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私の王子様、選び放題?! 恋する☆彡 ロイヤルアカデミー

――本日をもちましてヒロイン補正は終了いたしました――

作者: さいべり屋
掲載日:2026/08/16

「だってわたし、ヒロインだもの」


 誰かが机に一輪挿しを置いた。

 むせ返るように暑いある夏の日、ひとりの少女が姿を消した。


 陽だまりの猫のような少女だった。

 美しい少女だった。

 愛らしい少女だった。

 誰からも愛されている少女だった。


 ああ、これがヒロインというやつか。

 はじめて彼女を見たとき、教室の隅でそう思った。



 宰相の息子。

 騎士団長の息子。

 隣の国の王子様。

 綺羅綺羅しい男たちが、いつも彼女を取り巻いていた。

 いつだって彼女を見るたびに、うちで産まれた仔猫を思った。


 彼らはいつも彼女に触れ、貢ぎ、尻尾を振って愛を乞うていた。

「そういうの、あんまりよくないんじゃない」

 おせっかいな誰かが苦言を呈した。


「だってわたし、ヒロインだもの」

 それが全部だというように。

 それから、何も言わなくなった。



 消えた少女を語る彼らの目は、驚くほどに冷淡だった。


 宰相の息子は、「知らない」と言った。

 騎士団長の息子は、何も言わなかった。

 隣の国の王子様はもう帰ってしまった。


 高貴な方々にそれ以上言えるものはいなかった。

 それで、この話はおしまいだった。



「あの人はよくない噂があるから、気を付けたほうがいいよ」

 少女が粗暴な男に話しかけているとき、親切な誰かが苦言を呈した。


「彼はそんな人じゃないの。わたしは知っているのよ」

 それから、何も言わなくなった。


 あんなに彼女の周りで尻尾を振っていた男たちは、今や彼女の名前を出すことすらなくなった。



「避暑に行くの」と言っていたらしい。

 誰と、とは、聞いたものがいないのか、あるいは。


 誰かが机に一輪挿しを置いた。

 その花ももう、萎れてしまった。

 ヒロインは帰ってこない。


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