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三十九話 生きて

誰にも会わないように、私は降り立つ。

少し前まではこれが当たり前の行動だったのに。

「何処までいっても私は臆病だな」

「そうだな」

「ドランか?何故?」

「見送りって所だ、お前は今、俺の知る奴の最後の顔ににた表情をしてやがるからな」

「ーーーでは、私からも一つ、心界から、いえ、長の所に行ってください」

「何故だ?」

「多分、私は舞奈やシャロ以外守れない、だけど、貴方もアデルも私を認めてくれた」

私を認めてくれた、関わりを求めてくれた人まで巻き込みたくなかった。

長の所に行けば安全とはいかないかも知れない。

だけど、このまま心界の中にいるよりはいいだろう。

「ああ、だが、お前の家族も時間を、今のお前を見れば」

家族であるのは事実かもしれない、私は母さんに産み出された。

だからこそ、もっと時間が私に覚悟があれば、変えられたかも知れない。

だけどーー。

「ーーそうかもしれません、でも、私には止められないから」

そう言うと私の核から少し力が抜けていった。

「お、おい!」

心配そうにするドランを降りきり私は王殿の門を潜った。

王殿はドランでも入れないだろうから。

「っつ!ばか野郎が!」

案の定ドランは門の前で光達に阻まれていた。

気分を害するスラムや下町や貴族界ではなく、ここは王殿。

選ばれた、光達に認められた者しか入ることの許されない場所。

正直勢いで無ければ私は暫く門の前で自問自答していたことだろう。



弾かれたドランのように私は拒絶される事なく無事に入る事を許された。

「ーー本当にあっさりと入れるんだな?」

しかも門を抜けるとそこはもう真っ赤な絨毯の続く渡り廊下で入った門も背には無かった。

どうなっているんだ?

確かに王殿の門の先に確かに広い空間が見えていた。

渡り廊下である筈がないのに?

「っつ!」

「ーー着いてこい」

何故か私の影が延びて誘導している。

「あ、あの」

「話しかけるな、でき損ない」

「!」

「お前はでき損ないだ、お前等俺の妹ではない」

「ーーーああ、分かってるさ」

「ーーーー何故ーー」

「?」

「この先で父さんと母さんが待っている」

そう言うと影の中から青年が出てくる。

それは記憶の中にあった、兄さん?

「今なら、逃げれるぞ?」

「ーーーありがとう」

「!」


私はそっと扉に手をかけて中に入る。

「馬鹿が」

閉まる前におれは投げ掛ける。

何で他人に犠牲になるのだと。

俺には理解できない、俺は俺の願いの為に動くだけだ。

「さて、次はあのイブか」

扉に背を向け俺は違う影に向かう。




「っつ!ここは」

「よく来たな、空の器よ」

そう言うのはーーー私よりも何倍も大きな黒い影。

漆黒と灰色の瞳のドラゴン。

「と、父さーー守り手」

「ほう、わしのことは守り手と呼ぶのだな?」

「ーーー私は人形だから、それにそう呼べるのはーー」

私はドラゴンが守る白い光に目を向ける。

『ーーー』

「ーーわかってる」

光に向かって私は手を伸ばす。

そうすると光はゆっくりと私に向かって飛んでくる。

「『  』!」

だがその前に母さんが光をつかんで止める。

何故か私が光を受けとるのを阻もうとする。

「心配しなくても、その光に危害は加えませんよ」

むしろ危害を加えられるのは私だろうに?

「っつ、違うの、私はこんな事のために、貴女を、この子を」

光を掴んだまま涙を流し膝をつく。

「ハクよ、離すのだ、さもなくば娘は帰ってこぬ」

「ですが!あの子も、雪灰も私が!ですから!」

必死な母親の言葉を阻むのはーー。

「連れてきました、母上、あとは任せます」

そう言って影は、兄はすぐに消える。

代わりに影から出てきたのは。


「な!此処は!核!」

「しゃ、シャロ何で!それに舞奈!」

シャロに抱えられた舞奈は気を失っているようだ。

いけない、早くしないと。

「っつ!来い!お前が望む物は此処にいる!」

必死に呼び掛ける、お前の器は此処だと。

『 ーー 』

光は母親から離れ私の手の中に収まる。

「約束は、願いは叶えさせて頂きます」

そう言うと私はまだ動けないシャロを舞奈ごと尻尾である場所に連れていく。

そこはこの部屋に入って最初に探したもの。

「な!」

その陣は見間違いのない、舞奈が出てきた時と同じ陣。

此処は世界樹ではない、だけど、これが転送する陣であるのは間違いない。

「し、しかし!姉さん!これは使えません!」

「そうだ、その陣は神、いや、巫女にしか扱えぬ」

巫女?初めて聞くけど、イブとは違うのか?

