四十八話 副産物
ーーーー如何して?
私は土下座をされているんだろうか?
「か、母さん、っつ!い、いたいよ」
母親が少々強引にガルと言う弟に頭を下げさせている。
「我が子が失礼を働きました、どうぞ御容赦下さいませ」
必死に拝み倒されるけどーーー正直ーー。
ーーーオーバーな気がするけど?
それに正直謝られる理由が分からない。
「ーー何で謝るんですか?入れって言ったのは私ですよ?」
あれだけ部屋の前に立たれたりしたら気になるし?
あ、それ自体は流石に嫌だったけど。
謝るのは母親ではないだろう。
確かに彼の言うように私は色んな事変えた。
自分勝手に自分の願いを叶える為に変えたのは事実なのだから。
変化は誰しも受け入れてくれる訳じゃ無い。
正直この世界に来て否定されることの方が貴重な気がする。
それだけ私を肯定する人達ばかりだから。
翔とは違った感覚の従うと言う意思。
だからこれは私にとって久しぶりの感覚。
そう言う点では私は目の前の少年に好感に似た感情を持っていた。
「そ、そうだ!コイツは俺たちを殺そうとしたじゃ無いか!」
そう言う彼は恐怖をその瞳に滲ませていた。
苦しかったんだぞと、喉元を押さえ私を睨み付ける。
「ーーーは?」
殺され掛けたのは私の方では無かっただろうか?
それにさっきは生かしておいてって言っていたよね?
言っていることが正反対過ぎて訳が解らない。
寧ろ助けた事になってるみたいだけど?
殺そうとしたって?
身に覚えが無さすぎる。
訳が解らないと首を傾げる。
「コイツが現れてからだ。姉さんが僕たちを殺そうとしたのも!みんなコイツの!」
そんな時彼を真っ黒い光が覆い隠した。
「っちょ!ゆ、雪灰!」
どう見てもこの光は雪灰のもの。
真っ黒い光が包み込んで少年は見えなくなり声も聞こえ無い。
ーーえ?だ、大丈夫なの?
「ーーー舞奈を悪く言うな、巻き込まれたのは舞奈の方なのに」
そう言う雪灰はとても辛そうに怒りを押さえていた。
光を纏わせた左腕が光の黒い鱗に包まれ。
その手は震えていた。
「雪灰、ほんとに私は大丈夫だからーーーって、この光は大丈夫なの!」
確かこの光って消す力があるんじゃなかった?
「ああ、話が進まなそうだから、大丈夫、この光は覆ってるだけ、消しはしないさ」
それにーーー。
安心させるように光達が散っていく。
「あれ?居ない?」
「リュアンが影で直前に連れて行った」
そう黒い光をみて不安だったけど解かれた場所に彼はいなかった。
影ーー本当に便利ね?
「そ、そうなの?」
消えていなくて、無事なら別にいいのだろうか。
正直手に終えなかったし。
それにあのままじゃいつまで経っても全然状況が分からないもの。
ーーー後でまた話そうとは思うけど、誤解も解きたいし。
言いがかりをつけられたままなのは気分が悪いモノ。
「では、改めまして私はリューリヤの守り手の妻ハクと申します、巫女様」
大人しめの淡い着物を着た白い髪の雪灰の母親がそっと目の前で手をつき挨拶してくれた。
目の前で落ち着いて初めて見るけど?
雪灰の少し灰色がかった白髪とは違い純白の髪に白い瞳。
神秘的で、少し恐れ多い感じがする。
「あ、舞奈です」
私も寝床で上半身を起こした状態のまま素っ気ない自己紹介をした。
ーーーあ、あぁ~~~!
なによこの自己紹介!
まだ幼稚園児の方が上手くーーなんて自問自答を頭の中でしているとは誰も思っていないだろう!
