プロローグ
魔力と呼ばれるエネルギー。そしてそれを自在に操る魔法が発明され、戦争、戦闘行為は大きく変わった。
魔力のエネルギーを効率よく、そして遠距離に破壊力として射出する魔導銃。そこから射出される魔弾は、個人程度が持つ鋼鉄の盾を貫通し、魔力による物理シールドを発生させる防御魔法は、当時の主武装であった剣や槍、そして弓などでは貫通できず、各国はこぞって魔法という技術を学ぶに至る。
そこからより魔力をより効率的に生成する魔導ジェネレーター。そしてそれを運搬する魔法で動く馬車。そこに防御魔法による装甲をつけ、魔導ジェネレーターが生成する魔力を撃ちだす大型の魔導銃を取り付けた始めたことにより、魔道兵器という分類が新たに生まれた。
そして魔道兵器の誕生から数十年。伝説となった武具たちが、実は魔力を有していたということが判明される。それも、既存の魔導ジェネレーターを遥かに凌駕する出力で。
しかし、魔剣の持つ魔力は人に制御し得るものではなかった。
数千人、数万人に一人という割合でのみ、魔剣に適合できる人間。メサイアと呼ばれる彼らは魔剣の力をより効率的に運用しようとした。
アーマードナイトの始まりである。
通常の魔法では扱えない魔剣の魔力を、一旦メサイアの体を通し、フレームと呼ばれる巨大な人型を模した素体へと送る。
フレームはその魔力を使い、メサイアの意志を反映してその巨大な体を動かす。
そして、ただそれだけではなく、魔導ジェネレーターを遥かに凌駕する出力は、通常の魔導兵器では成し得ない防御魔法の装甲や、魔道銃の運用を可能としてしまう。
さらに、複雑な操縦を必要としない、意志のみで動かすその機体はありとあらゆる作戦行動を可能とした、まさに万能兵器と呼ぶにふさわしいものであろう。
そしてここに、今にも死にそうな一人の少年がいる。
聖皇国セイントブルー。その皇都の路地裏、スラムと呼ばれる地区に捨てられた彼は飢えていたのだ。
別に彼だけではない。この国には同じような人間は山ほどいる。
それでも、そんな事は彼には関係ない。
彼は求めていた。
「腹いっぱい、飯を食いたい」
かすれた声で出た言葉。それだけが彼の望みだった。
たとえ悪魔に魂を売ることになっても構わない。
パンを、肉を、野菜を、お腹がはちきれるまで食らいたい。
普通であれば、そんなことは叶うことはない。
しかし、残念ながら悪魔はいたようだ。
これは、聖皇国セイントブルーの滅亡。その一年前から始まる物語である。