五十二話 再会と食事
「あ、こ、此れはーーその」
私の指摘に自分の置かれた状況を思い出し何故か何かを言おうとしては迷う。
っつうーーー。
耳まで真っ赤にして照れている翔に。
「あはは、まったく、なんて恰好してるのよ?」
自分からは絶対にしなかったのに?
何だか様になってるような?
「姉さんこそ何だよ!その恰好は!そいつは!」
威嚇するように翔は私の背にいる雪灰を睨みつける。
翔が女装なら今の雪灰は青年のような黒い着物を着ている。
―——うん、誤解してるわよね?
―—ま、いいかしら。
「私は巫女の恰好?雪灰は——え?」
「私は雪灰、舞奈の守護者だ、妹君?」
何故かわざと翔を挑発する雪灰。
だけどその理由は分かった、何故なら私を支えるようにした雪灰の腕。
その支えでも自然と私が震えている事に気付かされる。
雪灰は私から翔の視線を外させようとしたのだろう。
無意識でもその気持ちが行動が私を自然と落ち着かせる。
少なくとも震えが収まる程には。
それにしても雪灰、その説明って大雑把過ぎないかしら?
「は?守護者?」
思った通りなんだそれと態度に出す翔。
うん、私でもそうなると思うわ。
「僕達のようなものだと思うよ?翔」
翔にそういう少年は真っ赤な髪。
こっちの世界では黒髪以外が多いけど、真っ赤は派手ね?
といっても黒髪と白髪以外私にとって珍しいのは変わらないけど。
それにしても同じって?
もしかして翔も巫女?
でも翔は男だけど、それに私が居るから違う筈。
二代目って名乗ってるし。
「違いますよ、イクトお前は側近私は世話役です」
こっちは背の高い青年、エルフ?
―——側近?世話役?
―———。
―———。
どんな風に過ごしてるの?
貴族や王族のような感じなのかしら?
似たようなものね、私は神様扱いされてたし。
神子を目覚めさせようっていうんだからただの人だとは到底言えないかもしれないけど。
私は、私自身は人だと言い張るわ。
ただ変な役目が出来ただけだもの。
「似たようなものじゃないのか?」
赤髪の少年の言葉に少しは理解しかけた翔が問い返す。
「違うわ、全く違うわ」
それを否定したのは白銀のシルビアと言う女性。
その声は少し震えていた。
戸惑っているように感じられる。
この人が私の目的の人の筈だけど。
少しその目が泳いでいるのは気のせい?
何かを言おうか迷っているような。
「シルビア?」
翔の心配そうな声色の問いかけにしぶしぶと言った感じに話し始める。
「守護者は——守護者は神子のお伴で、巫女の側役」
そう伝えられていると。
今迄巫女になったものはおらず、候補になったのは過去に一人。
その一人も失敗に終わったと。
―—私は二人目なのね。
思ったよりも少ないのね?
何百年、いやそれ以上の時のなかでそんなに候補がいないなんて。
「―——私ってそんなに特別だったのね?」
小声で言う私の言葉は雪灰にしか届かない
「今更だな」
少し呆れたように、だけど私にしか聞こえないように雪灰も小声で話す。
「何よ?私は私よ」
「そうだな舞奈は舞奈だ」
その肯定の言葉に嬉しくなった。
「神子?巫女」
また知らない単語に翔は分からないという。
「そして神に本来の唯一神に謁見できる唯一の可能性。」
だけど?
「リュアン正気?私の生みの親ですら叶わなかった願いよ?」
私の生みの親が出来たのは停滞。
世界を変える事もまして唯一神の存在すらも確認できずに。
会うなんて叶わぬ願い。
「ああ、俺はコイツに賭けた」
真直ぐに私の瞳を見て断言する彼の言葉に嘘はない。
迷いも―——。
何が彼をここまで変えたの?
「?」
彼女?
灰色の守護者に守られる姿はどう見てもただの人の子。
彼を変えたのは何?
「———いいわ、数日ここで過ごす事を許します。リュアン、少しいいですか?」
彼女に話を聞くのは後、翔も聞きたい事があるでしょう。
私達がいない方がいいでしょう。
そう思い私はリュアンを呼ぶ。
「え?」
背中に彼女の声が聞こえたが今はこっちを優先させていただく。
少し落ち着くためにも、少し彼女達から離れよう。
「すぐに戻るんじゃなかったの?」
慌てて彼女を追おうとするリュアンに問いかける。
「すまん、俺もシルビアに話がある」
久しぶりの再会なんだろう食事でもしながら待っていてくれと二人とも席を外してしまった?
