①
新宿にあるとある商業施設の屋上で彼女は一人でたたずんでいた。
缶ジュースを口にしてはため息を吐く。
「はーあ」
そしてまた缶ジュースを口にする。
「はーあ」
ため息を吐く。
おもむろに彼女は空を見上げた。青く澄み渡る大空が広がっていた。
「雲量ゼロ。絶好のフライト日和」
そう呟くとスマホを取り出した。
「やっぱり飛行機はレシプロに限るわね」
そう言いながら画面をタップする。写し出される画像は戦闘機ばかり。それも古めかしいプロペラ機。飴色の零式艦上戦闘機に始まり
五ニ型の零戦
一式戦闘機の隼
二式戦闘機・鍾馗
三式戦闘機・飛燕
四式戦闘機・疾風
五式戦闘機
一式陸攻
百式司偵
局地戦闘機・雷電
同じく・紫電改
ここで一旦ニヤける。そして
メッサーシュミット・Bf109
フォッケウルフ・Fw
クルトタンク・Ta152
スピットファイア
モスキート
と、続く。更に
グラマン・F6Fヘルキャット
P38ライトニング
P47サンダーボルト
P51ムスタング
B17フォートレス
B29スーパーフォートレス
「あなた、随分古めかしい飛行機が好きなのね」
「え?」
突如としてかけられた声に彼女は声をあげる。
いつの間にか自分の座っているベンチに金髪の女性が横に座っていた。
「あなた、いったい誰?」
その質問に金髪の女性はキョトンとした表情を浮かべるとおもむろに屋上の隅を指す。そこには小さい御社があった
「は?」
その意味不明な返答に眉間にしわを寄せる。
「あー、やっぱわかんないか」
金髪の女性はため息混じりにそう言うとジッと彼女の瞳を見つめた。そしてニンマリと口元を緩めた
「え!」
彼女の悲鳴ような声を聞くと金髪の女性はまぶたをしばたかせた。
「私のこのキツネみたいに縦長い瞳孔。カラコンじゃないわよ」
そう言うと金髪の彼女はベンチから 立ち上がった。
今まで顔の部分からしか見えてなかったが全体像が彼女の視界に収まる。
金髪でアゴまでの長さの髪型。不思議なことにその金髪に紛れてキツネの耳みたいなものがあるのに気が付いた。
そこから下は黒いレザーのライダース。首には昔の飛行機乗りが使ってそうなゴーグル。ガラスの部分を支える、眼鏡でいう所のフレームみたいな所が赤いのが印象的だ。
さらに腰には太めベルトからショートパンツ。そこから伸びる脚には黒のタイツに膝下までのロングブーツ。
「私。こう見えてもここの氏神様なの」
「氏神様ぁ~?」
金髪の女性は腰に手を当ていうが信じられてないようだ。
「そうよ」
そんな彼女の様子よそに、ひょうひょうとした表情で言い返す。
「ま、信じるか信じないかはあなた次第ね」
「何伝説よ…」
そんな金髪の彼女の垢抜けた表情とは別に不貞腐れ気味に彼女は視線を地面のコンクリートへと落とした。
「ねぇ、そんなに嫌なら逃げちゃえば?」
「え?!」
「今の仕事嫌なんでしょ?だったらブッちぎちゃえよ」
金髪の自称氏神様はそういうと彼女に背を向けた。
すると彼女の目の前に信じられないモノが目に飛び込んできた。
そう。キツネの尻尾だ。
それはまるで彼女を挑発するようにというか?なにか違うものへの期待を暗示させるというか?
とにかく得体のしれない魅力を放つようにヒラヒラと舞っていた。