「イブ様が使うのは此方だ」

イブの送還には守りての下にある陣でしかラーシアに行けない。

だからこそ守りてはその場から動かない。

だからこの陣に近づくのも止めなかった。

「諦めなさい、雪灰、イブ様を此方に、そうすれば」

舞奈を犠牲に生かしてやると。

反吐が出る。

だから私は貴女達を最後のこのときまで守ろうと思えなかったのだろう。

「ーーーあり得ない」

舞奈はこの陣で来た、発動しないわけがないと妙な確信があった。

そう言うと私は自分の中の力を陣に流し入れていく。

伝わってくる鼓動、それはうでの中の光。

『ーーー起きるーーーおきたら』

近い私だけに伝わってくる声。

だけど、自分が無くなっていく感覚ってこんなんなのか?

それをずっと君は味わっていたんだな?

返すよ、これは君の体で人生だ。

だけどーーー。

その願いの中に君が守ろうとしたシャロも。

そしてこれは私の我が儘だけど、舞奈達は含ませない。



「ーーーー舞奈!舞奈!」

舞奈よりも早く目覚めたカリナが必死に舞奈を起こそうとする。

その必死な声に舞奈はその瞳を開ける。

「ーあれ?此処は?」

陣のある台で回りをまだ思考や視点の定まっていない目で見渡す。

「舞奈!」

そんな彼女に飛び付いて無事だったのを喜ぶカリナ。

まったく、舞奈が本当に大事なんだな。

まったく、これなら大丈夫だろう。

「カリナ?シャロ?ーー此処?!」

暫く回りを見渡し、おおよその状況を理解した頃私はそっと近づきながら声をかける。

「ほ、良かった、起きたんだな?」

驚いたように首がもげるのではないかと言うくらい早く私の方を向く。

真っ直ぐに彼女の瞳に私がうつりこむ。

「雪灰?」

私の名前を呼んでくれる、あと何回聞けるだろう。

自身が無くなり、腕のなかで彼女が形を成していく。

「もう少し、じっとしててくれ。もう少しで核の力が溜まるから」

たとえ、ラーシアに行けなくともこの心界からは出してあげられる。

そう思っているのに君は出ようとする。

私に近づこうとする。

「っう!何なの!」

いくら君でも発動した力には抗えない、だからこそ君は此処に来たんだから。

「駄目だよ、召喚の途中で出たらいけない」

じゃないと、もう君を逃がせない。

私は臆病だ、だから全部はもとめられない。

「雪灰!止めて!私は雪灰と一緒に!」

必死に叫ぶ泣きそうに必死な君の姿に私は自然と微笑むことができた。

とても穏やかな気持ちになれたんだ。

だってこんな時でも君は私を求め続けてくれているから。

それだけでーー私は。

「っつ、う、此処?」

自身の感覚が曖昧になってきた頃にうでの中の彼女が動き出す。

「シロン!」

傍観していた母親が名を呼ぶ。

そう、私の存在が消えかけている、だから名前が帰ってきた。

「おお、目覚めたか」

ホッとしたように首を向ける守りて。

「やっとかよ馬鹿姉」

挑発するような、だけど嬉しそうにするガル。

「ーーー良かった、上手くいってるみたいだな?」

だけど流石にもう持ち上げていられない、感覚がないから落としそうだ。

だから私はそっと下ろす。

「ーーそう、私、目が覚めたんだ?」

目覚めたばかりとは思えないハッキリとした口調で言葉を紡ぐ。

後ろから喜びの感情と、今まで動かなかった守り手もゆっくりと近づいてくる。

これからこの子がどうするのか知らないのだろう。

近づいてくる家族は本当に家族に向ける感情しか伝わってこない。

ーーいいな。

私にも向けられていたらーー。

ーーーー。

ーーー。

「ーーーーー」

しっかりとした足で立ち上がる。

何故か自分よりも少し大人びてる気がした。

そうして少しほっとした、私は彼女とは別なのだと。

だけど、次の彼女の発した一言で私は現実に戻される。



「ーーなら、私、壊さないと」

静かな彼女の言葉に反応し、真っ黒な光達が私まで巻き込むほどに溢れ出す。

私が扱った力と同じだけど異なるもの。

私が望んだものと彼女、シロンが望んだものは違う。

その光達から感じる彼女の願いはーーただ。


消 消 消滅 全てを。

全てを消し去る事だけだった。

それを私は知っていた。

彼女の記憶と体で彼女の願いを聞いていたから。

『こんな世界壊してやる、そうすれば皆幸せでしょう?』

それが彼女の根本的な歪んだ願いだった。




「駄目だ、二人は消させない!」

私は最後の力を振り絞って舞奈達の元に走り、力を流す。

「雪灰!早くこっちに!」

手を伸ばしてくれる。

だけど阻まれる、見えない壁がそこにあるかのように。

私はこの陣には受け入れられない。

だからこそ発動し私と同じように消えかけている君を見て私は言葉を紡ぐ。

「生きて、舞奈ーー」

伝えられたかな?

ーーー。

ーー。



「雪灰ーーーーー!」

そんな君の叫びが聞こえた気がした。

お読みくださりありがとうございます。

ではまた書けましたら。

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