そして成り行きで私達は食事をする事になった。
「————ううん!!」
唐突な再会で混乱している。
聞きたい事もたくさんあるんだ。
だが、今は目の前で日本食を食べて涙を流す姉の前に何も言えない。
「——何で魚を切る?丸ごとでいいじゃないか?」
姉さんの隣にしっかりと居るコイツの発言。
どんな思考してるんだ?
動物みたいな感覚だな?
あ、そうか、ドラゴンだったなコイツ?
「雪灰、もう——付いてるわよ」
そういって姉さんはアイツの頬から米粒をそっととって自分の口に―——。
「あ、ついてたか?」
平然とそういうコイツも姉さんも自然体だ。
何だ?この和やかな二人の空気は?
そんなに近しいのか?
だが!
「なな!何してんだよ」
姉さんに米粒とってもらうなんてイベント俺だって小さい頃以来無いんだぞ!
「そうだぞ?いつも血を拭わないのに何故米粒はとるんだ?」
しかし僕の想像とは違った回答がコイツから出る。
「———は?」
血を拭う?
何言ってるんだ、や、まてドラゴンなら生なのか?
って事は姉さんもそれを目の前で体験してるって事か?
―——ああ、ならこの食事に感動してるのも頷ける。
そうさ、人の姿でもコイツはドラゴン、何でこんなにとり乱してるんだ?
動物やペットに接する感覚だろう、そうさ!
慌てる必要なんてなかったじゃないか‼
そう思い自分を必死に落ち着かせる。
僕の方が年上だろうし、ここは大人の対応を。
「もう、それが私達の食事の常識なのよ」
血なんていつも水浴びですぐに落としてるでしょう?
それと同じだという姉さん。
―——同じか?それ?
食事中に弁当を付けたらとる。
生肉とか食べた時の血しぶきを水浴びで落とすとは人の僕らと感覚が違う。
「そういうものか?———うむ」
何か姉さんをじっと見る。
それに釣られて僕も姉さんを見る、少し口の周り弁当を付けてる。
ま、それもほっぺと違って姉さん自身がなめとれる場所。
―—っておい!
「——ならこれも取るんだな?」
「え?」
な、何?
ぺろ。
「っつ!な!ななな!」
「舞奈もついてたぞ」
「だからってなになめてるのよバカ!」
「いっつ!とってやったじゃないか!」
一瞬のなめとるという行為―——。
一瞬だが——それは——その行為はキスに近い行為。
―——僕が狙ってたし守ってたのに!
変な虫つかないようにしていたんだぞ―—それをこうもあっさり?
―———
―————
―——————はは?
―———ブチ!!
「てめえなにひとの大事な姉さんにキスしてんだこら!」
口調?そんなの関係あるか!
今は目の前の虫を姉さんから離すことの方が優先だ!
そして拭ってやる!今すぐ!
「は?キス?そんなの何回もしてるぞ?」
何をそんなことをと言う顔でそのまま何事もなかったように食事を続ける。
「—————は?」
コイツの言った言葉が理解できずに固まる。
「ちょ!雪灰!それは―——っつ!知らない!」
何故かあんなに喜んで食べていた食事をほって姉さんが立ち上がる。
「あ、待てよ!」
肉を掴んだままついていこうと立ち上がろうとする。
「知らない、しばらく一人にして!」
そういって姉さんは慌てたように出て行った。
「お、おい」
肉を持って立ちすくむ。
僕も立ちすくむ―—いや、灰になった。
あんなに真っ赤に照れた姉さんは初めてで、いくら鈍感でも―—理解したくなくても——。
―————はは、くそ。
―———はは―——夢か?夢だよな?
「エリアス―—翔が灰になってるけど大丈夫か?」
食事を端で見守っていた僕らもその光景にどうしたらいいか困っていた。
「あ、ああ、現実逃避なさってるな?」
取り残され見守っていた僕らの目の前には灰になった翔。
そして訳が分からないと自分の肉にかぶり付く雪灰と言う小柄な守護者。
―———。
「如何する?」
「分からん、とりあえず見守ろう」
「そ、そうだな、少しすればシルビア様も戻るもんな」
にしても遅いな?
早く戻ってきてくださいシルビア様。
亀のような速度ですがお読みくださりありがとうございます。
ではまた。




