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第41話 パーティーでの戦い方

警戒態勢に入ってから、しばらく経った。


「来るわよ…」


唐突に脳内でサティアの声が響く。


「前方、動きあり!」


直後、レンの声が重なる。


「ファングウルフだ! 群れで来るぞ!」


ファングウルフ。名前からして狼型の魔物だろう。


「コウ、前方で迎撃できるか?」


ガルドの声が飛ぶ。


「できます」


できるだろう。オークの群れと戦った時と同じだ。一匹ずつ当てていけばいい。

俺は馬車の前方に移動し、御者台の右に位置取った。

御者を挟んで反対側ではレンがナイフを構えている。



前方の森から飛び出したファングウルフが走り寄って来る。

狼だ。ただし、牙が異常に長い。あれで噛まれたら、肉をえぐり取られる。


十匹以上いる。


「馬を守れ! 後に回ったヤツは俺が倒す」


ガルドが叫ぶ。


了解。

俺は右手を前に突き出し、先頭の一匹に狙いを定める。

馬車の揺れで狙いがブレる。

10メートルほどの距離に近づくまで待つ。


デコピン。


パンッ。


指弾が放たれ、先頭のファングウルフの額を貫いた。

一匹目、沈黙。


続けて二匹目。三匹目が正面から近づいてくる。

パンッ。パンッ。


一つは肩口にヒットして倒す。もう一つは外した。

外した弾が後続の前で土煙を上げる。

後続は左右に分かれた。


「レンそっちは頼む」

御者の左に座ってナイフを構えていたレンに声をかける。


右から馬に接近してくる3匹がいる。


馬車の揺れで狙いが定まらない。

人差し指、中指、薬指の同時撃ちで威嚇する。

パパパンッ。


地面、首筋、前足にヒット。

2匹脱落。


怯んで少し離れた残りの一匹を人差し指で狙う。

狙いは胴体の真ん中。


パンッ。

背中にヒット。倒した。


更に接近してくる3匹がいる。

続けて同時撃ち。

1匹は鼻先を飛ばして倒した。

残った2匹は一瞬引いて後ろに流れていく。


「後に2匹行った」

俺は叫んだ。


その時。


馬の脇をすり抜けてきた1匹が、御者に飛びかかろうと空中に飛んだ。


パンッ。

咄嗟に指を弾いた。

首筋にヒット。


そのファングウルフはつい寸前まで御者が座っていた場所にドサリと落ちた。

反対側の首筋にはレンのナイフが刺さっている。


レンが一瞬にやりと笑って、再び右の警戒に戻る。

俺も右側を確認する。


もうこちら側にはファングウルフは見えない。


後を見た。


御者は馬車の中に転がり落ちていた。

セリアが怪我の確認をしている。


さらに後ろではガルドが、飛びかかってきた1匹を剣で叩き落していた。


それが最後だった。

馬車がガタゴトと進む音だけが聴こえている。


「……終わったか」


ガルドが剣を収めながら言った。


「馬車を止めろ。ナイフの回収と、死体の片付けを行う。レンとコウがペア、俺とセリアがペアだ」



「すっげえなオイ! なんだよその連射! ずるいぞ!」


馬車を降りたレンが興奮した様子で俺の肩を叩いてきた。


「俺もそういうのほしい! 遠距離からバンバン撃てるやつ!」


「魔法だから、お前には無理だろ」


「わかってるけどさあ! うらやましいもんはうらやましいんだよ!」


レンの投げたナイフの回収をしつつ、ファングウルフの死体を道から取り除いていく。

地道な作業だ。


「コウくんの必殺技で一気に吹き飛ばしたいと思ってるんでしょ」


思ってない。


「だめよ。道がえぐれちゃうし。守り石が壊れてセリアちゃんに怒られるから」


だから、思ってないって。


「ナイフが回収できなくて、レンくんも泣いちゃうかも」


しつこい。



全てのファングウルフを片付けて、馬車に戻った時には汗だくだった。


「ごくろう」

汗を拭きながらガルドが俺達をねぎらった。


「おつかれさまでした」

セリアは汗などかいていない様子で静かに微笑んでいた。


ガルドが少し難しい顔で尋ねてきた。

「威力はどうなんだ?」


「今のは小さく絞った弾です。速射、連射用ですね」


「ファングウルフには十分だったが……グラウラーには通用するか?」


「グラウラーを見たことがないので想像ですが…痛みは与えられると思います。でも威嚇するか怒らせるくらいの効果しかないと思います」


「本気の威力は?」


「……」


本気というと、集合住宅の屋上での一発だ。その時は雲に穴が空いたが、その威力はわからない。


「少なくとも、グレートボアなら余裕でした」


ガルドは黙り込んだ。

足りないと思っているのかもしれない。


「今日の宿泊地の近くで、演習をしよう」


ガルドはそう言って、馬車を出発させた。



夕方、俺たちは宿泊地であるモーサスという町に到着した。イケリアに比べれば小さい町で、その外壁も低く、薄いものだった。

それでも中央にある教会までの道の両脇には商店が並んでおり、多くの人が行き来している。


