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十話 逃避と矛盾

祝十話です。勢いでここまでかけました(笑)

ではどうぞ。


「世界を見ろって言ったのに、この監獄みたいな部屋だけって、無理」

だって、この世界には漫画もゲームも―———何より姉さんもいない!

「怪我が治らないってだけで外に出れないって!」

 心配性すぎるんだよ、神といってもさ、僕はまだ学生で一般人。

そんな裕福な生活はすぐに飽きる。

「―—にしても、珍しく誰もいなくなった——」

珍しくエリアスが来る前にシルビアさんがいなくなったからだ。

多分僕の発言のせいだけど、これはチャンスだ。

僕は部屋に置いてある制服に身を包む。

これが唯一所有する男性服だ。

あれ以来確かにズボンなども用意されたが——女性もの。

———形は似ていてもやはり別物でいろいろ不便もあり——致し方なく、ワンピースなどのゆったりした衣服にとどまっている。

実際慣れて、違和感が薄れている、人の適応力恐るべし。

むしろ、僕にはそっちの趣味が———。

———

———

「よそう、考えるの、むなしくなってくる。それよりも異世界ライフだ!」

無駄にテンションの上がった僕はウィッグも外し本来の鏡 翔に戻る。

久しぶりの男の姿——はあ、落ち着く。

だけどその時の感激は数秒後に吹っ飛ぶ。

男に戻ってハイテンションでエレベーターに乗り込み一番下にあった——地上と表記されたボタンを押して振り返ったエレベーター内は———透明なガラス張りだった!

「―——ななな  が、ガラス!」

慌てて振り返るも扉は無情にも機械らしく機械的に無慈悲に締まり——僕が思って居る以上に早く下へと落下していった。

————

————

——————

外に見える景色——そんなの見てる余裕など皆無——僕は意識を飛ばしその場でしゃがみ込む。

「おい、兄さん、早く出てくれないか?」

目を覚ますと少し厳つい男性に肩を揺らされていた。

「は!ここは!地上!」

僕は光に誘われ慌てて外に出る。

「おっと!」

「あ、すみません」

僕は振り返るとその厳つい顔に似合わないが二カっと笑うと。

「きい付けな、お貴族さんよ、ここは下界だぜ」

「え?貴族?」

何で分かるんだ?

貴族というか神らしいけど?

ま、いいか。


「わあ!」

僕の周りは塔を囲う様に広がる建物。

都会のような建物が広がりそこには皆が皆過ごしている。

「へえ?ここが地上?」

こんなに都会ぽいのに?

確かに塔みたいな大きな建物はないけど家が立ち並んでみんながみんな賑わってる。

一戸建てだったりマンションのような少し大きな建物。

にしても——。

「ほんとにここ異世界か?」

そうここの皆は皆髪色や目の色は様々だけど——人の姿。

CHIMERAっていうくらいだからもっと人外っぽいと思ってたけど?

「全然変わらないじゃないか?——ん?」

『聞いたか!また獣が紛れ込んできたらしいぜ?』『ここは心界の中なのに馬鹿だな?』

『や、コイツ固定する前に獣になっちまったんだな』

『何だ、獣化か、何で心界の中で』『今度は神に愛されればいいな?』

「獣?」

確か原種に近づきすぎた奴だよな?

『―—私はまだ——うお!』

人だかりの中には真っ赤な炎をまとう、トカゲ?

「なんだ?あれ?」

言葉をしゃべっているがなんだか変だ?

「お、お貴族さんは離れな、見物でもこいつはもう獣だ、まだ貴族でも怪我するぜ」

僕と同じように見ていたひとりが近づきすぎた僕を見かねて待ったを掛ける。

僕は近づくのをやめ問いかける。

「あれは?」

「サラマンダーの獣さ、なに、ここは下界でもまだ心界の中だ、すぐに処分されるさ」

「あれがサラマンダーか!―——は?処分って?」

サラマンダー異世界ファンタジーに出会えてさっきのエレベーターショックから立ち直るがおかしなことを言って?

——処分?って?

「獣で意志がない奴は害になる前に処分されるのさ」

獣でも少し人の遺伝子があるらしく心界も消さないらしいが、心界の中の人々に危害を及ぼす前に処分されるのが当たり前らしい。

「な、何で!アイツまだ言葉」

あんなサラマンダーだけど!

さっき確かに声を!言葉を!

