五話 何故君は?
数日ぶり、長編初心者―書くのが初めてで戸惑いばかり
ですが一人でも読んでいただけてとても嬉しいです
ではどうぞ。
早く、とにかく早く。
私の心はそれだけ考え腕に抱える彼女を落とさないように自分にとっての最速で心界に向かう。
今は朝早く人通りは少ないがしばらくすれば人通りが増える。
私はあまり人目のある時にあの中には入らない。
何度も経験してきたからわかる。
期待された分だけ失敗したときの落胆と批判はそれ以上だと。
だからこそ私は最初の頃のような人目の多い時間をさけ、明け方か夜中に今は彼女の腕の中に納まってるマントを深々と被っていく。
そうすれば少なくともお互いに傷つく事が無いから。
私は傷つけたいわけじゃないから。
物思いにふけっているといつもよりも早く心界に降り立つ事が出来た。
サファリから心界には何処からでも入れる。
ただし原種の竜が入ろうとすればその身は光に包まれ姿を消す。
そのものはどうなったかわからない、ただ跡形もなく消え去る。
生きて居るのか死んでいるのか。
生死がわからないという事実こそ皆に恐怖を与え心界は絶対の防壁となっている。
良かった、誰もいない、流石にこの姿は目立つから――。
私は彼女を下し姿を戻す。
「着いたぞーーって聞いているのか――お、おい」
振り返った彼女は私が下したところに膝をつき手で口を押えていた。
慌てて駆け寄るが。
「————うぷ――」
「わ!」
涙目になりながら嗚咽をかく彼女に反射的に飛びのいてしまった。
彼女からは痛々しいほどの視線が注がれ居心地の悪い空気が広がるが。
しかしすぐにその空気は彼女の必死の言葉によって解かれる。
「も、無理――う」
本格的にまずそうな様子に私はあわてて彼女の手からマントをはぎとり彼女に羽織らせる。
フードがついているからいざとなればそこに――や、それは嫌だ、早く運ぼう!
思ったがはやいか私は彼女の足の間に腕を入れ抱えて走る。
思った以上に彼女は軽く、相当に体が弱いらしい。
「ま、待て!今水場に『―———さん?」!」
気配があった気がしたがそんなことより彼女だ!
頼むからまだ持ちこたえろよ!
近くのそこまで綺麗ではないがスラムの中で唯一の噴水のある水場で水を汲み彼女に差し出すと彼女はそれを受け取り口を濯ぐ。
全く神の血が強いのにこんなにも弱いとは――———妹もよく吐いていたな。
そんな普段の私が思い出さないようにしている家族の事を思い出しながら、妹にしていたようにその背を支えながら摩る。
何で思い出す、まったく嫌になるもう諦めなきゃいけないのに。
自分でもわかるくらいに顔が引きつるが久々の看病なんだ許してほしい。
「お、おい平気なのか?」
顔色が少し良くなって涙目ではなくなったのを見計らって摩るのを継続させながら問いかけてみる。
「う、―—ず、随分ましになったわ」
顔を上げて立とうとするがすぐにまた膝を折ってしまう。
もう少しは無理か、急ぎすぎたか?
実際に早く飛んだが、そういえばだれかを抱えてドラゴンの姿で飛ぶのは初めてかもしれない。
実際周りは翼をもってるし、心界を出る神よりの者もまれだから。
今思い返すと荷物と同じ要領で運んでいた。
――どう見ても私のせいだな――。
「す、すまない、誰かを持って飛んだ事が久しぶりで」
実際は皆無なのだが、それは伏せておこう。
まだあって間もないが荷物として運んだなんて言ったら彼女はいい気にはならないだろう。
だから私は素直に謝る。
「でしょうね、う、車酔い――ドラゴン酔い?」
彼女も運ばれ方に疑問はあったらいいがそれには深く追求せずに訳の分からない事を言っていた。
くるま。
何か乗り物だろうか?
とゆうことはやっぱり君はリューリヤの者ではないのかな。
ここで乗り物はないに等しいのだから。
――や、もう彼女に疑問を持つのはやめよう、もうすぐそばに田舎に続く門があるのだから。
体調が戻り次第放り込めばいいんだ。
彼女が落ち着くまでの間最低限のこの場所の知識を彼女につたえる。
何も知らないらしい彼女をそのままほっとくのは危険な気がしたから。
どうせどこかの外国からきてこの国の知識を知らないだけだろう。
「それでここがスラム?」
「あ、あぁ、それであれが――『その女性から離れなさい!」——な!お前?」
彼女に後あそこの門を潜ればいい、そう伝えようとすれば私にとっては聞き覚えのある声が上がる。
その姿を確認しようと立ち上がり声のした方を向いたのはいいが――妹の白いローブが私達の間に入ったと思ったと同時に私の腹に勢いのいい蹴りが入り私は不覚にも吹き飛ばされてしまった。
普段の私なら――本当に彼女に会ってからこの数時間――自分は変だ。
お蔭でこんなびしょ濡れになるし厄日だ。
「―—ふざけんな!何すんだよ!」
流石の私も彼女を問い詰めるように妹に叫ぶ。
何故蹴られる!
