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コン!なのでました  作者: リノキ ユキガヒ
Route:3「忍者 in Ninja」
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13/69

「浮上!メインタンクブロー!!」

 指令室に艦長の号令が響く。

 伊ー四〇〇・潜水艦はその身に溜め込んだ海水を一気に吐き出した。

「バシュー」という圧縮空気の激しい排出音が艦体を揺さぶる。

「深度二十!」

「ヨーソロー!」

 浮力を得た伊号潜水艦は海面を目指して海中を浮かんでいく。そしてその姿を現した。

 勿論まだ、沖合だ。この幻の巨大潜水艦を見るものはだれもいない。

 

「艦長より達する。これより洋上航行に入る。各員配置に付け!」

 

 スピーカーから艦長の声が響くといままで乱痴気騒ぎに興じていた水兵たちは一斉に立ち上がった。

「ネェちゃん達、ワリィな」

 最古参と思われる水兵はそう言うと一目散に走り去った。

 他の水兵達もサクラとヨシの間を器用にすり抜けていく。

 蜘蛛の子を散らすというか、今までの騒ぎがまるで何も無かったかのように二人の周りにはだれもいなくなった。

「あらー。折角盛り上がっていたのに~」

 ヨシが残念そうに頭に手を当てて言うと防水区画の向こう側から誰かがやって来る気配を二人共感じた。

「ははは、なにぶん潜水艦はやる事が色々あってな。こうやって時々浮かんでやらんといかんのだよ」

 山本さんはそう言いながら防水区画の扉を潜り抜ける。

「へぇーそうなんだ」

 ヨシはそう言うとサクラの方を見た。

「ずっとは潜っていられないの」

「なんで?」

「艦内の空気が無くなるし、バッテリーだって充電しなくちゃいけないの」

「なんだか不便なんだか便利だか解らない代物ね」

 ヨシはおどけた仕草でそう言い放つ。

「ははは、それより甲板に出ようか。艦内の濁った空気ばかり吸ってると体に毒だぞ」

 山本さんはそう言うと回れ右をした。

「着いて来なさい。もうすぐ夜が開ける、洋上でみる朝焼けはまた、格別だぞ」

「うん行く行く」

 ヨシはそう言うとパタパタと彼の後に付いて行く。

 山本さんを含めた三人は艦橋に上がる。水平線の彼方に白々と夜が明け始めているのが解る。

 漆黒の海原と空の堺。水平線の弧に沿って朝日が真っ白なラインを描いていくのが見えた。

「わぁ」

 サクラは思わずため息のような声を漏らす。

「綺麗ね」

 ヨシもその横から同じように声を発した。

「何だか自分の存在がちっぽけに感じるわ…」

 サクラはそう言うと目を細めた。ヨシはそんな彼女の顔をそっと覗きこんだ。

 憂いを帯びた瞳が朝日に照らされ朱色に染まっていた。

「そうね…」

 ヨシは短く言うと再び水平線の彼方へと視線を移した。

「ま、二人の間に何があったのか詮索はしないがここは一つこの景色に身をゆだねようじゃないか」

 山本さんはそう言うと二人に笑顔を見せた。

「そうですね、こんな贅沢な時間はないですもの」

「潜水艦の上って贅沢なものなの?」

 ヨシはそうサクラに言うと少しイタズラっぽい笑みを浮かべた。

「ま、戦時下ではなければこんな贅沢な船はないよ」

 そんな二人のやり取りに山本さんはそう答える。

「ですね…」

 サクラもそう呟く。

 朝日はグングン昇り漆黒の海原は群青色から青色へと変わり、辺りはすかっり明るくなった。

「どれ、日が沈むまでもうひと潜りだな」

 山本さんはそう言うと艦橋のハッチに向けて身をかがめた。

 それとほぼ同時に「潜航準備」の号令が艦橋に響く。

 浮上し甲板上で作業していた搭乗員達は駆け足で艦内へとまるで吸い込まれていくように入っていく。

 

 幻の巨大潜水艦「伊―四〇〇」その姿は再び水面へと消えて行った。

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