表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コン!なのでました  作者: リノキ ユキガヒ
Route:6「タンタン狸のZ3」
PR
27/69

 サクラはアクセルとブレーキとシフトを一変に操作した。

 澱みなく機械的にそれらの操作をし終えるとマシンは減速という挙動を始めた。

 今まで強烈な加速Gを受けていて縮んでいたリアサスペイションは、その力を徐々に放ち始め減衰していく。そしてその力は行き場を求めてフレームを通りフロント部分へと移動する。ハンドルのトップブリッチの下にあるステムナットにその応力が架かるとそれはフロントフォークを伝わりフロントタイアへと流れていく。

 とてつもない速度域からの減速。その見えない荷重という力はマシンに絶大な影響を及ぼす。勿論サクラもその影響をもろに受ける。

 フルブレーキングという急減速においてライダーとマシンに掛かる負荷は時として加速時における場合より過酷な場合もある。それは瞬間的にとてつもないエネルギーを一気に解き放つからだ。

 いや、放つ訳ではない。

 どちえらかといえば抑え込むと言った方が正しいかもしれない。

 ブレーキディスクとブレーキパットによってスピードは熱エネルギーへと変換され、大気中へと放出される制動の基本原理。

 熱と引き換えに速度は収まっていくがとてつもない領域でのそれはマシンにとってもライダーにとってもかなりの高負荷だ。

「んくっ」

 サクラは自分の身体にかかるマイナスGに思わず声を出した。

 頭の重みが首へと伝わりそれが骨と軟骨を圧迫するようなズシリとした感触。まるで全ての骨に重しを載せられたかのようにその感触は頭蓋骨を通じて背骨を伝わり腰骨へとたどり着く。

 バイクも似たような事がおこり、後輪から前輪へと移動した荷重は容赦なくフロントのフォークとタイアにのしかかる。

 約250キロ近い重量の大型バイクの重みが減速Gによって倍加される。それを一本のタイアで受け止めるのだ。

 そしてフロントフォークは限界まで沈み込みながらそのエネルギーを吸収すると、それを地面へと受け流す。

 アスファルトとタイヤの間に発する摩擦力の限界までそれは続く。

 サクラは全神経を右手の指先に集中させる。ブレーキディスクをまるで指先で摘まむかのような感触をブレーキレバーから感じ取ろうとする。

 鉄板でできたブレーキディスク、同じく金属の粉を固めたブレーキパット、油圧によって作動する対向4ポットキャリパー、ステンレスメッシュホースのブレーキライン、そしてマスターポンプ。

 これらの装置が機械的につながる事でストッピングパワーは生み出される。

 サクラの指先の力ははパスカルの原理によって増幅され油圧によってブレーキディスクをパットで挟み込む。

 しかし、そのあまりにも強大な力は時としてタイヤのグリップの限界を超えてしまう。

 彼女はその限界をブレーキレバーから感じ取りながらブレーキングをしてゆく。

 高速道路を流す一般車両。その速度はおおよそ時速100キロ前後。それに倍以上の速度で近づいていくが、衝突を避ける為に当然、制動しなければいけない。

 Z3は?

 サクラは横目でおケイの駆るZ3をみた。

 長いノーズを沈み込ませながらブレーキをかけていたがフロントタイアからは小刻みに白煙が上がっていた。

「くっ…。ABSか」

 吐き捨てるようにサクラはつぶやいた。

 ABS―アンチロック・ブレーキ・システム。高度な機械技術の成せる技。

 センサーとコンピューターがタイアのロックを感知してブレーキを瞬間的に解き放ち、常に最高の制動力を発揮する装置。

 ここでもサクラは否応なしに二輪車と四輪車の差を見せ付けられる。

 二台ともブレーキをかけているにも関わらずおケイのZ3のテールは徐々に離れていく。

 サクラの頭の中にある光景が浮かび上がる。それは第二次世界大戦。

 BMWのあとを追い続けた川崎重工。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