神への祈りは0と1とで出来ている ~私の王子様、選び放題?! 恋する☆彡 ロイヤルアカデミー~ 代表作
【旧版】――本日をもちましてヒロイン補正は終了いたしました――
「だってわたし、ヒロインだもの」
誰かが机に一輪挿しを置いた。
むせ返るように暑いある夏の日、ひとりの少女が姿を消した。
陽だまりの猫のような少女だった。
美しい少女だった。
愛らしい少女だった。
誰からも愛されている少女だった。
ああ、これがヒロインというやつか。
はじめて彼女を見たとき、教室の隅でそう思った。
宰相の息子。
騎士団長の息子。
隣の国の王子様。
綺羅綺羅しい男たちが、いつも彼女を取り巻いていた。
いつだって彼女を見るたびに、うちで産まれた仔猫を思った。
彼らはいつも彼女に触れ、貢ぎ、尻尾を振って愛を乞うていた。
「そういうの、あんまりよくないんじゃない」
おせっかいな誰かが苦言を呈した。
「だってわたし、ヒロインだもの」
それが全部だというように。
それから、何も言わなくなった。
消えた少女を語る彼らの目は、驚くほどに冷淡だった。
宰相の息子は、「知らない」と言った。
騎士団長の息子は、何も言わなかった。
隣の国の王子様はもう帰ってしまった。
高貴な方々にそれ以上言えるものはいなかった。
それで、この話はおしまいだった。
「あの人はよくない噂があるから、気を付けたほうがいいよ」
少女が粗暴な男に話しかけているとき、親切な誰かが苦言を呈した。
「彼はそんな人じゃないの。わたしは知っているのよ」
それから、何も言わなくなった。
あんなに彼女の周りで尻尾を振っていた男たちは、今や彼女の名前を出すことすらなくなった。
「避暑に行くの」と言っていたらしい。
誰と、とは、聞いたものがいないのか、あるいは。
誰かが机に一輪挿しを置いた。
その花ももう、萎れてしまった。
ヒロインは帰ってこない。