ーーーしてます。
「どうか、そのままで」
少しでも姿勢を正そうとする私をハクさんはそのままでと。
正直辛いけど、これは人と話す姿勢じゃないわ。
それにこの国のお偉いさんで雪灰の母親なのだから。
「少しだけだから、母さんも早めにしてくれよ」
「え?」
私の辛い感覚が背を支えられ緩和された。
いつの間にか雪灰の尻尾が私を支えてくれていた。
凄く楽になって安心してもたれかかれる。
うん、だてに尻尾で寝てた訳じゃ無いわね。
「ええ、ありがとう雪灰」「ありがとう雪灰」
私とハクさんがお礼を言うと雪灰はそっぽを向いた。
耳が少し赤いのは私の見間違いでは無いだろう。
「ーーー」
何故か私達は黙っていた。
「っつ、すみませんでした」
私が今できる動きで必死に私は頭を下げ謝罪した。
この国のルールを無視して貴女達をかき回してしまって。
「いえ、巫女、舞奈様がいらっしゃってこの国は安定を得ました」
本当に安心した顔をしていた。
さり気なく名前を呼んでくれて、正直巫女様だのイブ様なんて実感わかないのよ。
正直返事出来ない自信があるわ。
でも安定したってことは?
「もう、雪灰や私を殺さないんですね?」
確か雪灰か私を核にとか言っていたはず?
「勿論です、そのようなことをすればこの国が滅びるでしょう」
少し震えるその手が冗談では無いことを物語る。
ーーー何があったの?
カリナは眠って聞けないしーー。
ーーーーー。
ーーー。
後回しね?幾ら考えても解らないもの。
「此度は巫女を拝命為て頂いただけでは無く、この国を、我が家族の命をお守り下さり誠に感謝の至りです」
ひれ伏した状態でそう敬われ、感謝される。
土下座のつぎは礼節ある挨拶。
ーーーー。
ーーーーー。
ーーーーー驚かなく為ってきたわ。
「巫女になったのも雪灰を助けようとしたのも私の我が儘でーーそんな感謝されるような」
私は只雪灰を助けたかっただけ。
巫女になったのも勢いというか流れというか?
正直今思うと考えなしだった気もする。
だけど後悔はしていないわ、だってそれは必要な事で。
神やイブ扱いが巫女が加わるだけだもの。
私はこの世界では異物、肩書きぐらい増えたところでなんともないーーー。
ーーーーよね?
「いえ、舞奈様のお陰で雪灰だけでは無くシロンやガル、果てにはこのリューリヤをお救い下さいました」
その言葉に私は訳が解ららないと首を傾げる。
シロンは解る、シロンは雪灰と同じ存在だし?
どちらか一方が消えるなんて理不尽許せなかっただけだし。
と言っても実際に助けた方法も無事な姿も見ていないのだけど?
だけどガルやこの国?
私は雪灰を助ける事しか考えて居なかったし?
リューリヤやガルの事には何も関与為ていないはず?
「第1に我が身勝手な願いで消える筈だった雪灰とシロンをお救い下さったこと」
「雪灰のことは、でもシロンは?」
大丈夫といわれても実感がわかない。
「カリナが繋げてくれた」
そう言って雪灰は自身の胸に手を置いて微笑む。
少し目をこらすと確かに光が二つの鼓動を繋げている。
ーーーー、あれ?
確か私、これと似たーーーあれ?
ーーーー。
ーーーー。
思い出そうにも思い出せない。
何処でみたのだろう?
ーーー。
死の淵?
あれ?何があったっけーーー。
正直死の淵の事を余り覚えていない。
だけど。
「無事なのね、なら良かった」
正直リュアンの言葉だけだと不安だった。
だけど雪灰本人が大丈夫だと言うのだから大丈夫なのだろう。
こうして雪灰も元気そうにしているもの。
気を失う前のあの光景ーー。
端から見たら腕を中に入れてるって光景は無事には見えなくて。
不安だったのよ。
「そして、この国とガルをその身を削り救って下さった」
「?」
ガルもさっき言っていた?