教会の宿坊に荷物を置き、町の外れにある森へ向かう。



「ここなら人目もない。演習にはちょうどいい」


ガルドが周囲を見渡しながら言った。


「まずは俺たちの技を見せる。パーティーで戦う以上、お互いの能力を把握しておく必要がある」


彼はポケットから何かを取り出した。

中サイズの無属性魔料石だ。二つある。


「一つはセリアに、一つはコウに。ヴェルナー様からの指示で、演習用として使えとのことだ」


セリアが一つを受け取り、俺にもう一つが渡された。


「本気を見せろってことだ」


ガルドが俺の目を覗き込んで言った。



ガルドは剣と盾を構えた。大きく太い剣だ。


「俺は前衛だ。敵の攻撃を受け止め、隙を作る」


彼は近くの木に向かって踏み込んだ。

盾で架空の攻撃を受け流し、そのまま剣を振り抜く。


ザンッ。


ガルドの足の太さほどある生木が、一刀のもとに断ち切られた。

騒がしい音を立てて切られた木が倒れる。


「……すごいな」


あの太さの木を一撃で切るには、相当な技術と筋力が必要だ。何か特別なスキルとかあるのかもしれない。


「次は俺だ」


レンの声がした方向を見たが、レンはいない。

どこに行ったのかと視線を巡らせていると——


カッ!


音のした方を見ると、俺のすぐ横の木の幹に、ナイフが突き立っていた。


「うわっ!」


「へへっ、ここだぜ」


振り向くと、レンがすぐそこに立っている。

いつの間に移動した? 足音も気配も、全く感じなかった。


「斥候ってのは、こういう仕事だ。見つからずに近づき、一撃で仕留める」

ナイフを抜きながらレンが言った。


「心臓に悪いからやめてくれ」



セリアが前に出た。


「私は回復士です。攻撃は出来ませんが……」


彼女は、レンがナイフを突き立てた木に近寄ると、杖を木にかざした。杖の先にはお守りと同じ白く輝く魔石が埋め込まれている。


集中した表情になり、何かを呟いている。


杖の先から淡い光が伸びて木を包み、傷口が塞がっていく。


数秒後、ナイフの跡は完全に消えていた。


「これが回復魔法です。もちろん人間の傷も治せますよ」


俺は無意識にさっきガルドが断ち切った木に目をやった。


「ええ。ガルドさんが切った木も、倒れた上部をくっつけてもらえれば治せますよ」


「やるか?」


ガルドが興味を示した。


「やってみましょう」


ガルドは切り倒した木の上部を持ち上げた。かなりの重量があるはずだが、彼は軽々と持ち上げ、切断面を合わせた。


セリアが回復魔法を発動する。先程よりも強い光が10秒ほど続いた。


光が収まると、木は元通りに繋がっていた。切断面の痕跡すらない。


「すごい……」


これは便利だ。戦闘中に腕を切り落とされても、くっつければ治るということか。

セリアを見ると少し疲れた様子で肩で息をしていた。


「単純な構造ならすぐに回復できますが、人間の腕が切断された時などは構造が複雑なので回復は難しくなります。欠損部位が無くなってしまったら回復はできません」



「さて」


ガルドが俺を見た。


「次はお前の番だ、コウ」


……わかった。


俺は先程もらった中粒の魔料石から魔力を吸い出した。

体内いっぱいにはならなかったが、「出したい圧」が高まる。


俺は周囲を見渡した。

水平に撃つのは危険だ。どこまで影響があるかわからない。下に向けて撃つか、上に向けて撃つか。


森の中に、珍しく大きな岩が目に入った。馬車の荷台ほどの大きさ。

あれなら、的としてちょうどいい。


俺は右手を岩に向けて突き出した。

掌に魔力を集中させる。

イメージとしては掌サイズからの全力発射。多少拡散してもいい。岩の真ん中を撃ち抜く。


「ハッ!」


衝撃波が放たれた。


轟音。


岩の表面が爆散し、残った岩が崩れ落ちた。

だが、それだけではなかった。


脇に逸れた衝撃波が、岩の向こうにあった木々に及んでいた。

三本の木が、同時に倒れていく。


「…………」


沈黙が降りた。


「あー……」


俺は頭を掻いた。


「ちょっと、やりすぎた」


「ちょっと!?」


レンが素っ頓狂な声を上げた。


「ちょっとじゃねえだろ! なんだよ今の! 岩が粉々だぞ!? 木が三本倒れたぞ!?」


「すまん。収束させるべきだった」


ガルドは倒れた木々を見つめたまま、しばらく動かなかった。


やがて、彼は深く息を吐いた。


「……グラウラーには、通用するな」


ガルドの声には、複雑な感情が混じっていた。

安堵と、畏怖と、そして少しの警戒。


「間違っても、俺達がいる方向には撃つなよ」


ガルドはそう言って、町の方へ歩き出した。


「コウくん、やりすぎよ。これは町の人におこられるわね」


咎めるような言葉とは裏腹に、サティアの声はどこか楽しげだった。


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