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つぶやき‐壱‐
ジジッ、ジジッ・・。
湿った芯から、音を漏らしながら蝋燭の火が、揺らめく。
蝋燭以外に光源のない室内は、どんよりと暗い。
灯りが届かない暗闇は、闇よりももっと質量のある漆黒が犇めいていた。
啾々。啾々。啾々。啾々。啾々。啾々。
寒気のする哭き聲が、谺する。
小さくなり、また大きくなりを繰り返し、それが掠れたかと思うと、耳を塞ぎたくなる哄笑が嘲笑う。
不意に聲が止んだ。
闇は、痛いぐらいの静寂に沈む。
「ははは。まだだよ。
まだ、始まったばかりだ。」
この空間には不似合いな、生ける者の声。
生ある者で、この呟きを聞く者は無かったが、その声は不快な響きをしていた。
―――始まったばかりだよ。