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時計仕掛けの林檎は、電気茸の夢を見るのか?


高天ヶ原女子高等学校 茶道部日記 第八話です。


軽~く読める百合っ子コメディです。

とは言っても、女子高生の日常をだらだらと書いいているだけなので、過度な期待はしないで下さい(^^;)>


前回の作戦が失敗に終わった翔子達は、新たな情報を仕入れ、作戦の内容を変更するのだが……

 高天ヶ原女子高等学校 茶道部日記


第八話 時計仕掛けの林檎は、電気茸の夢を見るのか?

 

 新学期が始まり一週間が経った今日この頃。

 進学した一年生達も、新しい環境に馴染み始めて来た。

 元々、中等部から進学して来た生徒が殆どの環境で、馴染むも何も無いのだが、それでも、中等部から比べて少しデザインの変わった真新しい制服は、明い希望を期待させてくれる。

 だが、高天ヶ原女子高等学校一年生の久遠寺翔子の心は絶望の色に染まっていた。

 このままでは、茶道部顧問の先生が半ば強制的に決議した方法で、新入部員の拡大を行わなくてはならない。

 それは翔子にとって、自殺する事にも等しい手段であった。

 月曜日の授業が終わり、

「……遥、部室に行こうか……」と、翔子は憂鬱な気分で席を立った。

「うん……」

 翔子の気持ちを考えると、遥は罪悪感に苛まれた。

「入ってくれそうな子、なんとか探すからぁ」

「……うん」

「翔子ちゃんの、そんな顔ぉ……見ているのが辛くってぇ……」

「……うん」

「だからぁ、元気出してよぉ」

「……うん」

 肩を落として俯いている翔子を見て、

「はぁ……」と、遥が溜息を付いた。

 そんな暗い雰囲気の二人に所へ、

「久遠寺さん……」と、委員長がやって来た。

「大丈夫?」

「うん……」

 翔子を気遣う委員長の言葉にも、翔子は力無く頷くだけだった。

「久遠寺さん」

「えっ?」

 背後からの声に、翔子が顔を上げて振り向くと、島津と畠山が並んで立っていた。

「あの……さっきは、ごめんね」

「えっ?」

 健康的な小麦色の肌。

 小柄な体に細く締まった手足。

 翔子より短く整えたヘアースタイル。

 アスリートの典型的なスタイルの島津が、少し恥ずかしそうに声を掛けて来た。

「あ、あの、鈴ちゃんの事……」

 綺麗な白い肌。

 ポニーテールに束ねた少し長い髪。

 翔子ぐらいの身長に、細身ながら出る所はしっかり出ている畠山が、おずおずと遠慮気味に付け足した。

「鈴ちゃん?」

鈴美(すずみ)、伊達さんの事よ」

「ああ……」

 遥から説明を受けて、

「あ、別に気にしていないから……」と、本当は壊滅的なダメージを受けたのに、翔子は二人に振り向き作り笑顔を浮かべた。

「だけどうぉ、なんで島津さんが謝るのぉ?」

 翔子の隣で遥が不思議そうに尋ねると、

「べつに、謝っている訳じゃないんだけど……」と、島津が少し困った様な笑顔で答えた。

「あの、鈴ちゃん、色々とあってね……あの、久遠寺さんに、あんな言い方してたけど、その、気分を悪くしないでねって意味なの」

「そんな……断られた事は残念だけど、別に気にしてないから……残念だけど……うん、気にしないで、残念だけど……」

「翔子ちゃん……」

 再び肩を落として俯く翔子の肩に手を置いて、遥が慰めている。

「ねぇ、島津さん……」

「なぁに?」

 翔子が島津へと振り向いて、島津の両肩を力強く握り締め、

「誰か、茶道部に入ってくれそうな子、知らない?」と、涙目で尋ねた。

 近過ぎる翔子の顔に、顔を赤くして、

