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盈―ミチル―  作者: 鷹真
4/18

みっつめ

ばしゃばしゃ。

「ひぁ。冷たくて気持ちいいな。」

今日は、休日で会社は休み。

C介は、休日を利用して自分の田舎へ会社の同僚と遊びに来ていた。

かんかん照りの真夏の太陽の下、ゴミゴミした海でなんて泳ぎたくない。

やっぱり、川遊びがいい。

田舎の地元の人しか、知らないような穴場の河原。

昔、C介がこの地域に住んでいた頃、よく遊びに来ていた場所だった。

山道だが、ちゃんと道は舗装されているし、野生動物がいるような山奥でもない。

河川敷は広く、川の水も濁りなく澄んでいた。

適度に木々が生えているため、太陽直下で焼かれもしない。

木々の木陰は、気持ちがいい。

時折吹く風が、冷たい川の水で冷やされるのか、涼しくて心地よい。

「ここ、いい所だな。あえて文句いうなら、コンビニ遠すぎ。」

「まあいいじゃないか。だからこその環境だろう?」

そうか。とあっさり納得した一人は、ラジオ体操よろしく準備体操をした。

冷たい川の水にいきなり飛びこむ勇気はない。

子供のころは、平気でやってたかもしれないが。

C介もつられる様に、準備運動をしてから、水に足を入れた。

「う。マジ冷たい。」

こんなに冷たかっただろうか。

昔の記憶では、頭まで水に浸かって、何時間も泳いだ気がする。

ばしゃりっ。

「ひっ。」

いきなり水を掛けられて、変に上ずった声が漏れた。

「あははは。なにぼーっとしてんだよ。」

それから、C介たちは大人げなく水の掛け合いをしたり、ハシャギまくった。


「おーい。そろそろ、バーベキュウしよう。腹減った。」

一人が言いだして、川からゾロゾロと上がる。

C介たちは、バーベキュウコンロを持ってきていた。

傾かない様に、確りと足を固定する。

野菜は既に切って売られている物を買ってきた。

メインの肉も、適当に買ってきた。

プシュ。

気の早い奴が一人、ビールを開ける。

「おーい、フライングかよ。」

「ま、いーじゃん。いっぱい買ってきたし。」

ワイワイと楽しい時間が過ぎる。

C介が、ふと川面に目をやる。

・・・ん?なんだあれ?

川面に何かが浮いている。

モヤモヤとしている・・・。

C介は、目を凝らして、それが何か見極めようとするが、解らない。

藻?黒っぽくて、モヤモヤした感じ・・・・!!!

えっ。まさか。

C介は、ぐるりと連れの面々を見渡す。

全員、いるな。

さっきまで、何にもなかったよな・・・。

不思議に思う。

先程まで、C介が潜って遊んでいたあたりだったから。

水は澄んでいるので、何かあれば見えたはずだ。

確かに、何もなかった。

誰かが来た様子もなかった。

はしゃいでいたとしても、人が来ればさすがに判る。

気になる。

「おい?C介どうした?」

声を掛けられて、はっとした。

「あ、ああ。あそこにさぁ。」

と、何かが見えた辺りの川面を指さす。

「何か、浮いてない?」

どれどれ?とみんなして、川面を凝視する。

・・が、一様に首を振る。

「なんもないぞ。」

えっ。見えないのか?あのモヤモヤ。

「・・・ちょっと、気になるから見てくる。」

C介は、再び川に入った。

今までいた河原の反対岸、そちら側は山になっているが、そちら側まで泳いで行った。

この辺りは、注意が必要だった。

水深が急に深くなっているし、流れが速い。

気をつけながら、進んで行く。

やっぱり、モヤモヤが浮いている。

遠くの方で、おーいとか戻ってこいとか聞こえたが、C介はそのまま進んだ。

・・・モヤモヤは、水に広がった長い髪の毛・・。

・・・ひっ。

C介は、急いで戻ろうと向きをクルリと変えた。

が、足首を掴まれ、強い力で引っ張られた。

バシャバシャ!!バシャバシャ!!

必死になって、もがく。

長い髪の毛までもが、絡み付いてきた。

C介は、もがく。

足首を掴んだ手が増える。

沢山の手に絡め取られ、水中へ引きずり込まれる。

・・た・・たすけて。たすけてくれ・・・。

必死にもがく。もがく。苦しい。息が・・・。

薄れゆく意識の中、C介は、見てしまった。

ブヨブヨに膨れ上がった、歪んだ顔を・・・。

自分の身体じゅうに纏わりつく、無数の生白い腕を・・。


あいつ、水中に潜ったと思ったら、全然浮きあがってこなくて・・・。

急いで、辺りを探したんですけど・・・。

溺れてる様子は、ありませんでした。

うん。自分で潜ったって感じ。

だいぶ下流まで流されたんですよね。

見つかった時には、ボロボロになってて・・・。

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