「もう、神の血も少ないんだろう、殺してやった方がアイツのためさ」

「そ、そんな」」

殺す?あたり前?

何言ってんだよ!あのサラマンダーが何したっていうんだ。

「皆!下がれ!」

混乱する僕を置いて状況はどんどん進んでいく。

僕ら野次馬の間を割って出てきたのは——真っ白騎士装束にこの塔と盾をモチーフにした紋章。

あれは?エリアスと一緒の恰好に紋章?

たしか——警備隊とか言ってたっけ?

「警備隊のお出ましだ」

皆が彼らに道を譲り僕もその流れで道を譲ると彼らが横を通り過ぎる。

「確認する、お前はCHIMERAか?獣か?」

最終確認という様にまっすぐにサラマンダーを見つめる騎士。

「あ—わーーしわ——」

さっき以上に言葉にならない苦しい声。

だけど、何か言おうと必死になってる。

「お前に神の祝福がある事を」

そういうとその腰にある剣を向き放ちトカゲの首を刎ねる。

「ひ!」


そうするとそのトカゲは血を流すことなく光達によってその場から消え去る。

「な、何で?」

「獣になった奴は死ぬと神の光に回収され次の代のサンプルにされるんだよ」

「は?サンプル?」

あれはトカゲだけど?生きてたんだろ?

何で?そんな平然と。

周りの野次馬は何事もなかったかのように散らばっていった。



さっきの訳の分からない光景に背を向け路地裏に僕は逃げ込んだ。

「な、なんなんだよ」

あんなに簡単に命を奪うって?——

———

———あれ?

まずい、視界が。

僕は立ちくらみにその場に膝をつく。

何だ、視界が霞んで、苦しい?

「お兄さんどうしたんだ?下界酔いかい」

知らない声がすぐそばでささやかれる。

そこには僕より一回り小さな男の子がいた。

髪は赤く、瞳は金色の—―——さっきみたサラマンダーを思い出させる。

だけど目の前のこの子は何て?

「―—え?下界酔い」

下界酔いとは何だ?

車酔いか何かか?確かにすごく吐きそうになってきたけど。

「や、すごい顔色だったからさ?お兄さん貴族だろ?だったらこの下界である下町はまずいよ」

「あ、いや、何で?」

貴族、それに下町?来たらまずいのか?

怪我なんて今のところしてないぞ?

「や、そんな来てるのなんか貴族様だろう」

僕の服は制服、確かに目の前の男の子はそんなにいいとは言わないが服をしっかり来ているし?

「は、ただの制服——う」

制服というだけでも吐きそうだ―まともな会話無理かもしんない。

「お、相当酔ってんだな。ま、いいや、これ、食べる?さっき姉さんのためにとってきたんだけどさ」

差し出されたのは彼の小さな手と同じくらいの小さな木の実。

それを袋から取り出し僕に差し出してくる。

「?」

黄色い小さな木の実?

初めて見るけど。

「キアの実ってんだ、酸っぱいけどすっきりするぜ」

「や、でも」

ただで貰うのも、それに見ず知らずで。

むしろ僕よりずっと小さな子供から。

「これ僕がとってきたから一つくらい大丈夫、それじゃな兄ちゃんも早く帰れよな」

僕に実を握らせ彼は走っていく。

「あ、ありがとっていないし———っつ!」

思い切って一口かじるとツンとした酸味が口いっぱいに広がった。

す、すっぱ、けど———確かにすっきりしたな。

さっきまでの気持ち悪さが嘘のようにすっきりした。

それにしても下界酔いに——それにサンプル。

異世界で、価値観が違うのはわかってたつもりだけど、何かおかしい。

「僕はまだ知らなすぎるのか」

実際まだ、一週間ちょっと——。

やっぱりまだここに来るのは早かったかな?

「はい、そうですよ、翔」

「だ!誰——え?」

この世界でその名は誰も呼ばないはず——!

つい振り返るが——。

僕の手をつかんだのは——真っ黒なローブをかぶっているけど?

この声?

「帰りますよ、ここは目立ちます」

「シルビア——ん!」

「黙って」



「でも何でここに!」

エレベーター近くまで来ると彼女は止まり僕を振り返る。

「貴方が降りたと、貴族階にいると思ったらまさか一気に最下層の地上に降りているとは」

「え?貴族階」

あ、確かにあったけど?

とりあえず地上って——あれ?

