三十八話 我が儘
全てをシャロから聞いて私の第一声は。
「何よ!私だって!雪灰が犠牲になってまで帰りたくない!」
そんなこと私は望まない。
そんなの雪灰だって分かってる筈なのに!
何でこの方法を選ぶのよ!
一月以上いてそれが分からない筈がないのに。
「まだ一緒にいたい、居てよ」
止まった涙が悲しみでは無く怒りを含み流れ落ちる。
消える事を受け入れようとしている雪灰にも。
そんな事を一月も黙って耐えていた雪灰に気づけなかった私自身にも怒りが混み上がってくる。
「こんな、させない、連れ戻す」
そんな犠牲なんてさせない、させては行けない。
私は私自身で、犠牲なんて払わずに帰る。
こんな方法で帰る事なんてしない。
「なら、そうすれば良い」
そうはっきりと言う長さんが私を真っ直ぐにその真っ赤な瞳に写し込む。
私はちっぽけな存在。
分かってる、だけどーー私は。
「やっぱり私は我が儘なまま、自己中は変わらない見たいです」
自身がしたいことをする。
私は私自身で決めたことを回りに何を言われても実行する。
「それが当たり前だろう、人は我儘で自己中なのだろう?」
「!ーーーそうですね」
だけど、どうしたら。
「舞奈が望めば、叶えるよ?」
肩から私を見つめているカリナが私に問いかけるように首を傾げる。
確かに、カリナの力を使えば、私が願えば。
不思議とそんな不確定なのに確信がある。
カリナなら何でも叶えてくれると。
だけど、この願いはカリナに望む願いじゃない。
私自身の我が儘、私自身が望んで動かないといけない。
「大丈夫、カリナには願わない、だけど、少し我が儘になってみます」
そう言った私は何故か凄くスッキリしていた。
まだ、分からないことは沢山あるけど。
私が一番したいことはわかったから。
ーーーそれは、帰る事じゃない、それは今じゃない。
だから。
「迎えにいくよ、私はまだ帰らない」
最低でも雪灰が望んだ方法で帰ることはしない。
そして。
「消させない、雪灰は絶対に」
雪灰は私より私をって言うけど、私だってそうだ!
いや、犠牲は嫌い、だから犠牲にしない。
どっちも。
何も対価にしない願い?
あり得ない?
上等!私はそれでも願う。
「それは好都合です」
唐突な声が響く。
私の影が私を飲み込み始める。
「ちょ!なに!」
「母上の命により貴女をお連れいたします、イブ様」
ぬめっとしたした黒い地面から影?が出てきてさらに私を沈める。
「な!兄様!」
シャロが叫ぶように私の手を掴んで出そうとする。
「お前も行くんだ、オレは行けないから、お前が見届けろ」
「な、何を!」
抵抗も空しく影はシャロまで侵食していく。
『舞奈、消す?でもこれの先、雪灰の鼓動に繋がってる』
そう言うカリナの言葉とシャロの混乱する瞳を一別して。
「上等、連れていきなさい、私は私の願いを自分で叶える」
飲み込まれ意識が闇に染まっていく。
『ーーーーーさーーん』
全てが包まれたとき何かが私を抱き締めた気がした。
ーーー誰?