「えっ!え、そうねぇ……」と、恥ずかしそうに顔を逸らした。

「ねぇ、畠山さんは?誰か知らない?」

 今度は、畠山の肩を掴んで尋ねると、

「く、久遠寺さん……」と、畠山が顔を赤くして、翔子を見詰めた。

「ごめんなさい……心当たりが無いわ……」

 笑みを浮かべながら、恥ずかしそうに顔を逸らす畠山を見て、

「……そう……」と、翔子が肩を落として離れた。

「あのね、でもね、こんな事、その、言って良いのか……」

 言い難そうに口篭る畠山に、

「えっ?なに?」と、少しの希望を抱いて翔子が顔を上げる。

「あの、鈴ちゃん誘うなら、その、久遠寺さんより……」

 ちらちらっと、委員長の方へと目をやっている畠山の隣で、

「うん、久遠寺さんが誘うよりは……」と、島津も委員長をチラッと見た。

「えっ?」

 二人の目線を察して、翔子と遥が委員長の方を見ると、

「えっ!わ、私……」と、自分を指差しながら委員長が驚いている。

「えっ?どうしてぇ?高倉さんの方が良いのぉ?」

 遥の問いに二人は顔を見合わせて、

「それは……」と、言い難そうに口篭る。

「その、個人的な事だから、私達の口からは……」

「そうね……」

 そんな二人を見て、

「あ、別に無理に言わなくても良いのよ」と、翔子が二人の手を握った。

「あ……」

 顔を赤くして翔子を見詰める二人に、

「貴重な情報をありがとう、可能性があるなら何だってやりたいの」と、笑顔で礼を言った。

「久遠寺さん……」

 翔子の手の温もりに陶酔していた畠山が、

「あ、でもね……」と、顔を曇らせた。

「え?」

「あの、鈴ちゃん色々忙しいから……」

「忙しい?」

 翔子に捕まれた手を、嬉しそうに見詰めていた島津が顔を上げて、

「習い事とか……お爺さんのお手伝いとかで忙しいのよ」と、残念そうに応えた。

「ええ、今日も、県議会の議員さんの後援会に、お爺様の付き添いで……」

 畠山の話を聞いて、

「えっ?何で?伊達さんが?」と、翔子が驚き半分で尋ねた。

「まぁ、お爺様としてはぁ、自慢の孫娘を見せびらかしたいと……」

 遥の推理を聞いて、

「ええ、それもあるかもね」と、畠山が苦笑いを浮かべた。

「鈴ちゃん、お爺さんっ子だからねぇ……」

「そうなの?」

「うん」

「ええ……」

 頷く二人を見て、

「そうか……忙しいのか……」と、翔子が再び肩を落とした。

「あ、でもね、私達も応援するから」

「うん、鈴ちゃんが入部するように応援するよ」

 笑顔を浮かべる二人を見て、

「島津さん、畠山さん……」と、翔子の目に涙が浮かび、

「ありがとう!」と、二人に抱き付いた。

 驚きながら顔を赤くする二人に、

「よろしくお願いしまぁす!」と、心から感謝した。

 そんな様子を、遥と委員長は少し不満気に見ていた。

「作戦会議を始めます」

 部室の中で、翔子が立ち上がった。

 座っている二人の前で、

「新しい情報を分析した結果、我々の攻撃には根本的な誤りがあった事が判明しました」と、説明を始めた。

「誤り?」

「そうよ……」

 翔子が遥を睨みながら、

「今回、得た情報は、女の勘より、確かな情報だと確信しています」と、嫌味たっぷりに言った。

「ぶぅ……」

 不満そうに頬を膨らませる遥の前で、

「我々は、目標に対して、謝った攻撃手段を用いていました」と、翔子が続けた。

「これより、目標への攻撃手段を変更した、二号作戦を発動します」

 口元に薄気味悪い笑みを浮かべ、見下ろしている翔子と目が合って、

「えっ、えっ、それって、まさか……」と、委員長が不安そうに尋ねた。

