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19・え?俺も陣頭指揮取らなきゃだめですか?

 玄からの使者の事をウルプにも話した。


「ワシの頸が必要ならいつでも取れ。遠慮はいらん」


 毅然とそう言うのだが、その必要が無い事を説明した。


「ウルプの頸は必要ない。もし、頸を差し出したとしても何の効果もない。俺が冬までにヌプリ川へ赴ける可能性は低いし、屋島から兵が居なくなればその隙に玄が支配してしまうだろう。玄にすれば、俺よりウルプの方が価値ある存在なんだろう」


 俺がそう言うと、ウルプは笑った。


「旦那様よりワシに価値があるか。ならば、ワシは屋島から長崎の鼻とやらへ行かねばならんな。今の諸には屋島の港まで攻め込む力はないじゃろうが、ワシが長崎の鼻に居れば、必ずワシを仕留めに来るじゃろう?」


 と、なんとも男前な事を言う。


「しかし、それでは相手の思うつぼではないか?」


 俺としてはそんなことは認められないのだが


「何を言うか。相手が望むからこそ行くのじゃ。が、ワシの頸を連中が取れるとは思えんがの。その前に、相手の大将が船を降りたところで仕留めてやるわ」


 そう言って不敵に笑っている。


「そうか。ならば、俺もいくしかないな。本陣に大将が居ればこその士気ともいうからな」


 半ばあきらめ気味に俺がそう言うと、ウルプが俺の襟を掴んで引き寄せた。


「それでこそワシの旦那様じゃ」


 引き寄せてそう言ってくる。



 どうやら俺も前線の本陣行きが決まったようだ。


 それを聞いて武将も破顔している。


「資村さまが陣頭指揮ともなれば、屋島の兵も奮い立ちましょう!」


 どうしてこうなった・・・・・・





 それから長崎の鼻砦へ行く計画が進んでいる。武将とウルプは意気揚々としているのだが、俺は気が沈んでいく。バトルジャンキーたちとは出来が違うんだよ!


 だが、行かない訳にもいかない。


 そうだ、俺の身辺警護の兵だけにでも高威力のライフル銃を持たせようか。全金属薬莢も全く生産が無いわけではない。在庫分も含めると、小部隊に配備する程度のならどうにかなるだろう。


 そう思ってただでさえ不眠不休であろう通貫を訪ねた。流石に呼び出すのも不憫だったからな。


「施条銃ですか?造ってよろしいんですか?いや、ぜひ作らせてください!!翔殿が銃身全施条用の工作機械を既に造っておりまして、資村さまの許可さえあればすぐにでも製造は可能です!!!」


 ギラギラした目が怖い。すでに何かキメてるんじゃないかと思うほどのハイな状態に見えた。


「あ、ああ、歩兵隊の充足分に支障が出ない程度で良いぞ?」


「承知いたしました!弦能殿の発案により、昨今は昼夜三交代で製造していますゆえ、100丁や200丁を作る余裕はございます!!」


 うん、非常に怖い。本当に大丈夫なんだろうか?



 ちょっと引く様なテンションで応じた通貫だったが、仕事自体は堅実だった。


 ボルトアクション銃の生産ラインから銃身の精度が良いものを選び出し、その銃身にライフリングを施していった。


「資村さま、施条銃が完成いたしました」


 そのため、通貫が持ってきたライフル銃の精度は非常に良い。


 試しに撃ってみたが、しっかり調整すれば500メートルでさえ十分狙える。更に、ライフリングの威力は非常にすごい。


「如何ですか?鹿の腹を見事に抉っておりますぞ。牛ですらあの通りです。敵兵など鎧を着こんだ武将であろうとこれだけの遠距離でさえ、当たりさえすれば十分に倒せます」


 やはり、ギラついた眼でそう言ってくる。


「ただ、ここのところ生産しております銃につきましては、施条を施さず、大砲で使うブドウ弾の様な弾を使いまして、突撃時に敵を至近距離から倒せる様になっておりますので、この施条銃を使う部隊は歩兵と分けていただきとうございます」


 なんと、忙しいはずなのにスラッグ弾だけではなく、散弾の開発までやっていたのか。確かに、散弾があれば至近距離で複数の敵兵を足止めすることが出来る。標準的なスラッグ弾ですら火縄銃や弓矢より飛ぶんだ、俺は射程を伸ばす事ばかり考えていたが、槍の代わりに突撃するのだから、至近距離での使用を考慮に入れるのは確かに当然だな。


「そうか、ならば、歩兵隊とは別に、俺の警護やウルプの遊撃隊が持つことにしよう」


 まるで今考えたようにそう言った。元々俺の為だけに依頼した事だったのだが、その意図を隠すことが出来たようだ。


「分かりました。都合200丁ほど、最優先でご用意させていただきます」


 ものすごい笑顔でそう返事をする通貫。何か溜まっていたのかな?



 ちなみに、ライフル銃をウルプに渡してみた。


「これは今までよりさらに飛ぶ。通貫によれば900メートルでも敵を倒せるらしいぞ?」


 得意げにそう言ったら、いきなり900メートルで撃ちやがった。


「うむ、この距離なら余裕だな。流石、通貫と翔じゃ。こいつは凄い。あと300ほど的を遠くへ置いてみよ」


 俺は開いた口がふさがらなかった。1200メートルを当てやがった。


「うむ、これは良い。ワシが配下にこれを習わせよう。これがあれば船の上でふんぞり返る敵の大将の眉間も撃ちぬけるぞ」


 ニヤリと笑うウルプの言葉が全く誇張に聞こえなかった。きっと彼女ならそれを実行するだろう。



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