「これで駄目なら、此方にはこない、イブ様だからって、今までの奴等と同じだ」
一月影であのイブを見てきた、確かに今までの奴等とは違う。
むしろアイツに似ている、だからこそ簡単に認める訳にはいかない。
俺が唯一認めたアイツは俺の期待を裏切った。
『ごめん、私はあの子を救うことしか出来ない』
この世界を救う、変える可能性を持っていたアイツは一人を救う為だけに失敗した。
だからこそ、俺はそう簡単に信じない。
でき損ないの人形なんかに気をつかうイブなんて。
「そうだろうか?」
久しぶりに此方の大地に振動で言葉を伝えてくる。
此処は初代巫女を祀る世界樹の根の下にある空間。
影を使うオレや大地と同化した長殿しか来ることが出来ない場所。
俺以上に慎重な長殿が此処まで関わる、それだけでも俺は不思議だ。
「貴女が初代以外を気にするとは」
「そうだね、だが、あの子はもしかしたら」
「俺は認めない、あのイブも消える、アイツのように」
俺たちは失ってばかりだ。
俺たちが求めた者は自身の側から消えていく。
だからいっそ、だけど、求めてしまうんだろう。
面影を求めて。
「ーーーー舞奈!舞奈!」
「ーあれ?此処は?」
私は光達に包まれた台?に寝かされていた。
「舞奈!」
「カリナ?シャロ?ーー此処?!」
目覚めた私は辺りを見渡す。
不思議な広い広間の中心の石碑?には数字が写され回りを光達が包み。
その前に書かれた陣?の書かれた台に私とシャロがいた。
そして離れた場所にはよく目を凝らすと漆黒のドラゴンと白い髪の女性と茶髪の少年がいた。
あれはもしかして?
「ほ、良かった、起きたんだな?」
私はその声のした方に顔を向ける。
「雪灰?」
私たちの前には確かに雪灰がいた。
だけどその腕には真っ白な光の核にシルエットだけの人影?を抱いていた。
いったい何?
その人?は誰?
「もう少し、じっとしててくれ。もう少しで核の力が溜まるから」
雪灰から白のーー嫌、白に近い灰色の光が流れ込んでくる。
それに同調するように私たちの下にある陣が輝きを増していく。
雪灰の体がどんどん消えていく。
雪灰のうでのなかで眠る白い光がどんどん人の形を型どっていく。
正しくは、雪灰が消えるのとは逆に姿が鮮明になっていく。
訳がわからないこの状況でも私は立ち上がる。
だってこのままじゃ雪灰が消えそうなのは嫌でも理解できたから。
「っう!何なの!」
だけど、何故かこの陣から出る事が出来ない。
光達が邪魔をする。
「駄目だよ、召喚の途中で出たらいけない」
じゃないと、もう君を逃がせないと言う。
なに?逃がすって!
「雪灰!止めて!私は雪灰と一緒に!」
必死に叫ぶ私を見てそっと笑う雪灰。
「っつ、う、此処?」
雪灰の腕で眠っていた女性が目を開く。
「シロン!」
「おお、目覚めたか」
「やっとかよ馬鹿姉」
傍観していた家族?がそう各々言っていたけど。
「ーーー良かった、上手くいってるみたいだな?」
ホッとしたようにそっと女性を下ろす雪灰。
「ーーそう、私、目が覚めたんだ?」
何か女性がいっているけれど?私たちには聞こえない。
近づいてくる家族。
そしてしっかりとした足で立ち上がる。
その姿は雪灰を少し大人にした感じの女性。
まさかあの人が雪灰のシャロの本当のお姉さんなの?
だけど、なんだろう?この鼓動?
とても苦しいーーこの感じ、何?。
「ーーなら、私、壊さないと」
目覚めた雪灰に似た白い女性がそう呟くと真っ黒な光達が集まっていく。
その光達から感じるのはーー。
ただーー。
消 消 消滅 全てを。
「駄目だ、二人は消させない!」
そんな中殆ど消えかけの雪灰が私たちの陣、私たちを遮る光達に触れる。
「雪灰!早くこっちに!」
手を伸ばすけど阻まれる、見えない壁がそこにあるかのように。
あれはいけない!ここを離れなきゃ!雪灰も早く!
なのにーー貴女は私を真っ直ぐ見つめてーー綺麗に、穏やかに笑って。
「生きて、舞奈ーー」
何かを伝えようとした雪灰はそのまま光となって砕け散った。
「ーーーえ?」
訳がわからない?
目の前で何が?
だけどそんな事を思う前に、黒い光が私たちを包む前に。
『巫女の召喚式を確認、送還いたします』
そんな機械的な言葉と共に私は送られる。
ーーー。
どうしてーーー、雪灰?
「雪灰ーーーーー!」
私の叫びに答える人はもういない。
次は雪灰視点と思っています。
お読みくださりありがとうございます。
ではまた書けましたら。