「そうです、アタッカーを、高倉さんに変更します」

「え、ええぇ!」

 驚いている委員長の前で、

「ちょっと、まって!」と、遥が立ち上がる。

「情報の信憑性を確かめもしないでぇ、行動に移す事は危険よぉ!」

「お前が言うなぁ!」

「ぐっ……」

 翔子の一言で、言葉に詰まってしまった遥に、

「誰のせいで失敗したと思っているのよ!」と、翔子は涙目で訴えた。

「わ、私はぁ、可能性……って事でぇ、提案した、だけでぇ……」

 言い訳がましく口篭る遥に、

「確かに、可能性を見抜いた事は評価しますが……」と、冷たい目を向ける。

「で、でも、そんな、探偵漫画みたいにぃ、順番に出てくる新しい情報の方がぁ真実だぁ、みたいに信じて良いのぉ?」

「コ○ンか……」

「いくら、ストーリーの構成上仕方が無いってぇ言ってもぉ、新しい順に信憑性を与えるのってぇ、幼稚じゃない?」

「いや、子供の読む漫画だから……」

「裏付けもしないで実行するとぉ、前回のぉ二の舞よぉ」

 遥の注進を聞いて、

「確かにそうだけど、確かめる術なんて無いでしょ、前回と同じで」と、翔子が顔を顰める。

 そんな二人の話を聞いていた委員長が、

「あ、あの、私、私が、伊達さんを誘なんて……そんな……」と、顔に不安を浮かべた。

「高倉さん!」

「えっ!」

 翔子に両手を掴まれて驚いている委員長に、

「お願い!協力して!」と、翔子が泣きそうな顔で懇願した。

「久遠寺さん……」

 間近に翔子の顔を見ながら、委員長の脳内では「翔子様のご命令なら何でも従います……」と、条件反射的に思ったが「あっ、でも……翔子様の女王様姿も見てみたいし……」と、自分の欲望も膨らんで来た。

「高倉さん、お願い!」

 翔子には無条件で従いたいが「伊達さんって、苦手だし……」と、色々な思惑が入り混じり、委員長の心は乱れていた。

「もし、お願いを聞いてくれたら、私、何でもするから!」

 翔子の言葉を聞いて、委員長の耳がピクッと反応した。

「なんでも……」

「うん、何でも」

 真剣な目で見詰める翔子の目を見ていた委員長が、何を脳内で妄想したのかは成人指定の縛りもある為、詳細な事は書けないが、悦楽に陶酔した笑みを浮かべる委員長の鼻から、

「ぶっ!」と、熱い血潮が噴出した。

「た、高倉さん!」  

 翔子と遥が驚いて声を上げると、

「だ、大丈夫よ……」と、委員長が慌ててティッシュで鼻を押さえた。

「本当に、大丈夫?」

 心配そうに委員長の顔を覗き込む翔子に、

「ええ、大丈夫よ……」と、鼻にティッシュを詰めたままの笑顔で言った。

「それじゃ……」

 真実の欲望を、おねだりする事の出来ない委員長が、

「あの、弥生って……呼んでくれます……」と、かなりランクを落として、おねだりした。

「え?ええ、そんな事なら、今からでも良いわよ、弥生ちゃん」

 屈託の無い笑顔を浮かべる翔子を見て「弥生って呼び捨てされた方が良いんだけど……」と、少々不満はあったものの、

「ありがとう……」と、嬉しそうな顔で、恥かしそうに下を向いた。

「それじゃ、私の事も翔子でいいよ」

「え、いいの……」

「いいじゃない、友達なんだもの」

 翔子の笑顔を見ながら、両手を胸の前で握って、

「翔子様……」と、嬉しそうに委員長が思わず口走ってしまった。

 委員長の危ない雰囲気を漂わせた目を見て、翔子は一瞬固まったが、

「やっ、やだよぅ、何言ってんだい、この子ったらぁ……ちゃんで、良いよ、ちゃんで、ははは……」と、何やら危険な物を感じながらも、それを打ち消すように、わざとふざけた口調で言った。