そういってにらみつける私の視界にはなぜか私を見て肩を落とした彼女が映る?
今のどこに肩を落とす事gあったのだろう?
「それはこちらのセリフです。こんな朝っぱらからこんな処で女性に手を上げるとはそこまで獣に落ちましたか――姉さん」
――あぁ、第三者から見ればそう映るのか?
だが蹴り飛ばすことはないだろう、それに私はまだ獣ではないし、ならないし。
「―—は?姉?」
すっとんきょんな彼女の声はその場にはずいぶん場違いだ。
ま、無視だな。
そんな事より、そろそろ限界だ――ちょうどいいところに来たと思っておこう。
「シャロ、変な誤解をしてるようだが、そいつがサファリに紛れこんでいたから連れてきただけだ」
「信じられません、貴方の言葉など――もう絶対」
久しぶりの何年振りの妹との会話、こんな状況だから話せている。
だけど、それはそれだ、シャロは私の言葉に耳を貸さない。
そんな私達のにらみ合いを止めたのは以外にも彼女だった。
「あ、あの、それはホントです。世界樹にいた私をここまで連れてきてくれて」
「え?」
彼女の発言に耳を疑ったかのように私とのにらみ合いを中断し彼女を振り返る。
「だから言っただろ―—そいつを頼むよ、私はこの先には行けないし、そろそろ人目に付く」
彼女はそういうと私達に背を向ける。
正直辛いんだ、それにシャロに任せておく方が私と一緒にいるより絶対に安全なのだから。
「え、ちょ!待ってよ」
背中越しに彼女——まいなが呼び止めるが私は止まらない。
もうこれで彼女との縁は終わりだ。
これでいい———だから。
「来るな、がいるべきはそっちだ、私の事は忘れるんだな、そこの巡廻者についていけばいい」
言いたい事を伝え私は彼女達の前から走り去る。
「ま、待って『だめです』」
大丈夫、シャロがいるから。
―——もう少し様子を見て――。
なぜか私の足は止まり引き返し彼女達の様子を見守る。
そしてしばらく何か話していたらしいがシャロが彼女の腕をつかんで走り出す。
―——うん、体調大丈夫か?
さっきまでの私と同じような扱いになぜか彼女を心配になるが彼女は私の越えられない門をあっさりと潜っていった。
やっぱり住む世界が違う――帰ろう。
今一度私は彼女達に背を向ける、だけどそこには私達の騒動に気付いた者たちが集まっていた。
「だから、おせっかいなんか焼くんじゃなかった」
「―—また来たのか?この出来損ない!」
そうだ、お前たちより私は出来そこないだ。
だがなぜ来てはいけない?
「名無しが早くサファリに戻れよ!」
名無しか、そうだ、私は私を持たない。
やっぱり彼女とは違う。
「まだ、獣になってなかったのか」
獣にはならない、そんなの私が私を殺す事はッ絶対。
だけどなぜだろうこんなにも、慣れたはずの批判が今はとても悲しくつらい。
いつの間にか私はうずくまり耳をふさぐ、そうすれば何時か離れてくれる。
お願いだから、私にかかわるな!
じゃないと――私は。
耳も目もふさいだ私は気づけなかった。
野次馬の間をこじ開けてくる彼女に、私に振り下ろされた爪に。
私がふさいでいる耳にも響いた彼女の「やめて!」という必死な声と同時に私を抱きしめる彼女の――悲痛に歪んだ声。
「っつ!」
私が目を開けてみたのは私を抱きしめる彼女の背中ににじみ出る血と――彼女、嫌、私を狙った爪の持ち主の驚愕に満ちた顔だった。
「な、何で」
何でシャロと居るはずだろ?
何で君が私を庇う?
あって間もない君が何で涙を流す、その綺麗な透き通った瞳で私を見る。
そう問いかけるのに彼女は何を思ったのか私をもう一度強く抱きしめてから野次馬、爪の持ち主に視線を向ける。
「やめてよ、同じ人でしょう、何でこんな事するのよ!」
やめて、それは仕方ないの、私が出来そこないだから悪いの!
だから君がそんな事する必要、いう事なんてないんだ。
だから早くその傷、あんなに体が弱いのにそんなに血が出たら!
「なんだ!お前はそいつは獣だ!スラムに来る事すら許されないんだよ」
「そうだ、そうだ」
「名無しは帰れ!」
先ほどと同じように彼らは私を卑下する。
それが当たり前だから。
だからもういい、そう言おうと彼女の背に手を伸ばすが、次の彼女の言葉によってそれは止まってしまう。
何故ならそれはこの国では誰もしない事だから。
獣に名前なんていらないから。
出来ないはずなんだ――なのに。
「何よ!それ!名無しって!名前がそんなに重要なの!だったら名前があれば文句ないの!」
何を言ってるの?
