7
冒険者会館の中は、今日も活気に満ちていた。
鎧をまとった戦士、魔導書を抱えた魔術師、弓を背負った狩人たち――。
次々と仲間を見つけては、楽しげにダンジョンへ向かっていく。
その光景を横目に、トムは掲示板の前で立ち尽くしていた。
「初心者歓迎」
「ゴブリン討伐パーティー募集中」
「次の階層に挑む仲間求む」
どの募集も魅力的だ。
だが、彼が声をかけようと一歩近づくたび、周囲の冒険者たちは顔を見合わせ、ひそひそと囁き合う。
「ほら、あいつだ…」
「河原で裸のやつと暮らしてるって噂の…」
「いくら強くても、そんな変人とは組みたくないよな」
トムの胸はぎゅっと締めつけられるように痛んだ。
カッパのジュンチャから“刃の魔法”を教わり、スライムもゴブリンも一撃で倒せるようになったのに。
――オレはただ、ダンジョンに潜って強くなりたいだけなのに。
ため息をこらえた、その時。
バンッ!
会館の扉が勢いよく開き、ドタドタと駆け込んでくる足音が響いた。
「おーい、トム! 何してんでやんすか!」
現れたのは、頭に皿をのせた緑色の小柄な影。
――カッパだった。
会館の空気が一気に凍りつく。
冒険者たちは一斉に目をそらし、囁きを止めた。
噂の“裸のやつ”が、本当にやって来たのだ。
「カッパ! いま来ちゃダメだってば!」
顔を真っ赤にしたトムが慌てて叫ぶ。
「へへっ、なに恥ずかしがってるでやんす?
あっしと一緒にいること、そんなに変でやんすか?」
冒険者たちの冷たい視線を浴びながら、トムはうつむいた。
「オレ…ダンジョンに挑みたいのに、誰も仲間になってくれないんだ。
ジュンチャと一緒に住んでるって噂のせいで…」
するとカッパのジュンチャは甲羅をトントン叩き、にやりと笑った。
「だったら最初から仲間なんて探す必要ないでやんすよ。
あっしとトムがいれば、それで十分。
スライムもゴブリンも倒せるんだ、ダンジョンだって余裕でやんす!」
その言葉に、トムの胸に小さな灯がともった。
確かに――刃の魔法を覚えた自分と、妙にタフでしぶといカッパのジュンチャなら、二人でも何とかなるかもしれない。
こうして、孤立した少年トムとカッパによる、奇妙な二人組パーティーのダンジョン挑戦が――いま幕を開けようとしていた。




