とある魔女のお話
ある所に王国がございました。
そこには金色の髪に青い瞳の王妃様と、黒い髪に黒い瞳の王様がございました。
二人は深く愛し合いましたが、行き違いにより憎みあうようになりました。
王妃は恐ろしい魔女になり、王と国民たちは苦しめられました。
王はそのようになっても魔女を愛していましたが、魔女の暴虐は止まりません。
魔女はとうとう己の子供すら殺そうと致しました。
王が覚悟を決めて、泣きながら魔女を殺したとき、魔女は初めて自らの過ちに気づきました。
魔女が死んだ後、魔女は白い部屋にいました。
そこには白い光があり、今から地獄に落とされると告げました。
光は最後に何か望みはないかと尋ねました。
魔女は答えます。
「私の罪は深い。今後生まれ変わる度に、この命が彼の為になるように願います」
そう言った魔女は地獄に落とされました。
地獄にて罪を清算した後、魔女の魂は生まれ変わりました。
巡る世界
巡る寿命
巡る命
何度も転生する魔女の魂は夫の為に犠牲となる宿命を義務付けられました
何度かは悲惨な魂を迎えましたが、さまざまな人格の奥底で眠る魔女の魂は
苦しくも辛くもありませんでした
愚かな自分が果たせなかった役目を果たせるのです
魂達は幸せに王の魂のために死にました
ある時は通勤途中に少女を庇って死んだサラリーマンと通り魔に襲われた少女
ある時は臓器売買で転売される哀れな孤児と臓器疾患に苦しむ大富豪
ある時は戦場で盾となり死んだ兵士とその国の王子
ある時は難病にて息絶えた少女とドナーを待つ病人
王の魂は徳が高く、王の魂を所有する人間を救う事は、結果的に沢山の人々を救うことに繋がりました。
とてつもなく地味な人生を歩む彼ら彼女達のたった一つ輝く瞬間が、死ぬ瞬間でした。
ですから彼ら彼女達は笑いながら死んでいきました。
そんな関係は何百何千何万年もの間
幾千幾万の世界で繰り返されました
だがしかし、ドナーを待っていた病人が死んだ時、いつもと違う事が起こりました。
少女の臓器にて生きながらえ、沢山の命を救った女性は管理人に告げました。
「私を救う誰かがいる。願わくば彼女が救われるように運命を変えてくれ」
今まで稼いだ全てのポイントをつぎ込むと言った女性に、管理人は是と答えました。
何故、毎回記憶を消去されている彼女が気づいたのかは分かりませんが、そんなこともあるかと管理人は納得しました。心の中でこれが奇跡だろうかと思いながら仕事をこなします。
そして流転する王の魂
愛おしい彼女の元へ
そうして目を覚ます、幾千幾万回目の人生。
彼の目の前にいる男性は高らかに告げました。
「やあ、こんにちはデビル君」
「?」
「とりあえず言わせてもらうよ。ハッピーバースデー!!君が生まれた事を心から祝福するよ」
運命はまた廻る