名前はサファリにいる私には必要ないの。
「は!何言ってんだよ!名前はな神に愛されてる―—『雪灰彼女の名前は雪灰』」
なのに――批判する彼らの言葉を遮り彼女は堂々と私に名前を付けた。
本来家族の親に10歳の誕生日につけられる真名。
私はその年にサファリに落とされて。
「私の恩人の雪灰をもう傷つけないで!———あれ?」
彼女は私を庇うが彼女の体が急に倒れ込んできた。
「お!おい!まいな!」
反射的に彼女の舞奈の名前を叫ぶ。
その閉じられかける瞳、彼女を抱きとめた私の血は真っ赤に染まった。
「舞奈!」
私は今度ははっきりと彼女を抱きしめ彼女の名を呼ぶが彼女は反応しない。
やーー嫌だ。
「おい!舞奈!起き——『姉さん!』シャロ!舞奈が!舞奈が!」
「落ち着いて――いったい何が!」
周りを見渡す妹が相手の目線を止める、睨むように。
「な!何なんだよそいつが勝手に――ひ!」
「黙れ、私の事はいいが、舞奈を悪く言うな――殺すぞ」
いつの間にか私は舞奈を支えているとは違う片方の腕の爪を相手に向けた。
そういう私の腕は真っ黒な腕に染まっていた。
久しぶりだ、自身の意志でこの力に頼るのは――それほどに舞奈の血が私の怒りを呼び起こした。
「姉さん、落ち着いて、大丈夫出血の割に傷は浅いわ」
「だけど!」
こんなに血が出て!
顔色もどんどん、抱きしめる彼女からないような重さもどんどん軽く――。
「大丈夫、少しすれば彼女の中のCHIMERAの細胞が活性化して——え?」
いくら待っても傷がふさがらない!なぜ?
ここはスラムでも心界の中、CHIMERAの細胞があるなら傷ぐらいすぐに塞がるはずなのに?
「おい、舞奈!—『主の生命活動が乏しく低下、これより補充を開始します』な!この声まさか!」
私の問いかけを阻むようにそんな機械的な声が聞こえる。
「か、神様――心界が起動した?」
その声に続くように舞奈の体を光が包み傷をふさいでいく。
「———」
『修復完了――しかし心は非対称領域のため補充せず』
光が彼女から離れると彼女は穏やかな顔で眠っていた。
「うそ、まさか、そんな——」
彼女の周りの者たちはすべて言葉を失い固まっているなか私は舞奈を抱き上げ立ち上がる。
「連れて帰る」
舞奈が戻ってきたのなら私は彼女を連れて帰る。
この場にいればまた血を流してしまうから、ならここから離れる。
「な!待って!」
シャロが私の肩に手を置くが私はいに帰さずにドラゴンの姿となる。
「舞奈は何も知らない、そんな舞奈をここに置いていけない」
連れてこない方がよかったのかもしれない、最低でもこの場になれるまで。
「姉さん!」
「ギャー!」
姉さんたちが去ったあと傷つけた彼の体に彼女の傷が移された。
それは幾年も都市のラーシアのイブやアダムにしか起動しなかった。
神を守る機能のいったん。
まさか?この子がさっきの報告にあった。
早く知らせないと。
結局戻ってくるのは長のいる山の中の住処だ。
勿論長もいるがあのままシャロに任せる気にはなれなかった。
離れたくないと思った。
「遅かったな、お、おい!その姿どうした、それにそのおなごは?」
住処に入ったと同時に長が驚いた様子で問いかけてくる。
確かに今朝出て行った私が急に女を連れ込めばそうなるか。
「世界樹で拾った、心界に神に愛されてる、心界が反応して傷が治った」
「———そうか、久しいなこの鼓動」
「え?」
思いもよらない長の反応に私は首をかしげてしまう。
「この弱弱しいが強い鼓動――その子は人じゃよ」
「舞奈が?」
人——神なのか?
だから変な事をたくさん言って――ならどうしてあんなところに?
「何かその子から貰ったのか、お前がその姿で意識を保ってるとは―」
「え?」
「久しく見るなその守り手の姿を」
私はいつもの白い母親譲りの姿ではなく真っ黒な髪に瞳のドラゴンに変わっていた。
この姿は父親譲りの制御できない力で私の中の神の血を蝕む姿。
なのに今は何ともないし、この姿になってる事すら気付かなかった。
「だが、そのものを都会の者たちは放ってはおかないだろう」
仮にも絶滅した神の生き残りと知れば利用しようとするだろう。
「また舞奈が、傷つくのか!」
あれは私のせいだが、また舞奈がそんなの嫌だ。
「ずいぶん気に入ってるのだな」
「な!」
長に言われ私は頬が熱くなるのを感じる。
自分でもこの感情がわからない、だけど――ほっとけないんだ。
「お前が守ってやればいい」
「で、でも、私は力が、それに入れない」
「だが、それだけのものをお前はもうその舞奈というものから貰ったのだろう」
「―—ユキハ」
「?」
「雪灰――それが舞奈から貰った私の名前」
さっきつけられ呼ばれた名前なのにすんなりと私の中に溶け込む不思議な感覚。
それから数日彼女は目を覚まさずに眠っている。
―——起きて、また名前を呼んで、そうすればどうして君を離したくないかわかる気がする。
早く、起きて。
「―—舞奈」
また書けたら更新します。
読んで下さりありがとうございます。