 二人の様子を見て

「私も、遥で良いわよ……弥生ちゃん」と、遥が少し不機嫌そうに言った。

「ええ、ありがとう、遥ちゃん……」

「じゃ、そう言う事で、作戦の手順を考えるわよ」

「うん」

「ええ」

 三人が座卓を挟んで顔を寄せ合った時、部室の玄関が開く音がした。

「あら、ごきげんよう」

 琴音と蛍が、手に大きな紙袋を持って入って来たのを見て、

「ごきげんよう」と、三人は立ち上がって礼をした。

 二人が持つ荷物に不安を抱きながら、

「あ、あの、その、荷物は……」と、翔子が、おずおずと尋ねた。

「えへっ、これは、ねぇ……」

 意味深な笑みを浮かべながら蛍が、

「ちゃっちゃぁら、ちゃっちゃぁ、ちゃあぁん!」と、ドラ○モンのエフェクトを入れながら、袋から赤いビニールの様な物を取り出した。

 見たくは無かった物を見て、

「ぐっ……そ、それは……」と、翔子がたじろいだ。

「ちょっと早いかなと思ったんだけどぉ、昨日、部長と一緒に天王寺のABCクラフトに行って買って来ちゃった」

 楽しそうに話す蛍の横で、

「あと、白のファーと、メイドさん用にレースのリボンと……」と、琴音も嬉しそうに紙袋の中を点検している。

「ちょっ、ちょっと待って下さい!」

「そう言えば、鞭って、どうやって作るの?」

「部長!」

「取り合えず、お父さんの使い古しの皮ベルト、二本貰って来ましたけど」

「おい!」

「ネットで調べて見ましょうか」

「ちょうぅ!」

「そうですね」

「無視すんなあぁぁ!」

 楽しそうに話している二人の会話を大声で遮り、

「はぁ、はぁ、ま、まだ、コスプレする事に、なってません……」と、肩で息をしながら翔子が訴えた。

「でもねぇ、準備だけはしておかないと……」

 そう言いながら、蛍は嬉しそうにメジャーを取り出した。

「翔子ちゃん」

 薄気味悪く光る蛍の目を見て、

「な、何よ……」と、翔子は、次に何が起こるのかを想像して後ずさる。

「ちょっと、脱いでみようかぁ」

「い、いやよ……」

 手にメジャーを持ち不適な笑みを浮かべながら、じりじりと近付く蛍に対して、翔子は隙を見せない様に摺り足で距離を取る。

「脱がなきゃ、サイズが測れないじゃない……」

「だから、嫌よ!」

 睨みながら間合いを詰めて来る蛍の隙を突こうと、翔子は神経を研ぎ澄ます。

「……」

「……」

 極限までに張り詰めた空間で、二人の殺気が火花を散らしている。

 緊張の重圧に耐え切れなくなった遥が、

「翔子ちゃん……」と、声を漏らした刹那、二人は同時に飛び上がった。

 生と死が交錯する接点で火花が散る。

「ぐっ……」

 ガクッと膝を着く蛍に振り向いて、

「ははは、取ったぞう!」と、翔子は誇らしげにメジャーを握り締めていた。

「はい、そのままね」

「え?」

 翔子の持ったメジャーをそのまま伸ばし、

「くるっくるっくるっと……」と、琴音が翔子に巻き付けた。

「えっ?えっ?」

 メジャーで身動き出来ないまでに、ぐるぐる巻かれた翔子が、

「あっ!」と、足を縺れさせて倒れた。

「なっ、何よこのメジャー、長過ぎ!」

「ふふふ、掛かったわね……」

「なに!」

 翔子を見下ろしながら不適に笑う蛍が、

「空手をやっていた翔子ちゃんに、まともに勝てるなんて思っては居ないわよ」と、誇らしげに言った。

「だから、前もって策は用意していたわけ……ほおっほっほっほ!」

 高笑いを上げる蛍を見て、

「ぐっ、抜かった……」と、翔子が眉を顰めた。

「ふふふ、それじゃ部長」

「ええ、蛍ちゃん」

 好奇心に満ちた笑みを浮かべながら近付く二人を見て、

「い、いや……止めて……」と、翔子が悍ましい恐怖に怯える。

「くくくく……」

「ふふふふ……」