「早く戻りますよ、貴方の体はこの場の空気は毒です」

「え?別に、そんなに?」

さっき少し気分は悪くなったけどさ?

「そんなはず——それは?」

シルビアは僕のまだ食べかけの実を指す。

僕は食べかけをそのまま一気に口に放り込む。

「ん?やっぱ、すっぱ、これは赤い髪の男の子がくれたんだ、確かキアの実って言ってたかな?」

レモンのような酸っぱさを優しくしてさっぱりさせた感じの味。

「初めて会う者からの物を食べるとは無防備すぎです」

「―—う、」

馬鹿にされたが、正論なので言い返せない。

「ですがその男の子には感謝ですね」

だけど感謝ってこの実何かあるの?

「え?」

「キアの実は世界樹の傍にしかならない神聖な実で心界の外でとれる神の血を安定させる効能があります」

「あ、だから気分がよく——ひ!」

楽観的にポンと手を打ち合わせて納得する僕をシルビアさんは睨んでいた。

「かえりますよ」

「は、はい」

もう刺激しない方がいい、おとなしくしよう。

——だけど。


「―—イブ様?」

先ほどと同じようにエレベーターを目の前にすると僕は立ち止まる。

「―—やっぱりヤダ」

無理だ、まだ無理!

「は?」

僕の発言に彼女は首をかしげる。

「ぼ、僕高いの無理なんですって!」

「しかしこのエレベーターは硬質ガラスで黒くすることもできますし?」

僕の階のみたいに——あ、だけど。

「―——嫌です」

さっき乗った時の感覚で今すぐには乗れない——乗りたくない!

「わがままを——はあ」

まるで子供のわがままに悩むように額を押えため息をつかれてしまう。

かっこ悪いが今は嫌なんだよ。

あと数時間!

「っつ!え?」

突然彼女が僕のつかんだままの手を引いて僕を引き寄せる。

あれ?抱きしめられた?

彼女の顔はローブで見えないけど?

「久しく飛んでいないのでしっかりつかまってくださいよ?」

「へ?」

飛ぶ?

急な浮遊感に彼女をしっかりと抱きしめる。

浮遊感とともに僕らは高く空に舞い上がってあっという間に雲の上まで上がる。

「このくらい高ければ大丈夫ですか?」

「わ!まって——え?」

何処までも続く雲海。

この景色を見ている僕が遥かに年上だろうが女性に抱きしめられての状態じゃなければ恰好つくが。

さっきまでダダこねてた僕が何を言ってるんだろう。

だけど、そんなことより。

「す、すごい」

「私は天族でもドラゴンでもないのでこれ以上の上昇は出来ませんが」

成程、天族やドラゴンはこの上まで行けるのか?

確かに僕の階はもっと上みたいだし。

だけど彼女の背中で僕らを支えている翼はあの時いた真っ白な翼とは非対称の。

「黒い、翼?」

蝙蝠みたいなつやのある翼。

「私は夢魔の遺伝があるので——さ、貴族階です、ここなら」

そういうとガラスが光となり消え去り僕達を受け入れる。

「す、すご」

本当にありとあやゆるものにこの光達が存在している。

その貴族階という場所には待ち構えたようにエリアスがいた。

後で聞いたがここはエリアスが配属されたイブやアダムの警護役の階だったらしい。

「イブ様ですか?その恰好は?」

シルビアは分かるが僕を見て首をかしげる。

——あぁ、僕今男の姿に戻ってるんだった。

「エリアス?これは彼女の趣味よ、男装を好むのよ——」

答えない僕に変わって彼女が変わりに答えてくれたが? 

確かにそう言えとは言ったけど!

なんだか僕のイメージどんどんおかしな方向言ってないかな?

エリアスも口に手を当てて何頬染めてんの!

君確か男だよね!

むしろ女装の時に染めろよ——や、いや、やめてくれ——。

「そ、そうなのですね、しかし姫様もよくご無事で——姫様!」

「お、おい?」

「―—大丈夫よ——っつ!」

彼女が僕の握った手を放しその場に倒れ込む。

「な!おい!シルビア!」

苦しそうなその表情に姉さんが重なった。

何で——何で!

どうして僕の周りはこんなにも——苦しむんだ。

書きためせずに不定期更新お許しください。

また書けたら投稿します。

すみません、気長にお願いいたします。

読んで下さった方に感謝を。

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