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五十七話 受け入れて自覚したモノ

『違うわ、貴女は舞奈、姉であるのは変わらない』

すくなくとも私ではなく貴女はそう信じて姉として生きてきたじゃない。

「でも、私は———あれ?でも何で私は?」

私が目の前の舞奈の願いを叶えてまた生まれなおされた私なら——何で?

この姿なの?

願いを叶えれば赤ん坊に戻るんじゃ?

『私が願ったのは姉として——だから成長したままの姿なの』

「そ、そうなんだ、なら私は」

『姉よ、それに作られた人格でもない、今の貴女は貴女だけの舞奈』

私ではないけどあの子の姉であるのは紛れもない事実よ。

といっても知識はあっても最初から成長する別人ともいえる。

『だから貴女も私も別人ではあるわ』

「そっか、私はやっぱり壊れて、家族になんか——」

だって、私は血のつながった家族だけど、この記憶は過去は私ではなく目の前の少女のもの。

私は壊れた彼女の代わりに生み出された次の存在。

「違う、壊れていたのは私『翔が笑って居られるように、ずっと一緒に』それが私の願い」

「自分としてとは言わなかったの?」

そうすれば少なくとも貴女として過ごせたはずよ?

私ではなく、貴女自身として。

『私はねカリナと時々入れ替わっていたの』

「え?」

入れ替わっていた?

カリナと?

私にはそんな記憶はない。

寧ろ私はこの世界に来てからカリナの存在を知ったのだから。

わたしは私として翔と一緒に過ごしてきた。

『それは当たり前よ、カリナは私ととも眠ったわ、そうしなければ』

「私?私に影響を与えるから?」

『えぇ、あの世界で私達に関わると言うことは壊れていく事と同じだから』

私達はそれをよしとはしなかった。

だから眠ったのよ。

二重人格かと言われたりもしてたわね。

でもカリナと変わるのはとても楽しかったわ。

「そっか、再会したとき、翔が可笑しいって言ってたのはーー」

私は姉としての過去の記憶もあった、だからあの時から始まった命でも。

私は姉として過ごしてきた。

『えぇ。翔も真名は忘れているけど、翔が姉以上に思って居たのは——あの子よ』

姉としては複雑な気持ちだったわ。

姿、形は同じなのにあの子は敏感に感じて居たわ。

私達の違いに。

唯一すぐに気付いたのがあの子だったからと。

寂しそうに、だけど嬉しそうにする小さな私。

と言っても今は貴女がカリナと同じ存在だと思ってるみたいだけど。

貴女はカリナの存在なんて気付く筈なかったんだもの。

「でも、カリナを?翔が?」

『ふふ、最初の願いをした私にそっくりだったからかしらね——』

カリナの気持ちも少なからず翔に向いていたわ。

だからこそ私の願いは翔の笑顔と苦しみをとって一緒に居る事。

私が居なければカリナは存在出来ないのだから。

恐らく姉を失うよりもカリナを失うのが怖かったのだろう。

姉が長くないことは翔は小さな頃から薄々感じていたから。

だから、私はこの姿のまま、カリナをどんな形でも翔の傍に残す事を望んだ。

「ーーだったら」

「カリナを舞奈としての主人核にするのは不可能よ」

「え??でもカリナは私の核の一部なんでしょう?」

同じ者ならなれるはずでは?

『カリナがそれを望むとでも?』

「望まないわね、寧ろ止めるわ」

そして、カリナは次の存在になるのは絶対に了承しない。

だったら、やっぱり。

「―——そっか、じゃ、―——『駄目だよ』え?」

貴女が傍に居ないと、そう言おうとしたのに言葉を切られてしまった。

『私はもう、願いを叶えて貰った、だって翔は苦しまずに姉と過ごせたんだもの』

それに、私の願いに自分を生かしてという願いは含まれなかった。

シロンのように、自分自身で考えて覚悟を決めた消失だもの。

貴女が気にする事でもない、勿論、翔でも私達の決断を否定するのは許さないわ。


私の意思で翔の傍に居ることを拒否した。

と言うよりも出来なかったのよ、私は必要以上にカリナや神様を受け入れて。

力を使って、普通よりも早く限界を迎えてしまったから。

此れは自業自得、他人になんと言われようと。

これは私が選んだ道なのだから。

「でも、私は——」

そんな翔を置いて、逃げて。

願いを叶えていない。

貴女が人生を手放してまで願った願いを私は蔑ろにして。

何も知らずに生きてきた。

だけど、私は知ってしまった。

それなのにーーー私はーーー。

やっぱり偽善者だ。

ーーーー御免なさい。

『君の傍に居る』

私は私を捨てられないのーーー私が私として繋いだ絆が確かに存在している。

この絆は誰にも奪わせない、まして自分から離す何て出来ない。

それが貴女の願いや思いを踏みにじる行為でも。

アナタのその願いから生まれたのが私と言う存在だとしても、私には私の思いが願いがあるから。


『いいのよ、舞奈、貴女は叶えてくれた』

「でも!」

『これからは翔が翔の人生を選ぶの』

そう、翔の人生、自分で決めて行ってほしい。

私には執着せずに、自分の意思で。

「——そう、よね」

私もそう望んだじゃない?