「いや、いや……いっやあぁぁ!」

 琴音と蛍に蹂躙されている翔子を見て、

「しょ、翔子ちゃん……」と、二人は肩を寄せ合い、ただ怯えながら見ていた。

 三十分ぐらいが過ぎ、

「うっ、うっ、うっ……」と、下着姿の翔子が、すすり泣いていた。

「もう、お嫁に行けない……ううう……」

「何大げさに言っているのよ、下着だけは容赦してあげたのに」

「あ、当たり前よ!」

 翔子が立ち上がり、

「下着まで取る必要なんて無いでしょ!」と、涙目で訴えた。

「まぁ、翔子ちゃんたら、恥かしがって、可愛いわぁ……」

「ふふふ、初心うぶよのう」

「誰だって恥かしいでしょうが!」

 にやけている二人に、翔子が強く抗議している後ろから、

「でもねぇ、翔子ちゃん……」と、遥が声を掛けた。

「なによ……」

 振り向いた翔子に、

「なに、その下着……」と、遥が軽蔑した目を向けた。

「な、何の事よ……」

 戸惑いながら、脱がされた上着を拾い上げ、前を隠して翔子が尋ねると、

「はぁ……もうちょっと何とか成らないのぉ……」と、呆れた様に遥が首を振った。

 飾り気の無い、上下ともグレーの下着を着けた翔子を見て、

「あのねえ、副部長の趣味みたいな、発情を促進する様な派手な下着とは言わないけど……」

「おい……」

 むくれて睨む蛍を他所に、

「もうちょっと、可愛いのに出来ないのぉ?」

「ほっといてよ、私はこれで良いんだから」

「あのね……ほらっ!」

「きゃあぁ!」

 行き成り遥にスカートを捲られて、委員長が慌ててスカートを抑える。

「なっ、何するの!」

「まぁまぁ……」

 顔を真っ赤にして講義する委員長を、遥が手で制して、

「弥生ちゃんも、こんなに可愛い下着なのよ」と、翔子に振り向いた。

 白をベースに、細かいピンクのレースで縁取られた委員長の下着を思い出して、

「だからぁ、翔子ちゃんも、もっと勉強しなきゃ!」と、力強く訴えた。

「勉強ってねぇ……」

 呆れている翔子の後ろで、

「遥ちゃんって、結構、外道ね……」

「そうですね……私達も人の事、言えないけど……」と、琴音と蛍が小声で囁き合っていた。

「じゃ、部長、データーをまとめましょうか」

「ええ、そうね」

「むっ!」

 二人の会話に反応して、翔子が振り向く。

「ええっと、バストは、なな……」

「ぴいぃぃぃ!」

「ウエストは……」

「ぴいぃぃぃ!」

「ええい!五月蝿いわね!」

 データーをまとめいてる二人の横で翔子が、大声を上げて蛍の声を掻き消した。

「静かにしてよ翔子ちゃん!」

「個人情報を公開しないでよ!」

「良いじゃない、此処に居るのは身内だけなんだから!」

「そう言った甘い考えが、重大な情報の流出事故に繋がるのよ!」

「セキュリティーを強化しすぎたら、今度は利便性に問題が起きるのよ!」

「利便性なんて、習慣的に慣れる事によって解決するわよ!」

「慣れるだけでは済まない物も在るのよ!」

 熱く議論を交わしている二人を他所に、

「へぇ、翔子ちゃんのスリーサイズって、こうなんだぁ……」と、遥と委員長が琴音の持っているメモ帳を、好奇心いっぱいに目を輝かせて覗き込んでいた。

「こらあぁ!見るなぁ!」

「きゃあぁ!」

 飛び掛って来た翔子を避けて、皆は蜘蛛の子を散らす様に逃げた。

 新学期が始まり一週間が経った今日この頃。

 進学した一年生達も、新しい環境に馴染み始め、希望に胸を時めかせているが、翔子にとっては散々な月曜日であった。












最後まで読んでいただいてありがとうございました。

感想等、一言頂けましたら幸いです。

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