殺そうとしたりはわけが解らなかった。
だけど生かしたとも。
身を削ったってーーー何時?
ドランの時以来怪我をした記憶が無いし?
翔以外に身を渡したこと何て無いはず?
それこそ身に覚えが無い?
「リュアンに切られただろう?」
そう言って私の髪にそっと触れる雪灰。
私の視界に時々映り込む髪はばっさりと首元よりもうえで切られていた。
「え?か、髪?」
髪程度で身を削るって?
こんなの時間が経てばまた伸びるのに!
「はい、舞奈様の髪をこの国の核のつなぎに使いました」
そしてその作業の為にシロンと雪灰が黒い光で一時的に国民を守ったのだと。
後付の嘘の事実をドランやリュアンが広めたそうだ。
でなければ国民は恐怖におびえただろうと。
ま、収まりが良いなら別に良いのだけど?
「そして核に成るはずだったガルもこれで生きられます」
ガルは核に成って死ぬはずだったのだと言われた。
ーーー。
ーーーああ、だからさっき使命とか生かしたとか言っていたのね?
核に成るのが使命で誇らしいこと。
だけど私の髪?で生きながらえ生かされたとそう言う事。
ーーー納得。
これも余り実感無いけど。
「これ、舞奈のだろう」
そう言って雪灰が取り出したのは。
「私の髪結い紐ーーあ、そっか」
リュアンはこの紐を断ち切るために縛っていた根元から切ったんだもの。
意識すると凄い違和感がある。
短いってこんなにふわふわしてるのね。
首元も涼しいというか?
良かった、紐は切れてないみたい。
「あ、ありがーーっつ!」
お礼を言って雪灰から紐を貰おうと手を延ばす。
何故か紐に手が触れそうな時私の手は何故か意思に反して戻された。
ーーー?
如何して?
「お、おい?」
不安そうに体は大丈夫かと心配する雪灰に大丈夫だという。
『ーーは、ーーだよ、離れーーだよ』
何故か途切れ途切れにお祖母さまの声が頭に流れたけど?
何を言っているのかさっぱり解らない。
だけど何故か私はその紐に触れられなく為っていた。
再度触ろうとするのに何故か体が拒否する。
私にとって大切な数少ない家族との思い出が詰まったもの。
ま、短いから必要ないからーーー。
その時紐を持った雪灰の結べそうな白髪をみて思いつく。
「預かってて」
寧ろ結んで使っても良いよ。
と私は雪灰に半ば無理矢理押しつけた。
「お、おい、大切なもの何だろ?」
「でも触れられないしーーそれに」
「ん?」
「帰るときには返して貰うわラーシアに行けば帰れるみたいだし」
そう、私が帰る方法はもう見つかったも同然!
この世界では確かに不要だし、なら元の場所に帰る時にーー。
その少し間くらい雪灰に預けておいても大丈夫だろう。
私も傍にあってみられるのは安心出来るもの。
「ーーーま、舞奈」
「ん?」
深刻そうな雪灰の表情に私は首を傾げる?
何?
「大切なものだけど大丈夫よ、それ丈夫だもの」
何年も使っていたのに一向に汚れたりほつけたりしていないもの。
ーーーいまさらだけど不思議なのよね?
ま、この世界でも同じような事があるし。
「や、それもだけど、じゃ無くてーーその」
目を泳がせ途端に私と目を合わせなくなった雪灰。
沈黙を破るハクさんの言葉。
「舞奈様は帰ることが出来ません」
これが目覚めて一番麻痺した思考を戻す驚きの言葉だった。
「え?」
だって、ラーシアに行けば?
「実はーーー」
それからきかされた私が眠った数日の出来事と。
安易に引き受けた巫女の役目を聞いて私は只笑うしか無かった。
思いも寄らない副産物は都合の良いことばかりでは無かったみたい。
相変わらずの不定期更新すみません。
お読み下さり有り難う御座います。
ではまた。