何を——。

『なに悩んでいるの?やる事は決まっているのでしょう?」

「え?」

『次は貴女の願いを叶えに行くのでしょう?』

「私の願い?って?『お前のココロからの願いを教えてくれって』願いの事?」

叶えて貰っていない願いは最初の私のその願いだけ。

でも私も叶えて貰っていないって言ってたし?

私は何を願ったの?

この世界に来ること?

でもあれは偶然?

だったら私は何を?

『―———本当に、今の私は傲慢ね』

「は?」

何を望んだか考えただけなのに?

傲慢って何よ?

一つ文句でもと思ったのに。

引きずられるように意識が沈んでいく、此れは戻ろうとするときの感覚そのもの。

此処に来てから何度か経験してきた。

『さ、戻って、そして願いを叶えて、最初の私と今の貴女の願いを叶えに』

「ま!待って!だったら少しくらい!」

翔達と話くらい。

『とても嬉しい提案だけど、言ったでしょう?私はもう貴女の一部なのだからいつも話しているわ、如何かお願い、私を一部として』

受け入れ続けてと寂しそうに、だけど不安そうに頼んでくる。

そんなの貴女は私を傲慢と言ったでしょう?

それに私お節介らしいのよね?

「ううん、一部じゃない、貴女も含めて私は舞奈よ」

貴女が居なければ、私は今の私じゃない。

それに作られた存在を否定してしまったら全てを雪灰達の事も否定することになる。

寧ろ生きている作られた者を否定するなんて誰にも出来る筈がないのよ。


『ほんと、傲慢よ』

そう涙を流し笑みを浮かべている彼女の表情を最後に私の意識が薄れていった。

薄れていく意識の中で光が影が見えた気がした。



意識の無くなった舞奈の精神体がこの核の世界から光達によって運ばれていく中。

私の背中に隠れて私を抱きしめていた彼女が舞奈に触れる。

『ーーーー叶えるよ』

その鈴のような声が彼女に届くことはないだろうけど。

届いて欲しいとも思う。

『さ、私達も眠ろう、大丈夫、一人にさせないから』

アナタは一人には絶対にさせない。

それが唯一私が今の舞奈に出来ることだから。

『―———待ってるよ』

彼女の瞳には確かに涙が流れている。

だけど、私には拭えない、止められない。

『えぇ、どうか待っていてあげて、あの子の舞奈の願いが叶うまで』

副産物だけど、最初の私が願った願いも叶えられる最後の可能性だもの。

だから、眠りましょう、優しい彼女の中で一緒に。

『―—舞奈』

再び眠りにつくまでの刹那の時間に彼女はあの子の名を呼び続けた。



淡い鼓動を刻む舞奈の核。

彼女の核の中心、この核は今の彼女には返せない。

御免なさい。

「だったら『―—————』それが私の願い、かなえてくれる?『 』」

舞奈にも見せなかった記憶、あの舞奈が願った願い。

今迄繰り返してきた私達は最初の私が願ったものの延長の願い。

だけどあのこ、舞奈だけがあの願いを口にした。

如何か、叶いますように。

愛しい私の私達の最後の舞奈。

あの子は神様の——この子の願いを叶える可能性のある唯一の舞奈なのだから。

如何か叶えて、叶えてあげて。


「全く、言いたい事だけ言って、ここからどうやって帰るのよ?」

『―——舞奈!』

そんな私に伝わってきたのは——あの子の雪灰の声だった。

そして翔達の声も伝わってくる。

「―——そっか、もう、私は私として選んだんだもんね」

過去なんて関係ない、私は私として過去を現実を受けいれて、進むよ。

だから、ごめんなさい。

過去の私。

私は翔を笑顔を願えるけど、私はその役目だけにはもう居られない。

私は——私の願いを叶える。

ううん、自分で関わると決めた事の責任を果たすよ。

その代わりーーー。

私はもう迷わない——壊すよ。

それが———私だから。

それが私が出来る、最後の姉としての役目だと思うから。

―——また傷つけてしまうかもしれない。

泣かせてしまうかもしれない。

怒ると思う。

だけど———。

これが今の私にできる最善だと思うから。


―——さあ、目覚めようか。

目覚めない方がいい夢から。

行こう。

だって、目覚めないと何も始められないから。

御読みくださりありがとうございます。

ではまた。


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