたらしい家臣の面々は優秀だ。実に優秀だ。教えるのが巧いし、話しによれば、この国でもかなり優秀な者たちだという。


 そうそう、俺は王家の生まれではない。日本みたいな風俗の国ではあるが、日本ではない。西暦もなければ、昭和だ平成だという元号もない様だ。ただ、西暦っぽい「東暦」というものが使われている。この国の建国から何と1785年が経過してるんだそうだ。が、それが西暦に照らしてなのか、はたまた仏歴や皇紀なのかは分からない。年数から今がどのような時代かまるで分らない。


 それだけではなく、和風ではあるが、着物や食事、武器からある程度の時代を類推するのも難しい。


 着物はどうにも昭和風で、全く時代感が無い。そして、洋服に類似したものまである。現代ではないが、かといって江戸時代以前とも考えられない装いだ。


 ここ、東の国には麺類が存在する。そして、俺の住む屋島には朝鮮冷麺風の麺が存在している。

 

 まあ、まずは東の国についてだが、本土というか本島は屋島のはるか南に存在している。船で数日かかるらしい。

 そこではコメや麦が盛んに作られているというのだが、屋島では麦は作れるが米は難しい気象環境にある。そこで、どう見てもジャガイモに見える芋が盛んに作られている。


 そう、ジャガイモでんぷんと麦粉やそば粉を混ぜた麺類だ。


 ジャガイモがある時点で時代が分からなくなるだろう?


 日本でジャガイモなんてどう見積もっても江戸時代の話だ。


 武器は俺が振っていたのは刀だ。これなら鎌倉期には形が出来上がっている。が、問題は弓だろう。少なくとも屋島の弓は和弓ではない。


 矢を置くのが体側か外側かと言えば、和弓同様に外側なのだが、材質は竹と木を貼り合わせたものではないし、長さも短い短弓だ。

 最大の特徴はトルコ弓の様に動物の骨や腱が使用されている事だろう。そして、最近は製鉄の進歩もあって、腱の代わりに鉄を使う場合もあるという。


 さらには、すでに火縄銃もある。


 時代もバラバラ、地域性もバラバラ。ここは一体どこなのかと問いたい。



 などと考えていると、弓を渡された。今現在だけでなく、漫画やアニメでもよく見る弓の形だ。トルコ弓でも和弓でもない。

 これが最新の弓だそうで、木の軸の内側に鉄心が取り付けられていて見た目よりも重い。しかも、この鉄心、ただの鉄ではなく、いわゆるバネらしく、木のしなりを補助しているんだとか。


 そして、当然ながら、弓なんて早々当たるもんじゃない。


「若、型がなっておりませんな。そのようなひじの曲げ方では矢が横に飛んでいきますぞ・・・、ほら」


 武術指導のこのおっさん、随分高位の軍人らしい。それはみりゃ分かるがね。いかつい顔にがっしりした体形。まさに「ザ・武将!」な感じだ。


 やはり、弓は難しいしめんどくさい。それより銃が撃ってみたい。


「鉄砲をやってみたい」


 弓を構えながらそう言うと、武将が困った顔をしている。


「若、鉄砲と言うヤツはいささか扱いが難しいですぞ。そのくせ、弓と同程度しか飛ばず、連射も出来ずというシロモノです。集団戦法として使うならばともかく、アレは指揮官が自ら扱うようなシロモノではございませんな」


 きっぱり否定された。


 だが、それも仕方がない。


 先込め式の銃は装填に時間がかかるため、どうしても速射性で弓に劣る。これはどうしても覆せない。


 さらに、その射程はというと、これも実のところ弓に優越するところが無い。大体似たような射程しか得られてはいない。弓を遥かに超える射程はライフル銃の出現まで待つ必要がある訳だ。


「だが、知っていて損は無いと思う」


 そういうと、やれやれといった表情で


「では、次回、鉄砲の練習をお見せいたします」


 見せるだけかよと思ったが、それはそれで仕方が無いのかもしれない。なんせ、火薬を扱う訳だから、いきなり触れさせるのは何かと危険だ。


 それに、火縄銃と言うヤツは早合という決まった量の火薬を小分けにしたものならともかく、自分で火薬を詰める場合、慣れないとエライことになりそうなのは想像できる。


「わかった」


 さあ、次回が楽しみだね。


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