四十話 願った者
相変わらずの勢い任せですがーー。
宜しければどうぞ。
私は自由が好きだった。
縛られるのが嫌いだった。
それはこの身に流れる原種の血がそうしているのだろう。
「君たちもこんな心界なんて檻要らないでしょう?」
サファリに出て私は精霊達に問いかける。
「縛る、違う、契約ーーー僕らも選ぶ」
そう選ぶこの子達はまだいいのかも知れない。
だけどーー。
「ーー」
光達に問いかかけるけどなにも返答しない。
むしろ殆ど姿を表さない。
本当にこの子達は精霊と同じだろうか?
機械的で、本当に生きているのだろうか?
いや、意思が存在するのだろうか?
「また、お前は巫女やイブ様アダム様を冒涜するのか?」
考えに耽っていると五月蝿い人が来た。
私の兄で神を崇拝する、神官みたいな事をしている。
ま、やってる事と言えば、心界の監視や巫女が奉られた場所で祈りを捧げる事。
神頼みをし続ける狂った人なのだ。
この馬鹿も本当に縛られてる。
「そっちこそ、いい加減そんないない存在にすがってどうするのよ?」
いたとしても遠い過去に居なくなった存在でしょう?
神も本当にいるのか?
こんな世界を放置する神は神と言えるのだろうか?
だからこそCHIMERA達は造り出した巫女やイブやアダムを神と称して称える。
皆与えられる事に感謝する。
だけど人も結局絶滅した、神と言えるのだろうか?
そんな弱い存在が。
「巫女様は必ず戻られる、あの方しかこの世界は変革出来ないのだから」
そう、昔話、この世界はある一人の神が作った世界だと。
そしてその神がこの世界にある一人の巫女を使わせこの世界の変革をもたらした。
この世界に様々な生命が命を与えられた。
だからこそ私たちこの世界に生きとし生きるものは全て巫女に作られたと。
そしてこの世界、心界の核になったイブ様アダム様は巫女のお子だと伝えられている。
実際に本当の事かは解らないのだけど。
何故なら巫女様はある日唐突にこの世界から消え失せてしまったのだから。
だからこそこの世界はイブ様アダム様が作った心界で守られている。
全ては人を守る檻。
「巫女しか変革出来ない世界なんて間違っているわ」
そう、巫女が変革をもたらさないからって。
変わらないこの世界も。
「シャロは、そんな事であんなに苦しんでいるのよ」
そう、何故かあの子には父様と同じ力を持って生まれた。
いや、生むように仕向けられた。
この世界はもう、純粋に生まれる命は数少ない。
全てが再利用、何時すり減って消えても可笑しくない。
そんな自然の摂理から外れた。
「シャロの力は私が貰う、私はまだ精霊と契約していないもの」
だからこそ私は愛する精霊達とは契約しない。
何も無いままで居たかったから、何も縛り付けたくなかったから。
巫女の力なんか頼らない、私は私の力で。
シャロも助けてこの世界の檻を壊す!
そう決めていたのにーーどうして上手くいかない?
「ーーーつ!なんで!何でダメなのよ!」
私の中でシャロの中にあった力が私を食らう。
私は違うのだと否定するように私は壊されていく。
「ーー違う、お前は違う」
何度も違うと言われ、私の中の物が壊れていく。
「何が違うのよ!私は変えたいのに!」
結局救えないの?
私は無力なの!
救えないならーーー。
消し去ろうーー。
「ダメ!シロン!」
母さんは寿命を縮める力で私の核だけを取りだし守った。
そう、守ったと思っているでしょうね?
抜き取った私の核を時の流れの違うこの場で守った父様も。
違う、二人は私の自由を奪った。
私は犠牲になって失敗しても、それは私の意思ーーなのに死なせてくれないの?
そんな感情の無い偽物なんて入れて何がしたいの?
そんな作り物になにか変えられる訳がないのに!
私は私として変えたかったのに。
何故?何故?何故?ーーーーーー。
ーーーーーー。
ーーーー。
ーー。
何で貴女が生きる?
すぐに私のように消し去られる筈じゃないの?
何故、動いているの?
それは私の体なのに?
『雪灰だよ』
そんな一言で変わってしまった。
何故、そいつは何者なの?
「舞奈は舞奈、誰でもない」
そう消えたはずのあの子が私の中で私の問いかけに答える。
「あの子はイブでしょう?あの子は特別なの、だからお前も」
そう、でなければお前に命が感情が宿る訳がない。
何で、お前に、加護が、どうしてこの力を使えるのよ!
今の私は消すと言う思いだけで動いている。
だからこそこの力が使えている。
そう、私が守りたいと思っていたはずの、この世界も。
家族もシャロもーーー消し去ってしまう。
だけど、心では安心していた。
この体は力を扱えるように成っている。
あの時消されたのが嘘のように。
これで、全て消えれば、皆幸せにーー生きながら死なずにすむ。
ナノにーー何故?
「ーーーう、止めるのだ!シロン!!」
「シロン!止めて!」
「あ、あねーーーぐ!」
力で満たされた空間では人、神に近いガルはそう長くは持たない。
力を持つ父様や母様でもそう長くは持たないだろう。
そう、この場に居る両親さえ消してしまえばこの空間で生きられるものなんて存在しない。
それだけ私の中の力は強い。
この力はこの場所を消し去るための力で包む。
前の私では使えなかったのに、あの偽物のお陰なのかしらね。
だけど、それならなおさら私がすることは変わらない。
何故そんなにも生にしがみつくの?
ーーー解らない、もうなにも。
だから。
「全てを消してあげる、こんな檻の世界なんて」
本当に今度こそ消し去ってしまうために私は力を強める。
今度は邪魔されないように、目の前の三人から。
ーーなのに。
どうして?鼓動が苦しくなる?
何がこんなにも私を阻む?
核はもう消え去った筈なのに?
もう躊躇う必要なんてないのに?
むしろ利用されたなら消したいと思っている筈でしょう?
なのに何で私の中の鼓動がこんなにも苦しい?
「そうねーー此処は檻でしょう、私のいた世界とは全く違う」
消えたはずの鼓動に苦しめられている最中に聞こえない筈の声が響く。
両親を家族を消そうとした私を止めたその声の主はーーーー。
真っ黒な黒髪をバッサリと切ったあの子を変えたイブ。
此処に居られる筈がない、生きていられないはずのない存在!
「な、何で?」
此処に、あの子が逃がした筈?
直ぐに消えてしまうのに、無駄な足掻きだと思っていたのに?
「決まってる、私の大切な雪灰を取り戻しによ」
即答する彼女は偽物を求める。
その人は真っ直ぐに私をその瞳に写す。
黄色い、いや、心界の光達を束ねたような、輝く瞳。
『巫女様、帰還、命を』
今まで何も反応を示さなかった光達は何処と無く嬉しそうに問いかける。
ーーー一体貴女は何?
「そうねーーなら、私をーーー殺しなさい」
お読みくださりありがとうございます。
ではまた書けましたら。




