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第51話 8級ってなんだよ!

白い空間。


相変わらず何もない。

サティアが目の前でフワフワと浮いているだけだ。


ここに来るのは何だか久しぶりな気がする。衝撃波の感覚を掴んだ時以来だ。


現実世界で衝撃波が撃てるようになってから、あのステータス画面を見ていない。どうなっているか楽しみだ。


「いいわ。見せてあげる」


俺の前でフワフワしていたサティアが、くるりと回って両手を広げた。

この間とモーションが違う。本当はいらないんだろ、そのモーション。


目の前に例のパネルが現れた。



【ビジュアライゼーション:Lv6】(アクティブスキル)

【引き寄せ:Lv6】(パッシブスキル)

【直観:Lv2】(パッシブスキル)

【プラントメディスン:Lv1】(パッシブスキル)


【衝撃波:8級】(ビジュアライゼーション)

【デコピン:6級】(ビジュアライゼーション)



何だ、級って? しかもあれってビジュアライゼーションの一部なのか?

魔法だろ? 魔力の吸引とかしてるぞ。魔料石を使ってるじゃないか。


俺がそう思った時、パネルに項目が追加された。


【魔力コントロール:6級】(ビジュアライゼーション)


俺はその項目が現れる直前、サティアが「しまった」という表情になったのを見逃さなかった。

口元がひきつり、視線が一瞬泳いだ。

典型的な「墓穴を掘った人間」の反応だ。


「おい! どういう事だ」


「え? 何のこと」


「まさか、このステータスってオマエが勝手に決めてるだけなのか?」


「まさかぁ! 私にはコウくんに能力を与える力なんてないわよ! 『スピリチュアル』の能力は宇宙が与えてくれたのよ」


サティアは明らかにごまかしている。なぜなら俺と全く目を合わせようとしないからだ。


「おい、何で目を背ける!」


「それはコウくんのピンクの服が眩しいからよ」


「愛と共感のチャクラが刺激されるとか喜んでたじゃないか?」


「今は愛でいっぱいなのよ」


「俺は不信でいっぱいだけどな。これからはサティアの事が信じられなくなるかもな」


「えぇー!?」


サティアはようやく俺の目を見た。チラッとだが。


「やっぱりスピリチュアルなんて事を言う奴は嘘つきだったのか……」


「……わかったわよ。ごめんなさい。ステータスは私が判定してるわ」


ようやく容疑者が自白した。


「何て事だ。俺はサティアの掌で転がされてたのか——」


「違うの、コウくん。この世界にステータスなんてないのよ。でもコウくんにはこの方がわかりやすいかなって……サービスよ」


「つまりは、実際にはレベルが上がったりしてないのに、俺を良い気にさせるためにレベルアップしたように見せかけてたわけだ。嫌いなスキルでもレベルが上がれば嬉しくなるもんな。

すると、あれだな。俺はこの世界に来てから何も成長していない可能性がある」


「そんな事ないわよ。衝撃波が撃てるようになったし、ゴルム岩山から無事に帰って打ち上げもできたじゃない」


「いや、実は最初から俺には魔法の適性があったのを隠して、スピリチュアルの能力しか無いと思わせた可能性も浮上してきた」


「そんな事ないってば。コウくんのスピリチュアル能力は成長してるし、衝撃波はコウくんが自分のイメージで身につけたオリジナル魔法じゃない」


「知ってる。言ってみただけだ」


「えっ?」


「俺を騙そうとした仕返しだ」


衝撃波やデコピンは俺が自分の発想と努力で身につけたものだ。実感としてわかっている。

それを8級とか言われてイラッとしたのだ。


「レベルが良かった?」


サティアはすまなそうな顔で俺の前に浮いている。フワフワはしていない。


「級って言うのはまだ段に満たないって事だ。せめて初段から始めさせろよ」


「じゃあ段に書き換えとくね」


サティアは再びフワフワし始めた。


「確認しておくが、レベルにしても級にしてもサティアの独自判断って事で間違いないか?」


「そうね。コウくんの能力が成長したなぁって思ったら1段階上げて、すっごい成長したなぁって思ったら2段階上げるのよ」


「はぁ……」


俺はサティアの、サティアらしい判定方法に力が抜けた。


「まあ、これからもよろしく頼む」


実際に客観的な基準がないなら、仕方ない。サティアの超主観的な判定でも無いよりはマシだ。

せめて判定基準は一貫させてくれよ、と言いたいが……まあ、期待するだけ無駄だろう。



翌日起きたのはほとんど昼だった。二日酔いで頭が痛かったのだ。


夢の中ではサティア相手に軽口を叩けていたが、覚醒した肉体は正直だ。ズゥーンと鈍い痛みがこめかみに居座っている。俺は頭を振らないように慎重に階段を降り、食堂へと向かった。


食堂に客の姿はなく、ルミナが裏口からちょうど戻ってきたところだった。手には湿ったタオルを一枚持っており、その表情はまさに「ぷんすか」という擬音が似合うほど膨れっ面だ。


「おはよう、ルミナ……いや、こんにちはか」


「あ、コウさん! 聞いてくださいよぉ!」


ルミナは俺の顔を見るなり、手に持っていたタオルを広げて見せた。洗濯を終えてこれから干そうとする状態に見える。


「もうお昼前なのに、朝干した洗濯物が全然乾かないんです! これ、さっき様子を見てきたんですけど、干した時と変わってないんですよ?」


「天気は良いが……さっきまで曇ってたのか?」


「朝からずっと晴れてますよー! お日様は出てるし風もあるのに、触るとビショビショのままで……。最近ずっとこうなんです」

ルミナは悔しそうに湿ったタオルを握りしめた。


「普通、この季節は、朝干せば、お昼前にはある程度乾いてたんです。でも最近は、お昼を過ぎて暖かくまでは、まるで水を被った直後みたいに全然乾いてくれないんです」


「……暖かくなれば乾くのか?」


「はい。一番暑い時間になると、そこから急に乾き始めるんですけど……それまでの間は、どれだけ風に当てても無駄で。これじゃあ洗濯のスケジュールが狂っちゃいます!」


「ふうん……変な天気だな」

俺はあくびを噛み殺しながら相槌を打った。


気温が高くない朝に乾きが悪いのは当然だが、「全く乾かない」というのは少し奇妙だ。

俺はこの場所の気候をわかってないが、今の時期は日本の五月のような空気感だ。やや暑い時もあるが、全体的には暖かく爽やかだ。ぜひこのまま頑張ってほしいと思っている。


この場所に梅雨なんてありませんように。


「ですよねぇ。昨日なんて、お昼もあんまり暖かくならなかったから、夕方になっても結局乾かなくて……。湿ったまま取り込む羽目になったんですよ」


ルミナは溜め息をつきながら、濡れたタオルを持って裏へと戻っていった。


俺は少しモヤっとした気持ちを感じながら、遅い朝食兼昼食のパンとスープを受け取った。パンの表面も、心なしかいつもより湿気ている気がする。でも別に湿度が高い感じではないんだよな。

爽やかな空気なのにおかしなことがあるものだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

第三章が始まりました。


拙作を読んでくださりありがとうございます。

是非続きも読んでください。


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よろしくお願い致します。

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